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【ナーロッパではない中世へ】この転生には、いったいどのような<意味>があるというのか?  作者: エンゲブラ
本編

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68 二つの情報

フェリックスとテオドールは、エティエンヌとアレッサンドロを伴い、別室へと移動した。共に「重大な情報」を対価として提示してきたための措置であった。


まずはエティエンヌからの話を聴くこととなったが、それはいきなり不穏なものであった。


「今夏、秋の収穫のひと月ほど前の時期に、シュヴァルツヴァルト領への侵攻の計画が、ヴォードラン、フロワサール、ベルナール各家の連名で、フランカの宮廷に上がってきている。今のところ、穏健派である我がモンレーヴやシュヴァルツヴァルトともライン川を挟み、隣接するジラール伯爵家はこれに反対しているが、どうにも我が王も乗り気のご様子……ジラールとシュヴァルツヴァルト辺境伯家との内通も疑われておられ、ジラールの領地替えの話もお口になされているとか」


フェリクスとテオドールは、顔を見合わせた。

この侵攻の動きは、実際に懇意にしているジラール伯爵家からも、同様の報告が上がってきており、裏付けが取れる形となったためであった。


「ジラールは先祖伝来の地を離れるつもりはないと抵抗の意を示しているゆえ、抵抗が長引くようであれば、ジラール領を通らず、北側からの侵攻ルートを取るつもりのようだが、どうかな、この情報は。記念金貨2~3セット分ほどの価値はあったのではないかな?」


「……十分な情報だが、貨幣セットの配布は各人1セットまでだ。残りの対価は別の形で支払おう」食い下がる必要はなかったが、敢えてフェリクスはそう答えた。


「いや、出来れば3セットは欲しいね。もちろん、対価には僕がフランカに持ち帰る情報の運賃も含まれているからね。君たちの意図をどれくらい反映するかは、その対価にかかっていると思ってもらってもかまわない」悪びれず、ニコリと口元だけの笑みを作るエティエンヌ。


「……分かった。5セット渡そう。他にも必要な物があれば、遠慮なく言ってくれ。出来得るかぎりの便宜を図ろう」


エティエンヌの背後に、モンレーヴ宮中伯家の覚悟を読み取り、それに応えるフェリクス。


「さすがはフェリクス!話の分かる男だ。こちらも出来得る限りの協力をしようじゃないか」



「待たせたね、アレックス」

エティエンヌに続き、隣室に待機させていたアレサンドロ・ディ・モンタルドを室内に招き入れるフェリクス。


「エティエンヌの興奮した声が聴こえたけど、商談が成立したようだね。これで残り9セット。これは僕も譲れないね」


「面白くない話なら、許さないぞ、アレックス」

椅子に座り、腕組みをし、待ち構えるエティエンヌ。


「え、彼は退出させなくていいのかい?僕は部屋の外で待機させられたのに……それに僕の話は外部の国の人間に聞かせるには、少々……」


「アレックス、君の期待する貨幣セットの今回の提供者は、この僕だからね。さあ、話を聞かせてもらおうじゃないか」


エティエンヌは、フェリクスから提示された貨幣セット5つのうち、ひとつを返上。今ひとつをアレッサンドロの情報料として提供することをフェリクスとテオドールに誓い、そのまま、その場に居座っていた。


フェリクスとテオドールは、これからアレッサンドロの口からもたらされる情報にも、ある程度の検討がついていた。それゆえにテオドールは、エティエンヌの退出を促したが、フェリクスはそれを軽く制止しし、エティエンヌがそのまま居座ることを許していた。


アレッサンドロがもたらした情報 ―― それは教皇庁による、フェリクスへの異端審問への動きであった。



「―― なんとも馬鹿げた話だな。枢機卿たちとやらは道理に暗いと見える。帝国の太陽にそのような雲をかけて、いったい何になるというのだ?」

エティエンヌは、大げさに「俺はお前の味方だ」と言わんばかりに、フェリクスの方をふり返り、アピールした。


「で、時期はどのくらいになりそうだ、アレッサンドロ?」


「さあ……そこまでは分からないよ。僕も実家からこんな話があるからノフェリクスに報告し、巧いこと歓心を買っておけとだけ言われただけだから……」


「ふっ、歓心を買っておけか……モンタルド子爵め」

テオドールが、アレッサンドロの言葉に不快感を示す。


「ぼ、僕の言葉じゃないからね、テオドール。あ、いや、フェリクスも!」


「分かってるよ、貴重な情報をありがとう、アレッサンドロ」

アレッサンドロに対し、笑顔を見せ、エティエンヌに対し、対価の支払いをジェスチャーで促すフェリクス。


「おい、この話、決して他言するでないぞ、アレックス。分かってるな?」

どの口で、それを言っているのかはよく分からないが、エティエンヌはアレッサンドロに釘を刺し、フェリクスから受け取っていたジギスムントの貨幣セットのひとつを彼に与えた。


大人のふりをしてはいるが、エティエンヌとアレッサンドロは、まだまだ年相応の少年の味を残しているらしくて、微笑ましい。


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