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ユメアが立ち去った後は、薄暗い牢屋に取り残されて放置されていた。
3日目に、辺境伯……お母様が生きていた時に何度か顔を合わせただけのおじい様が私の死体を運び出してくれた。
「すまない、こんなことになるなら……」
後悔の言葉がおじいさまから漏れるのを聞いていたけど、私の意識はだんだんと薄くなっているようで亡くなってから3日目ともなるとぼーっとして細かいことまで理解することができないでいた。
貴族の共同墓地の隅に埋葬された。
公爵家……お父様からは籍を抜かれていたものの、お母様はおじい様から男爵位を譲られて嫁いだため、領地もない名ばかり男爵の位を私が引き継いでいたため貴族であったためだ。
貴族を殺したとなれば、処罰は免れない。
カーク様の責任にされてはいないだろうか。気がかりだが今の私にはどうにもできない。
葬式もなく、ただ埋葬されただけだ。
私の墓地に手を合わせおじい様は辺境へと戻っていった。
4日目、学園で親しくしていた伯爵令嬢が顔を隠すようにして花を添えに来てくれた。
5日目、お母様の侍女であり私の乳母だったマーサが来てくれた。12歳でお母様が亡くなったあとも私を支えてくれたマーサ。
15歳で学園へ入学するときに「もう乳母は必要ないだろう」とお父様が解雇してしまった。
あれも私への嫌がらせだったのだろう。私が必要とする者。私を大切に扱う使用人は、お母様が亡くなりユメアが来てから次々に辞めさせられた。
いつの間にか、ユメアを優先する者ばかりになっていた。
マーサ、マーサ……!
マーサが私の小さな墓石に顔をうずめて泣いた。
それは長い時間泣いていた。
マーサ、もう日が暮れたわ。体が冷えてしまうから、帰って。
マーサのうずくまる体をそっと抱きしめる。
今の私にはマーサを温められる体がない。
今の私にはマーサに言葉を伝える口もない。
ああ、マーサ、大好き。ありがとう。泣かないで。マーサ……。
「ルイーゼお嬢様」
マーサがふと顔を上げて、私の方を見た。
見えるはずがないのに。声が聞こえるはずがないのに。
6日目は誰もやってこなかった。私の墓に備えられた花の花びらが散っていくのをじっと眺めた。
意識は遠のき、明日の7日目に天に昇っていくのだと、そう思っていた。
7日目、私の墓の隣に穴が掘られた。
また、貴族の誰かが亡くなったのだ。共同墓地に埋葬されるということは、何か不名誉な点がある者だ。
棺が運びこまれた。
私のように体から離れた魂が見えた。
カーク様……どうして!
棺の中はカーク様なの?まさか、私を死なせてしまった責任を取らされて!