45 選帝侯たち
選帝侯 ―― この領邦国家体制である帝国の「皇帝」を投票によって決める権限を持つ、七名の有力諸侯。
すでに本作に登場しているメンバーでいうと、ボヘミア王(兼・現皇帝)ヴィクトール、ザールブリュッケン大司教クレメンス、バーゼル大司教ステファノが、これに当たるが、今回は残りの四名についてを少し。
聖職諸侯とも呼ばれる大司教位からの選帝侯は現状で三名。ザーリュブリュッケンとバーゼルの他に、ドレステン大司教のエルンストがいる。エルンストは「真剣・誠実・厳格」を意味する名。ザクセン地方の有力貴族メルゼブルク家の出身だが、こちらもザールブリュッケン大司教クレメンスと同様、なかなかに生臭い男である。信仰は形式のみで、神の存在については懐疑的な俗物聖職者。
(ドレステン大司教エルンスト・フォン・メルゼブルク)
バイエルン公ルプレヒト。歴代に何名も皇帝を出してきた名門貴族ヴィッテルスバッハ家の現当主ルプレヒト。ミュンヘンを根拠地とし、広大な農業地帯を持つが、その栄光に甘え、勉学を怠り、また苦言を呈する先代からの側近たちを続々と解雇。結果、栄光のヴィッテルスバッハを没落へと追いやりつつある張本人。現在、シュヴァルツヴァルト辺境伯領ともその領界を面しており、また幾名もの寄子貴族たちがシュヴァルツヴァルトへと鞍替え。そのため、両家は敵対関係にも近しい間柄となっているはずだが、当の本人はどこ吹く風。借財に借財を重ね、公爵家を潰しかねない害悪となっており、縁戚からもその生命を狙われているとか、狙われていないとかのボンクラぶり。
(バイエルン公ルプレヒト・フォン・ヴィッテルスバッハ)
シュタイアーマルク伯ヴォルフラム。(オーストリア)グラーツを根拠地とする武断的な性質の強いグライフ(=グリフォン)伯爵家の現当主ヴォルフラム。鉄や銀を豊富に産出する鉱山も有し、<帝国の剣>とも呼ばれる一族の次世代のイケメン。
(シュタイアーマルク伯ヴォルフラム・フォン・グライフ)
ヴェローナ伯ロドヴィーコ。(イタリア)半島北部、商業の要衝地・ヴェローナを根拠地とするスカラ家の当主。地中海に面したジェノヴァも支配領域としており、かなりの蓄財をしている。元々は権謀術数でのし上がった一族だが、当のロドヴィーゴ本人は、芸術と文化を愛す「柔弱な男」と見られる向きが多い。
(ヴェローナ伯ロドヴィーコ・ダ・スカラ)
先の三名(=ヴィクトール、クレメンス、ステファノ)に加え、この四名を加えた計七名。これが現在、この帝国の選帝侯の面々であるわけだが、ここにシュヴァルツヴァルト辺境伯ジギスムントを加えようとするのが、来春、シュヴァルツブルクで取り仕切られる選帝侯会議における主たる議題であった。
ジギスムントを加えると「八名」となる選帝侯位。票が偶数となるため、そのあたりも含め、調整しなければならない課題が山積している現状。その上、ジギスムントが選帝侯となるためには、ボヘミアとザールブリュッケン以外にも、あと2勢力からの承認が必要。
春を迎える頃には、果たしてどうなっているのか?―― この秋から冬にかけて、シュヴァルツヴァルト勢力の成さねばならぬことは非常に多かった。
後書き)
……投稿遅延な上に、いわゆる短い設定回で申し訳ない。
そして、更なる大失態。
貴族家の名前に関する勘違いだ。
考えれば、気付けたことだが、支配領域と家名は違う。
今回から登場した人物たちには、ちゃんと家名も付けてみたが、これまでの登場人物たちにおいては、完全に混同していた……。
シュヴァルツヴァルト辺境伯ジギスムントは、ジギスムント・フォン・シュヴァルツブルクが正解?となると、シュヴァルツバルト辺境伯家という言葉をこれまで何度も使ってきたが「シュヴァルツブルク辺境伯家」とするのが正解か?
『銀河英雄伝説』のノリで、ろくに調べもせずに名前を付けてきたわけだが、ここで大きなしっぺ返しだ。銀英伝のように知らんぷりの統一でも構わないわけだが、修正するかどうか迷いどころである。
ついでにいえば、追加の選帝侯。
以前に後書き部分で、残りの選帝侯の領域も書いていたが、地政学的な観点から変更。シュタイアーマルク(オーストリア)とヴェローナ(北イタリア)の方が、様々な面でバランスが良いな、ということによる変更。あっちもしれっと消さなければ(歴史修正主義)。




