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私のせいで……。いいや、違う。
私のせいだったことなど、一つもない!
おじい様を悲しませてしまったのも、友達が顔を隠して行動しなくてはならなかったのも、マーサが辞めさせられたのも……カーク様が死ななくてはならなかったのも……。
何もかも私のせいなんかじゃない。
いやだ、いやだ、いやだっ!
この先、私のお母様は不貞を働いた者と後ろ指をさされ続けるの?
おじい様は不貞を働くような娘を持ったと馬鹿にされ続けるの?
ユメアは私の死を笑って生きていくの?
アレン様は私を突き落として殺した罪をカーク様になすりつけたことで罪の意識を持たないまま過ごすの?
お父様はお母様や私の悪評を広めながら生きていくの?
神様……どうかお願いです。
私は死んでも構いません。ですが、どうか、心優しき人たちを救ってください。
神様……。
最後に手を伸ばしてくれた、カーク様だけでも……お救いください……。
キラキラと光の粒が降ってきた。
ああ、天に昇っていくのだ。
もう、この世界とのお別れだ。
最後にカーク様の魂に微笑みかける。
カーク様も微笑んでくれた。
恨んでもいいのに。私のせいで殺されたと……。
カーク様は魂になっても優しい。
ありがとう。
「ルイーゼ、お前との婚約を破棄する」
天に上ったはずの私の魂は、貴族の共同墓地から王城の大広間の大階段の上にいた。
聞き覚えのある言葉。
大階段を背にして、私が立っている。
私の顔は、青白く冷たい。
そりゃ、婚約破棄を言い渡された直後であれば、こんな表情にもなるだろう。
と、待って。
どうして、あの場面に私の魂は飛ばされてしまっているの?
「さぁ、行こう」
そうしてアレン殿下が私の手を取った。
「え?」
手を見下ろす。
魂になっているはずの私の手をどうして取れるの?
いいえ、それよりなにより、私は目の前にいるのに、この手は誰の手なの?
見下ろした桃色の手袋の手。
私の意思で動くのを確かめていると、少し離れた場所にいた私がこちらへ歩いてきた。
そう、このまま殿下に声を潜めて話しかけたことで、階段を突き落とされるんだ。
いや、突き落とされるわけではなく、振り払った手でバランスを崩して転落する。
「ちょっと、私の体返しなさいよ!」
紫がかったプラチナブロンドを振り乱し、私がピンクの手袋をはめた私の手をつかんだ。
私の体?
「よせ、ルイーゼ、ユメアに何をする!」
レオン殿下が髪を振り乱す私の姿の誰かの手をつかんだ。
ユメア?まさか……?
ピンクの手袋……そういえば、あの時ユメアはピンクの手袋をはめていたかもしれない。ピンクのドレスは覚えている。ストロベリーブロンドに合わせたピンクのドレス。
ドレスを確かめようと見下ろすと、髪が落ちてきて色が見えた。
ふわふわなストロベリーブロンド。
ユメアの髪色だ。
まさか……。
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ふいーん。やっと巻き戻りましたー。
長かった……思ったより、長かった。
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知ってる?唐突に書き始めて1万文字超えたよ1日でwでも話が全然進んでなくて笑う。
短編設定にしてあるので5万文字くらいで完結したい。どうなることやら……なのですが、お付き合いいただけると嬉しいです。
=========↑アルファポリス掲載時のあとがきです。
実際は3万5千文字くらいで終わります。