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「ふふふー、バッカみたい。みぃんな信じちゃうんだもん」
え?
「あはは、そもそもお父様が馬鹿なのはずっとかぁ。何が、ユメアはマリーにそっくりだなぁよ。マリーって誰だって話だ。私の死んだ母親はカメアだっての!」
ユメアの母親がマリーじゃない?
「ユメアはマリーのようにかわいいな、やはりマリーの子だから優しいんだな、マリーを見ているようだ……って、言われるたびに吹き出しそうになるわ。でも、マリーの子だって勘違いしてくれてるから、私は孤児院から出られて貴族になれた。……元の生活に戻されないようにと必死だったのよ?」
そうなの?12歳でお母様がなくなり、すぐに引き取られてきた12歳の義妹にまさかの秘密が。
お父様の子じゃないと知っていて、公爵令嬢のふりを続けていた……。
「まぁ、すぐに、追い出されないようにするにはお義姉様を悪人に仕立て上げるだけでいいって分かったけどね。お義姉様に恨みはなかったけど……さ。ルイーゼの母親が居なければ自分はマリーと一緒になれたんだとか、マリーを追い出したのはマリーが死んだのは全部あいつのせいだ。マリーをいじめていたんだマリーがかわいくて嫉妬していたんだルイーゼはあのかわいげのない母親にそっくりだ、あの顔を見るだけで吐き気がする……って」
ふふふと笑いながら、ユメアは私の顔を覗き込んだ。
「こんなに美人なのにねぇ。それに、優秀だったのにねぇ。殿下も同じ事言ってたわ。かわいげがなくて好きになれない、ですって!あーはっはっは。頑張らずにニコニコしてるだけならもう少し相手にしてもらえたのかもしれないのに、馬鹿みたいに頑張って。頑張れば頑張るほど嫌われるなんて、あーっはっはっは。知らなかったでしょう?」
……嘘だ。
嘘だ、嘘だ。王妃教育頑張ってるみたいだねとアレン様は声をかけてくれた。
無理しなくていいと気遣ってくれた。
それは誤解だったの?
気遣っていたのではなく、また勉強してるのかと嫌味を言っていたの?
かわいげがないなたまにはサボろうとおもわないのか、弱音くらいはけよと……そう思われてたの?
「お父様にそっくりの馬鹿だもの。簡単だったわよ?誘惑するのなんて。お義姉様を悪者にすればよかったんだもの」
ユメアがパラパラと日記帳を開いた。
「だけどね、簡単に婚約破棄はできないって言うから」
にやりとユメアが笑って日記帳を閉じた。
「ちょっと協力してあげたの。まさか、こんなにうまくいくなんてね。筆跡鑑定くらいされると思ってたのに」
まさか、その日記は……。
「ま、対策はしてあるけど、それも無駄になっちゃったわね」
ユメアはそう言うと、私の体の胸元に日記帳を載せ手を組んだ。
「一緒に埋葬してもらえば、証拠隠滅は完璧だわ、ありがとう、死んでくれて」
バグバグと心臓が波打つような気持ちになった。もう私の体は冷たくなっていて、心臓も止まっていると言うのに。激しい感情に胸が締め付けられるような思いだ。