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「そう、庶民であれば、このような扱いは普通なのね?知らなかったわ。教えてくれてありがとう」

 にこりと笑うと、お礼を言われたことが嬉しかったのか使用人がぱぁと顔を明るくする。

「じゃ、あなたたちは今日からこの部屋を使ってね、他の使用人が使える部屋も順番に用意しなくちゃね」

「え?どうしてですかっ」

 まさか、どうしてと聞かれるとは思わなかった。

「だって、あなたたちも庶民でしょう?庶民であれば、このような扱いは普通だと言ったのはあなた自身。私は知らなかったの。教えてくれてありがとうと感謝の言葉も口にしたわよ?つまり、そういうこと。知ったからには、普通の生活を送らせないとね。普通ではないことをするわけにはいかないでしょう?」

 ユメアの得意の笑顔を見せる。

「そんなっ、こんな寒くて狭い部屋になんて」

「糞尿まみれのシーツを使うなんて」

 自分でも酷いと思うような行いをしていたわけね。同情の余地はない。

「ああそうだわ、彼女たちが寝ているときは、寝ているふりをしていないか水をかけて確かめるようにしてあげてね、それが普通みたいだから」

 青い顔をする使用人。

「そ、それは、ユメア様のために」

「私のため?私が指示したと言うの?誰の指示でもないと言っていなかった?まさか、それが嘘だったというの?庶民のあなたが、公爵令嬢の私に嘘をついたと?」

 その言葉で、3人は口を閉じた。

「それから、カビは毒なのよ、知らなかった?もちろん腐った食べものも毒。つまり、あなたたちは不注意ではなく、意図的に貴族に毒を与えたということになるの。それの意味するところは分かるわよね?」

 使用人が慌てて言い訳をする。

「で、ですけど、それは」

「私のため?それともお父様のため?命じられたの?ルイーゼお姉様に毒を盛れと」

 ぞっとみんなが一斉に顔色を悪くする。

「それとも、犬の餌でも与えておけとでも言われた?」

「あ、は、はいっ!」

 帰ってくると思わなかった返事に、ゾッとする。

「そう、じゃあ、犬の餌を与えたのね?貴族のいう犬の餌は、なんだったかしら?肉かしら?伯爵家で買われている犬は主人である伯爵様と同じものを食べているという話だったわね?」

 使用人がびくりと肩を震わせる。

「そんな貴族の飼う犬が何を食べているかなんて、庶民のあなたが知るわけないわよね」

「あ、はいっ」

 許されたと思ったのか、ほっとした顔をする使用人。

「知らないのに、調べもせずに、お父様の指示を無視したってことよね?使用人として失格なのでは?」

 グッと口を引き結ぶ使用人の顔を見ても、何の感情もわいてこない。


 

 

 


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