卒業カレンダー
『卒業カレンダー』
新年にこのカレンダーを購入し、目標欄に記入したことを達成すると、それに応じた願いを魔神が叶えると言う。
でも高額。
欲しい物なら、お金を貯めて買った方が早い。
ある少女アンナは、1年置きにカレンダーを買っている。高額な為、2年計画でそのカレンダーを買うお金を貯蓄しているからだ。それはもう死に物狂いで。
彼女は◯◯の資格を取る
毎日3人は助ける
毎日10kmマラソンするなど、自分を高める目標を立てる。
懸命に働きながら、その目標を達成させる。
資格を取る関係ならばまだマシで、毎日と付けば難易度は上がる。風邪をひいても腹をこわしてもやり遂げなければならないから。
資格だって取り続ければ、難易度はだんだんと高くなって難しくなる。
なんやかんやあって、約20年。
カレンダーを買ったのは10回分。
彼女は目標を達成し続けた。
願いは使わず貯めたままなので、10回分を併せた願いが叶う概算。
そして今日、12月31日。
再び魔神に会う。これももう10回目だ。
「また会ったな、女。願いを言うが良い」
熊のように大きな、黒いスーツを着た大男が忽然と現れた。
少女はもう、大人の女性になっていた。
「30年前に戻りたいの。お願い」
「またか。まあ良い、では願いは叶えた」
そう言うと、彼女は6才の子供に戻っていた。
「お母さん、お父さん、大好きよ」
「お母さんも、アンナが大好きよ」
「お父さんだって、世界中で一番アンナが好きだ」
抱きあう3人は仲の良い家族だ。
そして16才の時に、両親は流行り病で亡くなる。
そしてカレンダーを買うのだ。
彼女はこれを繰り返している。
彼女は何故か記憶を持ったまま過去に戻るので、両親の死を何とか回避しようと試みるが失敗している。
もう何千回繰り返しているだろう。
魔神ももう、彼女を覚えてしまった。
他の者がどんなに悲しもうが喜ぼうが、彼女と共にある年月を繰り返すのだ。
彼女が諦めるか両親の死を回避するまで、この世界は進まない。
ここはある意味、彼女の世界なのだ。
彼女がここから、卒業できる日は来るのだろうか?
◇◇◇
ある意味、魔神にとってのルーティン。ガッツのある彼女を気に入っており、スカウトも考えている。
12/11 12時 日間純文学(短編) 16位でした。ありがとうございます(*^^*)