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手を伸ばして頭に触れれば、高い位置で髪が結ばれていることが分かる。
ユメアの好んでいた髪型。
「ユメアは私よ、返してよ、私の体!返しなさいよっ!」
ルイーゼの……私の体に入っているのは、もしかしてらユメア?
そして、私はユメアの体になっていると言うの?
私ったちは……入れ替わっている?
何が起こっているの?
鬼のような形相でルイーゼの姿で迫ってくるのは、本当にユメアなの?
「寄せ、僕はお前の者じゃない。返せとユメアに言っても無駄だ!やめろ!」
アレン様が、私を庇うように前に出て、そして……ルイーゼの姿をした者の肩を強く押した。
「あっ!」
あの時の私のように、ルイーゼの体は大階段に投げ出され、下まで転がり落ちた。
理解が追い付かずに立ち尽くしていると、アレン殿下がいつの間にか日記帳を手にしていた。
あの時と同じように殿下はルイーゼが公爵の娘ではないと言い、階段を下りてルイーゼの元へと向かっている。
止めないと。
あの後、日記帳を投げつけられて私は死んだ。
だけど、今階段の下で倒れているのは、私の姿はしているけど私じゃなくてユメアなのだとしたら。
私を嵌めたユメアなのだとしたら。
助けなくちゃいけない?
一瞬見にくい心が沸き上がってきた。
助けなくちゃいけないわ。だってルイーゼはこんなみじめに死んでいいわけない。
公爵令嬢ではないと言われて最後を迎えるなんてダメだ。
中身がユメアになってしまっても、私だ。私の名誉は私が守らなければ。
慌てて、大階段を下りてアレン様の後を追うい、アレン様の横に並ぶ。
すると、ルイーゼはむくりと起き上がり私につかみかかってきた。
「痛い、体中が痛い、あんたのせいで、返しなさいよ、私を!あんた何者なのよっ、何で私がこんな目に!」
体中の痛みを思い出して顔をしかめる。
「やめろっ、ユメアに何をするっ!」
日記帳を投げつけるのは阻止できたはずなのに……アレン様はこともあろうに、腕を振り上げ日記帳の角で私の頭を殴りつけてしまった。
ああ、だめ、あれで私の体は死んでしまうっ。
いいえ、あの時と違って日記帳が当たった場所が違うから、死なずに済むかも。
どうしたらいい?
カーク様が悲痛な顔をしている。
そうだ、カーク様も助けないと。
ルイーゼの体はすでに意識を失ってしまっている。
ガチャガチャとあの時のように金属のこすれる音がする。
鎧に身を包んだ兵が2人やってきてゾッとする。
もし、ルイーゼの体が死なずに済んだとして、この男たちに好きなように扱われるなんて想像しただけでも耐えられない。
どうしたらいい?