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「逆らうつもりか!」
鎧を着た兵は2人。
一人が手に持っていた槍の先をカーク様ののど元に突きつける。
勢い余ったのか、喉を本当についてしまった。
ごふっとカーク様の喉から変な声が出た。
そして、苦しみに耐えきれず、バランスを崩して私を取り落としそうになり、落とさないようにと必死に抱き上げたまま膝をついた。
ありがとうカーク様。
もういいわ。
もういいの。
私は死んでしまったのだから。
「はっ、この女に惚れてるのか?子爵令息なら、平民になった女なら手に入るとでも思ったか」
兵が鎧兜に隠された顔をさらした。
伯爵家の三男だ。騎士にも慣れない落ちこぼれの兵だ。
人通りのない王城の北廊下。
人目がないからとやりすぎすぎじゃないだろうか。
膝をついたカーク様の背中をもう一人の兵が蹴った。
私の体は地面に投げ出され、ドレスのスカートが乱れて膝から下があらわになる。
「なぁ、ちょっとくらいいいんじゃないか?」
白い足を見た兵の一人がごくりと唾を飲み込んだ。
「そうだな、牢屋に運んだら」
伯爵家の三男がにやりと王子、すぐに腕をつかんだ。もう一人が逆の腕をつかんだ。
二人の兵が私の体を雑に引きずって歩き出した。
「やめろ!彼女は怪我人だ」
カーク様が後を追う。
「は?これくらいの怪我大したことないだろう?」
「さっきも立ち上がっていたしな」
「ほら、起きろよ」
兵が私の頬をぶった。
「牢屋でかわいがってやるから、声上げろよ、水でもぶっかければ起きるか?」
もう一人の兵が私の顔をつかんで顔を上げさせる。
「お前ら、やめろ!そうだ、辺境伯様に……」
カーク様は助けを求めるために、去って行った。
地下牢に乱暴に私の体を二人の兵が放り投げる。
ガツンと石造りの固い床に思いきり頭がぶつかって大きな音を立てた。
「馬鹿、死んだらどうする」
「わりぃわりぃ、流石に死体と楽しむ趣味はねぇもんな、ほら、起きろ」
乱暴にゆすられる。
もちろん、もう私の体が動くことはない。
「水を持ってくるか?」
兵がしりもちをついた。
「し、死んでる」
「は?嘘だろ?」
ガタガタと震えだす兵。もう一人が、冷静に私の脈を確認した。
「本当だ……どうする……さっきすごい音がしたけれど、あれで……、俺たちのせいか?」
「だ、大丈夫だ、どうせ罪人だ……平民の罪人が一人死んだだけだ……」
鎧兜を上げて顔が見えた。
もう一人は、子爵家次男。
カーク様が、息を切らして。
「辺境伯様に当てて手紙を出した、やめるんだっ!」
しりもちをついていた兵が真っ青な顔でカーク様を見た。
==========*全話同様
注*書き忘れていました。
父親が同じで母親が違う場合「異母妹」である「義妹」ではないのですが「義妹」と表記しております。
あえてそうしております。
引き続きお楽しみください。
ありがとうございます!
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