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アレン殿下の言葉に、ユメアのような明るい調子で言葉を続けた。
「殿下の言うことは本当ですぅ。ルイーゼお姉様は、死んでませんよぉ。今日も参加してます!」
ざわざわと貴族たちがざわめく。
「どういうことだ?この間公爵の子ではないと……」
「いやだが辺境伯の孫であることは確かだから」
じゃんっと、日記帳を取り出して見せる。
「実は、この日記帳、偽造された偽物だって言うことが分かりました。ルイーゼお姉様はお父様の間違いなく子供で、公爵令嬢なんです」
レオン殿下が驚いた顔をした。
「なんだと、偽造?」
「えっと、調べてもらえば分かるのですが、というか、調べたらすぐわかるらしいんですけど、紙が4年くらい前に開発された新しい紙らしいんです」
ざわざわとざわめきが大きくなる。
そりゃそうだろう。
ちょっと調べればわかることを、調べもせずに公爵令嬢を断罪しようとしたのだ。
皇太子ともあろう者が。
大問題だ。
無視できる話ではない。
王家の者が、真偽を確かめることなく処罰するとなれば、独裁につながるだろう。
冤罪もかけ放題だ。気に入らなければでっち上げればいい。
アレン殿下が呆然と立ち尽くしている中、階段を一人で降りていく。そして、会場のドアの前にたち、兵に命じる。
「ドアを開いてちょうだい。ルイーゼお義姉様がいらっしゃったと思うわ」
本当に生きているのか?
そう疑いの目を持つ人々の前で、ドアが開いた。
まず、人々の目に入ったのは、カーク様の姿だろう。
自ら、ルイーゼをエスコートに志願したのだ。
もちろん止めた。でも……止めきれなかった。
カーク様の隣には、ルイーゼの体が寝かせられたベッド。4人の使用人が運んでいる。
「まぁ、なんておいたわしい」
「まさか、ルイーゼ様……」
私の体は、この数日で見る見る痩せていった。
いくらマーサが献身的に看病を続けてくれていると言っても、意識がなく食事らしい食事がとれていないのだ。
それでも、私の体はかろうじてかつての美しかった時の面影を残している。
マーサやメイたちがドレスに着替えさせ、綺麗に化粧もしてくれた。より美しく見えるように、髪をベッドの上に広げ花びらを散らして飾っている。
スカートはパニエを入れることができなかったけれど、体に張り付かないように綿をつめて膨らませている。
「さぁ、確認してちょうだい。ルイーゼお姉様は、生きているでしょう?ですけど、あの時頭を強く打って、まだ意識が戻らないの」
あらかじめ呼んでいた王宮医師たちに生死の確認をさせる。
「確かに、生きておられます」
医師がそう告げるも、死んでいないだけでもう長くはないのではと誰もが思う。
そこに、辺境伯……おじいさまが現れた。




