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 公爵家の屋敷に戻ると、ニヤニヤとした顔でお父様が出迎える。

「ユメア、ああ、かわいい私のユメア。よかったな、ついにお前が王太子の婚約者だ。あのにっくき女の娘ルイーゼは虫の息、もう顔も見なくても済むぞ」

 ぎりっと、心臓が強く締め付けられた。

 死ぬのが嬉しいの?

 いくら……憎まれているとしても、まさか、死を望まれるとは……。

 せめて、不貞の子だと思い込んでいたとしても、子供に罪はないのに可哀そうなことをしたくらいは……。

「お医者様は何ておっしゃったんですか?」

 お父様……父ははんっと笑った。

「医者など必要ないだろう」

 ……ここまで馬鹿だとは。

「お義姉様が怪我をした経緯は聞きましたか?殿下に階段を突き落とされたんです。そのあと殿下が本で殴りつけ意識を失いました」

「ああ、聞いたとも。婚約破棄を言い渡されユメアに襲い掛かろうとしたのを殿下が守ってくれたんだろう?」

 そう言われて、ユメアならばどう答えるだろうか。

 父親に不審がられないようにユメアを演じようと思ったけれど、不審がられて嫌われても構わないのでは?

 どうせ、今まで”ルイーゼ”として嫌われていたのだから。

「大階段の上で婚約破棄を宣言してはどうだというのは誰のアイデアだったのでしたっけ?」

「ん、ああ、どうせなら皆にルイーゼが不貞の子で私の子ではないから婚約破棄をするという事実を周知させるには手っ取り早くていい考えだったろう?」

 やはりそうか。

 あんな目立つ場所で、皆の注目を集めて婚約破棄劇をおこしたのは父の入れ知恵か。

「では、ルイーゼお義姉様殺人事件の犯人は、計画を練ったお父様とアレン殿下の二人が犯人と言うことになりますわよね?」

 私の言葉に父が驚いた顔をする。

「な、何を言っている」

「転落の危険があるような場所でわざわざショックを受けるような話をする、動揺して言い争いになったところを事故を装って殿下が突き落とす、怪我をして運ばれたところ医者にも見せずに放置し見殺しにする、完璧な筋書きでしょう?流石お父様、医者に見せなかったなんて言わなきゃ分からないですもんねぇ~」

 馬鹿を装って語尾を伸ばす。

 流石に父もそこまで気が付かないわけじゃなかったのか、慌てて医者を呼べと飛んで行った。

 言わなきゃ分からないが、調べられればすぐに分かる。

 高位貴族の屋敷にできりできる医師は限られているのだ。

 呼んだかどうかなどすぐに口に上る。

 廊下を進み、使用人部屋の一つの扉を開く。

 やはり、ここに運びこまれていたか。

 冬は寒くて凍えてしまう北側の小さな小部屋。

 使用人の部屋とはいえ、ミスをした使用人の懲罰に利用されたりもする部屋だ。

 固いベッドが一つ置かれただけの部屋にルイーゼは寝かせられていた。

 シーツは雑巾よりも汚く臭っている。病気でなくても病気になりそうだ。

 そして、顔は濡れていた。

「可哀そうな、私の体……」


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