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 医師が来たと言うので部屋に向かう。

「うむ、怪我は打撲のみで、骨は折れていないようですな。内臓などが傷ついていることもないようなので、時間が立てばよくなるでしょう。赤くはれて熱を持っているところを冷やしてあげてください」

 医師の診察結果が父は気にもならないようで部屋に現れることはなかった。

 後で人づてに簡単に聞けばいいと思っているのか。

「ではなぜ目を覚まさないのですか?」

 階段を転げ落ちた傷は大したことがなかったのか。確かに、私も起き上がることができたのだ。

「頭を強く打ったのが原因かと。もしかすると、脳に傷を負ってこのまま目を覚まさないことも」

「え?」

 驚いて声をあげると、医師が続けた。

「分かりません、目を覚ますこともあるし、このままのことも……」

 困る。まだ”ユメア”には聞きたいことがあるのに。私を陥れるために用意した日記のことも。

 捏造したのであれば、その証拠がつかみたい。

 本物だったとしたら、どうやって見つけたのか。他にお母様に関する何か見つけていないのか聞きたい。

 それから”ユメア”の母親についても。カメアさんと言っただろうか。

 王太子と婚約すれば、母親についても調べられることになるだろう。

 まだ、内々で話がまとまっているだけで、正式に婚約していないのだとしたら間に合うはずだ。

 婚約破棄が成立していないうちに新たに別のものと婚約するはずはないから”ルイーゼ”に署名してもらってから、”ユメア”と正式に婚約する流れだったはず。

 ユメアがマリーの子でなくカメアの娘で公爵の娘ではなかったと婚約前に分かれば、謝罪すればいい。

 婚約後に分かってしまえば”ルイーゼ”と同じように罪に問われ婚約破棄されるだろう。

 流石に、二度も騙されて婚約破棄したとなればアレンどころか陛下も立場がない。

 公爵家に罪を着せ、お家取り潰しくらいはするはずだ。

 ……それは構わない。

 この家には何も失いたくないものなどないのだから。

 そもそも一度死んだ身だ。断頭台の露に消えたとて構わない。

 ただ、お母様の名誉の回復してからだ。カーク様が罪に問われることは免れた。

 だめだ。自分勝手な考えになっている。公爵家お取り潰しだけで済まず国が乱れないように、できるだけ婚約前に事実を明らかにしてこちらから婚約自体を申し入れないと。

 フルフルと小さく頭を横に振る。だから、情報が欲しい。

「目を覚まして……」

 小さくつぶやくと、医師が何を勘違いしたのか悲痛な顔をする。

「目を覚まされましても……その、今まで通りではないこともあります」

 今まで通りではないか。

 そりゃ中身が入れ替わっているのだから、当然だけれど、怪我が原因でとごまかせるかもしれないわね。あらかじめこの言葉はしっかりと覚えておいてもらおう。


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