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「ここに書かれているのは、ルイーゼが公爵の子ではなかったという話だ」
「え?」
そんなはずはない。
「お前の母親はな、不貞行為をしていたんだよっ!」
嘘よ嘘!
「お母様がそんなことするわけないわ!」
12歳で亡くなったお母様。
常に使用人にも優しく接し、慕われていた。
曲がったことが嫌いで、私にも正しく生きるのよと常に言っていたのに……。
「そりゃぁ、ルイーゼ、お前が不義の子なんだよなんて言うわけないだろう?そう思われないようにうまくやってたってことだよ」
殿下が、大階段をユメアをエスコートしながら一段、また一段とゆっくり降りてくる。
「日記には、ルイーゼは別の男の子だろうと書いてある。不貞を働いた理由も書いてあったぞ?別の女に入れあげて浮気する公爵に対する反抗だったと。別の女というのは……」
アレン様がユメアに視線を向けた。
それだけで、殿下の言葉が真実味を持って皆の心へと広がるのが分かる。
何故、どうして!
私の容姿はお父様に似ているでしょう?
どうして皆、お母様の不貞をあっさりと信じてしまうの?
私と同じ学年のユメア。
お父様が、お母様が亡くなった後に引き取った子供。
確かに、お父様が浮気をしてできた子がユメアなのかもしれない。
だけれど、それだけのことだ。それだけのことで、お母様が不貞していた証拠になんてならない。
アレン様は気がつけば私の前まで階段をおりてきていた。
「憲兵、この庶民の娘を会場から放り出せ!」
アレン様が手に持っていたお母様の日記を私に投げつけた。
痛っ。
ガツンとこめかみに日記の角が当たり痛みを覚える。
庶民の娘……?
私が庶民との不義の子だというの?もしそうだとしても……まだ籍は公爵家にあるのでは?
母は辺境伯令嬢だった。父親が誰かわからないなら、私は辺境伯の孫としてひきとらっるのでは?
いくら公爵令嬢ではないことが判明したからと……。
これ以上愚行をアレン殿下にさせてしまえば、王太子の資質に疑問の声が上がってしまう。
「分かりました。婚約破棄は受け入れます。ですが、母が不貞を働いていたからと、私は犯罪者というのは……」
ああ、頭がずきずきする。
体中痛いけれど、頭が割れそうに痛くなってきた。
「お前は、公爵令嬢だと偽って、王妃の座を狙った犯罪者だ」
「私は……知らなか……た、そう、お父様も知らなかったので罪に問わないでください……」
ユメアが顔を出した。
「安心して、お父様は、この日記を見てからすぐに陛下に謝罪したのよ。そして、公爵家の娘である私と婚約を結び直すことにしたの。だから、問題ないわ」
と、いうことは……。