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 カーク様に運ばせてはだめだ。

 カーク様が罪を着せられ殺されてしまう。

 かといって、生きていれば、兵に連れていかれても酷い目に合う。

 一番まずいのは、このまま死んでいることが確認されることだ。

 もし死んでしまえば、アレン様……王太子が多くの人の目の前で公爵令嬢を殺したことになる。

 言い訳はできない。

「お義姉様、大丈夫ですか」

 ルイーゼの体に駆け寄り、生死を確かめる。

 まだ、息をしている。

「階段の上でショックを与えるようなお話をしてしまってごめんなさい、あまりのショックによろめいて階段から落ちてしまうなんて……私のせいだわ……私の……」

 大げさなくらいショックを受けている演技をする。

 よろめいて階段から落ちたなんて嘘っぱちだ。殿下が突き落としたことなど、見える場所から見れば分かることだろう。

 だけど、階段の上まで距離がある。一番近くにいた私が否定することで見間違えだったのかと思いなおすかもしれない。

 突き落とすような動きは合ったけれど実際は自分で後ろに下がっただけだと思うかもしれない。

「ごめんなさい、お義姉様……」

「ユメア、こいつは公爵の娘じゃなかったんだ。姉ではない」

 レオン様の言葉に首を振る。

「いいえ、例え血のつながりがなくても……それでも私にとってはお義姉様です……どうか、手当を、傷がいえるまでは公爵家で過ごさせてください」

 涙なんて出ないと思っていたのに。

 涙が出てきた。

 決してルイーゼの体に入っているユメアのことを心配しているからではない。

 自分のせいでルイーゼが階段を転げ落ち、意識を失ってしまったのに全く心配をしないレオン様の態度に悲しくなったのだ。

 10歳で婚約して、18歳になる今までの8年間は何だたのか。

 いくら、恋愛感情が持てないからと言っても……。心配さえされないほどの希薄な関係……いや、むしろ嫌悪されていたなんて……。

「ユメア君はなんて優しいんだ……。分かった。君の気持ちを尊重しよう。ルイーゼを公爵家へ運んで医師を派遣しろ」

 ほっと息を吐き出す。

 これで、もしルイーゼの体が死んでしまっても、ごまかしせるだろう。

 王太子であるアレン様が殺してしまったとなれば、ルイーゼが公爵令嬢であるのは不都合なことになる。

 だから、お母様の名誉を回復するために、本当にルイーゼは公爵の娘だったとの主張は黙殺される可能性がある。

 逆に、本当に公爵の娘だったと公表することができたとしたら、王太子が公爵令嬢を殺したことになりアレン様は王太子の地位を下ろされるだろう。それだけで済めばそれでいい。


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