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「そ、そうだ、こいつだ……こいつが、さっき落としたときに……」

 突然の言葉に、カーク様は変な向きに手が曲がっている私の体を見た。

「ルイーゼ様っ!」

 すぐに駆け寄って私の体を持ち上げる。

 そこで、死んでいることに気が付いたのだろう。

「亡くなって……」

 ショックを受けているカーク様を残して兵たちが立ち去る。

「お前が落としたときに頭でも打ったんだろう!お前のせいだからな!」

「そうだ、俺たちはここに運んだだけで何もしていないっ!俺たちのせいじゃないっ!」

 と、カーク様に責任を押し付けるような言葉を残して去っていく。

 違う、カーク様は私を落とさないようにと喉元を槍先で疲れても耐えた。

 その背を蹴ったのはあいつらだ。

 乱暴に牢へ放り込んだのはあいつらだ。

 でも、私の命を奪ったのは、アレン様だ。

 階段から突き落とし……いいえ、もしかしたらあれが致命傷ではなかったかもしれない。

 そのあと日記をこめかみにぶつけられた、あれが原因かも。

 しばらくして、兵がアレン様を連れて戻ってきた。

「ルイーゼ嬢が亡くなった?死んだふりをしてるだけじゃないのか?」

 アレンが私の死体を足で蹴った。

 ほんの様少し前まで形ばかりとは言え婚約者だったというのに。

「死んで……る。僕のせいじゃない、僕が殺したんじゃない、階段から落ちたあと、起き上がったじゃないか、だから僕のせいではないっ、お前か?お前たちがどうせ乱暴をしようとして手を出したんじゃないのか?それで抵抗して頭をぶつけたんだろう?殺したのはお前たちだなっ!」

 アレン様が兵2人を指さした。

「い、いえ、ち、違います、乱暴なんて……」

 嘘つき。

 兵がカーク様を指さす。

「こいつが、運んでいる途中に落としたんです、それできっと頭をぶつけて……」

 嘘つき。

「なるほど、ではそう言うことだ。証言してもらおう、そいつを連れてこい!」

 アレン様の命で、カーク様の両腕をつかんで兵が連れて行った。

 違う、違うのに、カーク様のせいじゃない。なぜカーク様は否定をしないの?

 皆が去ったあと、義妹のユメアが現れた。

「うわー、本当に死んじゃったんだぁ。可哀そう」

 可哀そう?少しは私に情があったの?

「私って、本当に可哀そうだわ。流石にこれですぐに結婚式なんて上げたら不評が立っちゃうじゃない。死ぬなら、私が結婚した幸せな姿を見ながら悔しそうに死になさいよっ!」

 情などかけらもなかった。分かってはいたけれど……。

 ユメアが私の死体の横に転がっていた日記帳を拾い上げた。

 ああ、カーク様が持ってきてくれた日記帳。兵に連れていかれるときに落として行ったのか。


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