27
「いろいろあって大変でしたね。ショックだったでしょう。お茶をお代わりしますか、ルイーゼお嬢様」
マーサの言葉にハッとして顔を上げる。
「な、何を……?」
マーサが確信を持ったかのような顔で、私を見た。
「ユメア様ではなく、やはりルイーゼお嬢様、なのですね?」
「ど、どうし………て……」
何故バレたの。どうしてわかったの?
というより、言われたってそんなこと信じられるわけないのに。
「涙を流すとき、いつも少しだけ下をむいて、スカートの上で両手を握り締めるでしょう。ユメア様なら上を向いてワンワン泣いておりましたわ」
「そ、それはまだ子供だったから……」
それからマーサはカップを持ち上げた。
「普通ならば、金平糖が砂糖代わりだと思ってまずはかき混ぜます。金平糖をすくいあげて食べるのはルイーゼお嬢様くらいです」
「そ、それはお義姉様の真似を……」
私はユメアだ。
何故かユメアの体の中に入ってしまって、もうユメアとして生きていくしかないのだとそう思ったのに。
例え、誰かに話をしても信じてもらえないと思っていたのに。
「子守歌が聞こえてきました」
ああ、マーサが歌っているのを聞きながら私も歌ったんだ。
「あの歌詞は、間違っています」
「え?」
「私が間違えて覚えていたのを歌ってしまっていたため、ルイーゼお嬢様も間違って覚えてしまいました。他の人は決してあの歌詞では歌いません」
そうだったんだ。
「そ、それもお義姉様にえっと」
「ルイーゼお嬢様、何かをごまかそうとしたときに、左手の人差し指を右手でさする癖も出ていますよ」
うそ、私にそんな癖があったの?
「マーサには何も隠し事ができないわ……」
顔を上げると、マーサが笑っている。
「ええ、そうですよ。マーサに隠し事をしようとしても無駄ですよ、ルイーゼお嬢様」
マーサに抱き着いた。
「マーサっ」
「お嬢様、一人で頑張らなくていいんですよ」
それから、2日が経った。
相変わらず私の体は意識が戻らないでいた。
そして、街中に公爵令嬢ルイーゼ死亡説が流れ始めた。
そんな中、王宮で開かれる舞踏会に出席することとなった。
「いいかユメア。ルイーゼは回復中だとそう皆にアピールするんだ。死んではいなとな!」
「ええ、もちろん、死んではいませんもの。当然ですわ。誰が流した噂か分からないけれど、否定してやりますわ!任せてください!」
ユメアの言葉でおじい様が動いてくださるかは分からなかったけれど、連絡をしたら協力してくれることとなった。
アレン殿下のエスコートで、あの時と同じ大階段の上にたつ。
「皆、心配をかけた。私が公爵令嬢を語ったルイーゼを害したことで不名誉な噂が立っているがあれは真実ではない」




