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31話▶奥手な先輩

 休憩を終えた俺は、先輩が作業している持ち場へと戻った。


「先輩、休憩ありがとうございました」

「おう……もうじき午後便が着くみたいだから、それが届いたら仕分け作業ね」

「はい」


 先輩から渡されたリストに目を通し、マーカーで記されていた商品がどの業者で届くかを確認していた。


「そう言えば、神蔵くんは夏休みにバイトばっかりしてていいの?」


 思いがけず先輩に声を掛けられ、一瞬俺の動きは止まったが、一呼吸置いてから返答した。


「うちの高校、課題とかそこまで多くないので大丈夫ですよ」

「あぁ……そういうことじゃなくってね……。友達とか……恋人との時間はいいのかぁ……と思ってね」

「こ、恋人っ!?」

「……なんかごめん……。俺……変なこと言ってるよね」


――こんなに照れてる先輩……初めて見たなぁ。……とういうか、人に興味を示すとは思わなかった……って言ったら失礼だよな……。


「先輩、謝らないでください」

「俺さ、人と話すのが苦手なんだよね。それを克服するためにバイトを始めたんだけど、ここってコミュニケーションスキルが高い人ばっかで、正直参ってるんだよね……自分から話し掛けないといつまで経っても変われないまんまだし……と思って話し掛けたんだけど、プライベートに踏み込み過ぎてるよね……すみませんでした」


 その後、先輩は自分自身を罰するように、黙々と作業を再開していた。


――先輩って確か大学生だっけな……。


 俺自身もコミュニケーションスキルが高い方ではないが、高校に通うようになってから色々なイベントをこなすうちに話せるようになってきてる。人と話すことで気付くこともたくさんあるだろうから、俺は俺のやり方で先輩との距離を縮めようと固く決意した。


「先輩、俺まだ高1なんですけど、大学の選び方でアドバイスってありますか?」

「……え?」

「いきなりプライベートな話よりも、こういう話からの方がいいかなぁ、と思いまして」

「確かにそうだよね。はは、まさか後輩である神蔵くんにアドバイスされるとは……」

「アドバイスなんてそんなっ!」

「俺が言えることはね、高校生らしく楽しむことかな」


 先輩の表情を見る限りどこか切なそうでもあったが、俺は深く介入することはせず、先輩からのアドバイスを聞きながら作業を進めた。


「そういえば店長から聞いたんだけど、雫石さんと同じ高校なんだってね」

「そうなんですよ。同じクラスメイトですよ」

「初めて会ったとき、ちょっと怖い人かも……って思ったよ。口数少なそうだし、人との距離を置きそうなイメージだし」

「確かに始めはそんな感じでしたけど、今では結構色んな話をしますよ」

「え?……そうなの?」

「はい」

「……それってきっと、神蔵くんと同級生だからだよ。……俺みたいな陰キャコミュ障には近寄りがたいっす」

「あはは……」


――そんなにしょぼくれられると……何も言えないじゃん。


 その後も作業をしながら会話をし、先輩の人となりを俺なりに得ることができた。

 時間差で届く荷物の仕分けを行い、ネット注文で店舗取り置きの物をリストで確認し、日にち別に仕分けたりしているうちに、バイトの終業時間を迎えた。


「神蔵くん、俺はまだ少しだけすることがあるから先に上がってね」

「はい、お疲れ様でした」


 ようやく作業を終え、俺は控室へと向かっていた。


――結局、同じ店で働いていても雫石さんとは話せなかったなぁ……。まぁ忙しかったし仕方ないか。


 控室の扉を開けると、雫石さんが椅子に座ってスマホを見ていた。


「凛人!お疲れ様ぁ」

「お疲れ……ちょっと遅くなってごめん」

「いいよ。凛人たち、結構忙しそうだったもんね」

「そうなんだよ。今日に限ってなぜか商品が多くて」

「私も疲れたぁ。ホコ天になる前にここを抜け出さないと!」

「そうだね」


 俺は急いで荷物を片付け、アニショップを後にした。


「うわっ、この時間の日差し……暑すぎる」

「夏の暑さに加えて、人込みで密度も上がるから余計に体感温度が高くなるよね」

「んね」


 帰り道、商店街のアーケード内は日差しが当たらないものの、一歩出れば夏独特の日差しが襲い掛かってきた。

 人込みをかき分けるように歩く中、俺の手と雫石さんの手が触れそうな絶妙な距離を保ちながら歩いていた。


――恋人なんだから、手を繋いでもいいのかな……。けど、いきなり繋ぐのも雫石さんに引かれちゃう可能性があるし……。


 1人もんもんと考えながら歩いていると、いつの間にか駅に辿り着き、俺は雫石さんに気付かれないように自分自身の拳にぎゅっと力を込めた。


「あのさ、雫石さん」


――俺は……。

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