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第5話 期間限定イエロー夏ちゃん…?

暗がりから目覚めるとやけにあたたかい。

やけに背が熱い。

やけにおもい?

やけにきもちいい…。


「────────ふにゃっんえ!? ハ! な……、なんですかこここ、これ!?? えどこ?」


「起きたか回復系男子生徒かわいい寝顔だったぞ♡」

「おぅ起きたぁ。きゃわきゃわのしのし」


裸で砂浜に寝そべる男子生徒の左右、おそろいの黄帽を被ったおそろいの黄色い水着の美女がいる。

見慣れた人物のまったく見慣れないまぶしい姿がすぐそこにあり……寝起きすぐの男子生徒は訳が分からない。

だがのしかかるその重みはたしかであり……ひしゃげた黄色いビキニごしの双丘が左右よりド迫力で密着している。


「えっ、えっ、ちょっとな、なんです!??」


「なにだと? はっはっは見ればわかるだろ? 寝ぼけているのか♡」

「おぅこの恰好がちょーヒントだよかいふくけいだんし」


「えっ、えっ??? イエロー……キャップ?」


「ははは正解だ、そうまさにイエローキャップ討伐記念ということで期間限定イエロー夏ちゃんだ!」

「おなじく期間限定イエロー牛頭梢だぁ!」


「き、きかんげんてい? いやまったく意味ひゃっ!? あぁああ」


やわい太腿で、突如の左右からやわらかく圧されるど迫力かつ刺激的な光景に海都は────。

その様子を見て少しいじわるそうに笑う雷夏先生と、まじまじと観察する牛頭梢の期間限定水着ペア。


「このところお疲れということで! このあらたに手に入れた部室ビーチでさっそく装いもあらたにハジケてェ…ダンジョン戦闘終わりの待ちに待ったぁシールド値を補給してリフレーーーッシュ! ということだ♡」

「おぅハジケろーぉりふれええええ」


「な、ななな、にゃんでぇえ!?」


ここで夏ちゃん先生はわきに用意し置いていたサンオイルを手にし、蓋を開けた。またあの魔の手が……今度は四つ、陽光に妖しく光るとろみをつけて。


回復系男子生徒楽天海都は分からない。

青空太陽が燦燦と照らす熱いここが分からない。

サンオイルの冷たさが彼の生の肌にしたたり……イエローキャップイエロービキニを装備した先生と女子生徒がただこちらを見つめている。


波音がかすかに聞こえる、それがおおきくなっていく。


クスクスと笑い声が聞こえる、それを聞きながら……とおく。


分からないまままた瞼はおもく閉じていき、目の前が暗くぼやけていった。







「あっらくてんかいとまたねた」

「フフフたくさんあそんでたくさん寝てたくさんオーラを回復しているんだろう」

「ちょっこしリフレッシュしすぎたぁ?」

「ちょっこし生徒の悩みやイロイロを一緒にもっちょり解消するのが先生の仕事だからな♡!」

「ちょっこしもっちょりハジケるビーチ?」

「ちょっこしもっこりハジケるビーチぃぃぃ!」

「「ふふふふふあははは」」

「あ、せんせヤドカリ来てる」

「ヤドカリ!? はははははな馬鹿なァぁハジケすぎだろぉぉ!!! ハハハハよぉーし牛頭梢部室ビーチ争奪戦の戦闘準備だ!」

「おぉぅ。部室ビーチは栃木女子としてちょっこし譲れないかも」


砂浜で女子同士で回復系男子には聞かせられないひみつの談笑していると────

やどかりが襲ってきた。

海の彼方から唐突も唐突に波立つ青をかきわけ、女子たちのキャッキャウフフな会話劇をその鋭利なハサミでちょん切るように。襲来したヤドカリモンスターに対して期間限定女子ペアはイエロービキニ姿のまま戦闘態勢に移っていった。


前衛はいつも通り絶対的つよさを誇る雷夏単騎戦法。後衛から小慣れてきたバズーカで手堅く重撃支援する牛頭梢生徒。

あらたに手に入れた部室チップ、部室ビーチ内での攻防は熱砂の波打ち際で剣撃、爆撃音はげしく────────



「おい回復系男子生徒カイト! 起きろおおおおおお」

「んぐぅふにゅ♡────ッんえ!?」

「なにやってるなにがふにゅ♡だダ~ンジョンの引っ越し業者ヤドカリだ! さっさと絶対的先生を回復しろおお!!!」

「ええ!? や、ヤド!?? え、え、なにが!?? え?? は!??」

「はやくしろおお業者だけあってチームワークができていて箪笥を片手で砕くぐらいには力持ちだぞおおお」

「は、は、ハイーーーーーー!!!」


楽天海都は耳を貫くあの声で目覚め起き上がる。おおきなヤドカリモンスターのハサミと絶賛両手の二刀でじゃんけん中であるビキニ姿の雷夏先生が寝ぼけの視界に映っておりただ事ではなさそうだ。

すぐさまひび割れが目立ち始めていた汗ながしきらめく雷夏ちゃんのDSシールドを、お得意の【巻く膜クレープグレープ弾】で言われた通りに強化応急補修、慌てて先生の指示に従い参戦した。

そして一度寝ぼけた目をごしごしとこすり……前方へと凝らした。

さぁバトルだ集中しなきゃと意気込もうとするが……まだまだ海から湧いてきている色とりどりの走る貝殻のファンタジーなありさまに、

「なななんでででかいヤドカリぃいい!??」

「なんでもヤドカリだぁぁぁ意外と脚も早いぞ狂暴だ♡気をつけろ小回りが利かないから突っ込んできたら横に走れ」

「なななんでヤドカリがでかくて狂暴なんすかああ!」

「なんでなんでぇ♡なななんでぇ♡寝起きのくせに戦闘中の質問攻めで絶対的夏ちゃんを追い詰める気かヘンタイ♡なんでもなにもヤドカリは宿を借りるヘンタイなヤツらだ、今よりいい宿を見つけたならばちょっこし嫌がらせに友達を呼んで騒ぎに来るのが当然だろッ、セイタイ♡」

「おぉちょっこし見損なったヤドカリさん、のセイタイ」

「それほんとにCMのヤドカリですかあああああああうおおおおお来んなぁあああ」

「らくてんかいとめっちゃハジケる、……おぉわたしにもきた? ちょ痛いやば」

「ははは緑蜜ダンジョン部ハジケろおおおお【爆雷斬】!!!」







緑蜜ダンジョン部は3人体制で盛り返そうとするもヤドカリモンスター1匹1匹の硬さに苦戦中であった。

しかし雷夏ちゃん先生はすでにこのモンスターを何匹と前衛で相手にし討ち倒しながら、傷付きながらも秘かに……喰らう術を確立していった。

そしてダンジョン部の生徒たちへと先生らしくレクチャーしていく。


「ご自慢のやけに硬い殻じゃなく意表をついて中身を狙え【電柱斬】! おすすめはこんなかんじのトラップだ! これなら殻に籠るまでのこちらの攻撃スピードは問われないぞ!」


意味もなさ気に刀で刻んだ砂地、その秘かな刀傷のラインをカサカサと突っ込み多脚で踏んでしまったヤドカリは、下から吹き上がる青い雷電の柱に焼かれてしまった。

そしてそのままダメージ限界を迎えて、滅。見事モンスターをトラップへと誘い込みDスキルチップとヤドカリの料理方法のお手本を示してみせた。


「なるほどそうかっ直接撃つんじゃなくて……トラップ! それなら俺でも! んーー、あっ────────甘く焼かれてひらめいたッとりあえず【策咲(サクサク)クレープグレープ弾】!!! こうでしょっ」


砂地に斜め下に構えたハンドガンから弾丸を放ち、仕掛けた広がる白いクレープエリア。

その円形エリアに侵入したヤドカリモンスターを自動で迎撃する。薄い円形の白を一気に折りたたみ硬く尖った三角クレープが砂地から隆起し、敵を真下から貫く。

柔い中身を鋭く抉られたヤドカリはあえなく滅。

雷夏ちゃん先生の指示通りの自分なりに楽天海都はやってみせ、それを見た赤い目は眩しくウインクし力強い親指を立てた。


「おぉわたしもちょっこしヒラメイタ。なら捨ててからの……遠隔【牛頭ーカ】、ばーん♡ちっちっち♡」


とにかくヒントは2人がやってみせたトラップ。相手を欺いてヤっちまえばいいと彼女は気付く。

バズーカをその辺に投棄して小盾のチップを使い牛頭梢は防御姿勢を取った。

砲弾の餌を貰いつづけすっかり彼女にご執心だった殻の焦げ付いたヤドカリモンスターは、鬱陶しいバズーカを捨てた今がチャンス、そんなへっぴり腰のダサい貝殻は砕かん!と言わんばかりに……。背負うご自慢の超硬貝殻で必殺の体当たりでぶちかまそうと、その多脚で走り近付いていく。

そしてカサカサ砂を蹴散らし迫る瞬間に、やってみせるはバズーカの遠隔操作、仕掛けた射線に誘導し勘良くDスキルチップを発動、不意にひとりでに向けた砲口が走るヤドカリの側面を撃つ。

どうぶつさんのきもちを上手く欺き利用した灰色娘は『ちっちっち♡』と左人差し指を小刻みに動かし、灰色に爆破され赤く砕け散っていった三角片に勝利の余裕をみせた。



「フフフどっちも100点まんてんの正解だぁあああさすが夏ちゃんパーティーの絶対的生徒たちだ! よしいくぞおお味方のトラップに引っかかるなよおお引っかけるなよおおハハハハハ【電柱斬】!!!」




▼▼▼

▽▽▽




「まさか手に入れた平和なダンジョンに引っ越し業者のヤドカリの群れが紛れ込んでいたとはな」


海の彼方よりお越し下さったヤドカリモンスターの群れは緑蜜ダンジョン部の3人が力を合わせ波打ち際に仕掛けたトラップを確認し合い、策と力押しで全て倒した。


戦闘中は必死であり気にならなかったがよくよく見てみるとものすごくエロい……黄色いビキニ姿。

運動後の汗だくで屈託のない笑みを浮かべる雷夏先生に、目のやり場に困りながらも男子生徒はこの珍事の成り行きを問うた。


「け、けけkけっきょくなんなんすかぁ……なんで起きたらヘンなやどかりがあんなに攻めて……」

「言ったろ厄介な宿借りとの部室ビーチ攻防戦だと」

「えっとこの砂浜と海があの青い草原みたいな部室……なんすか? なんか雰囲気が日もめちゃくちゃ照ってて?」

「まったく質問攻めが相変わらずなのはいいが例の手に入れた解析不能のチップを使ったのを見たろ」

「いや俺……なんかいきなし痺れてぜんぜんきお」

「まったくとんだ水着回だったなああああああはははは!!!」

「え……あのぉ……」

「らくてんかいと、ねすぎ」

「えぇ……いやたぶん俺もねたくてねたわけじゃ」

「そうだぞまったく肝心なときにいつも寝ているしかも訳の分からん技をひらめく回復役なんて勇者パーティーなら次の町でクビだぞ♡? ははははは」

「え? わけのわから、えぇ??」


ヤドカリを無事一掃後、平和の取り戻された部室ビーチに3人のせわしい笑い声が響き合う。

また聞こえてきた穏やかな波音はここちよく、熱いバトルで高揚した身体も落ち着きを取り戻していった。







正式名称、ヤドカリ夏ちゃん焼きそばの完成。

ヤドカリのきもちになり剥き海老と牡蛎を焼きそば麺にぶち込んでみた……それがこの料理の特徴なのだと先生は言う。それと紅ショウガと青のり、鰹節のフル装備は焼きそばには絶対、というこだわりが先生にはあるらしい。


「え。めっちゃうまいっすねこれ! シーフード焼きそば? 俺焼きそばでははじめてかもしれないです。豚じゃなくてもめっちゃいいっすね!」

「ヤドカリ夏ちゃん焼きそばだ、ははは」

「えヤドカリ……エビ、カキ…なんでぇ…………うまい…」

「おぉぅヤドカリ夏ちゃん焼きそばめちゃうま補給後だとよけうま」

「大好評のようだな。ダンジョンで汗水たらしイロイロじゅーーーっとたらし焼いたかいがあったというものだ! マ、夏ちゃんは普通のほうがすきかもなー。まぁまぁこれはこれで見栄えはいい栃木女子的にもこんなビーチで食べるには気分がアガりいい! 海の家で売れば……うーん2000円焼きそばだなヤドカリ夏ちゃん焼きそばは、ははははは」


まだまだプレート上に保温され置かれているヤドカリ夏ちゃん焼きそば。

割り箸と、適当にホームセンターで買ってきたという洒落た地元栃木の緑蜜焼。緑鮮やかに美しい陶器皿で食べる特製焼きそばは旨い。


その風に垂れ流されるおいしそうなニオイに釣られたのか……

青い鳥が砂浜に羽音を立て優雅に舞い降りた。

昨日ではなくやたらと長い気がする今日、見たことのあるその人と絶妙な間合いを取る生物に。


「あれ、こいつなんでここに?」

「ははーん、おおよそヤドカリ夏ちゃん焼きそばをねだりに来たんだろう」


そんなことだろうと何度か頷いた雷夏は焼きそばを皿に盛りお決まりの紅ショウガ、青のり、鰹節、さらに奮発して武器チップをトッピングで散らしたご自慢の焼きそばをそっと置いた。


「おぉがっついてかわいいねぇやっぱどうぶついいねぇ鳥さんもいいねぇ」

「ふふふダンジョンでこうペットを飼うのもなかなか悪くはないな」

「チップ入り焼きそば……」


おいしい夏ちゃんの焼きそばは疲れた生徒たちに大好評であり冷たいサイダーと共に腹に流し込まれていく。そのハジケる青と海の味のする焼きそばの相性は最高だ。


楽天海都も絶品のおかわりをもらいに……ホットプレートの焼きそばをご丁寧にもトングで入れてもらい礼を言う。


「ありが……ってなんですこいつ!? ヤッ!? やややややヤドカリの残党が!?」


焼きそばを挟み、皿に盛るトングを挟み、操るハサミ……。

何故かおかわりの焼きそばをヤドカリに盛られた男子生徒はでくわした珍事に驚いた。

そして宙を舞った焼きそばを、おっとっと……あわてて雷夏先生は完食し空いていた自分の皿でキャッチした。


「やややややーの残党だとぉ? はははのはー、私のヤドコンちゃんになんて言いぐさだ! (ほいっ焼きそば落ッとすなよ)」

「や、やどこんちゃん?? (あ、焼きそばマジすんません……よかったぁ…)」

「あぁヤドコンちゃんだ♡ホットプレートに接続している」

「おぉわたしのスマホの充電もまっくすおっけーだよ、こんちゃんあんがとぉ(あハサマないで)」


「なんすかそれええええええええ」


おおきな貝殻にコンセント差込口がいくつもある見た目が特徴的である。

そんな見た目が珍しくて洒落ているので“ヤドコンちゃん”“こんちゃん”と女子たち2人にさっそく愛称でよばれている。

男子生徒が寝ている間に勃発した先程のヤドカリ残党戦……ビーチの戦場でハジケ勝利した末の戦利品さいごのいっぴきであった。


そして現在ご自慢の殻にホットプレートを接続しており、スマホを充電している。

便利なヤドカリモンスターのヤドコンちゃんが緑蜜ダンジョン部のあらたな仲間に加わった。

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