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22話 反射神経

 チーム対抗戦となる球技大会。

 各クラス、1チームはバレーボール経験者で固めて試合に挑んでいた。


――そりゃそうか……。いくら遊び感覚とは言え、ガチで勝ちに行く人たちもいるんだろうしな……。1番厄介なのは、1組だろうな……。


 勉強よりも部活に力を入れている人たちの集まりと言っても過言ではないくらい、スポーツに力を入れている人たちが多かった。

 学級委員で一緒の野辺さんも、大八木くん情報ではバレーボールを極めているうちの1人だそうだ。


――あんまり運動できるようには見えないけど……。


 ピピーッ。

 笛の音と共に試合が終わったコートでは、膝を付いて悔しがる5組と、飛び跳ねて喜ぶ3組の姿があった。


「お疲れ様でした。尚、休憩を挟んだ後、こちらのコート内では最終戦、1年1組対1年2組の試合を行います。最後の試合となりますので、皆様の熱い声援をお願いします」


 体育館に響くアナウンスを聞きつけた全学年の生徒が、ぞろぞろと体育館に足を運んできた。


――最終だからって、そんなに集まらなくてもいいよ!


 そう……。この対戦こそ、球技大会の最終決戦、いわば決勝戦なのだが……。残っているチームに俺がいることは、何かの間違いではないかとさえ思えていた。


「これが最後の試合だ!相手はバレーボール経験者チームだけど、俺たちなら勝てるぞ!」

「うおぉぉぉぉっ!」


――なんだこのやる気に満ちあふれている一体感は……。勝ち進むにつれ増してきたとはいえ、これは陰キャの俺にはハードルが高すぎる……。


 そんなことを思いながら、一応周りに合わせる素振りをしていると、そんな俺の姿を見ていた雫石さんとバッチリ目が合ってしまった。すると雫石さんは親指を立て、ジェスチャーで頑張れ、と示してくれていた。


――っ!!!!!これは頑張れる!


 対する1組は、現役バレーボール部の7名。その中には野辺さんの姿もあり、普段とは違う格好に少しだけドキリとしてしまった。

 体操着ほど身体のラインがはっきりとする物はないだろうと思うくらい、女性特有の素晴らしい体型をしていた。


――きっと大八木くんは別の意味で興奮してるんじゃないかなぁ……。それにしても……めちゃくちゃ揺れそうだな……跳んだときとかすごそう……。って何考えてんだ!思考を変えなければっ。


 試合が始まる頃には、体育館を埋め尽くすくらいの生徒で溢れていた。


 ピピーッ――。

 笛の合図で最終試合が始まった。


 昂る応援のボルテージ、チーム内でも声を出し合い、1つ1つ丁寧にボールを回し、攻撃の要となるアタッカーへとパスを繋いだ。

 俺が活躍する場は、相手チームからの攻撃を受けた後だった。ポジションで言うなればリベロ。どんなに速く強烈なボールでも、持ち前の反射神経で飛び込んでは高く上げることができた。バレーボール経験者ではないが、この反射神経は間違いなくゲームで鍛えられた賜物だ。


――クプラニ、という音ゲーをやりこむことで培われた反射神経……まさかこんな形で活かされるとは……。


「おりゃっ!」


 体勢を崩しながらも果敢に拾い続け、攻撃へと繋げた結果――。

 俺たち2組チームは僅差で敗北となった。


 試合終了の笛は、聴衆の大きな歓声で書き消されていたが、俺史上としては過去一運動した1日となった。


「神蔵っ!今回のMVPは誰がなんと言おうとお前だっ!」


 チームの主将気取りの丸井くんが肩を組みながら言ってきた。


「異論なしっ!」

「よくあんな速いボール拾えたよな」

「すっごく頼りになったよ!」


 今まで言われたことがないくらいの称賛を受け、俺は照れながら頬を掻くしかできなかった。


 球技大会も無事に終わり、着替え終えたまま帰ろうとしていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえて来た。


「神蔵っ!」


 振り向くと、急いで走って来たのか、少しだけ息が上がった状態の雫石さんの姿があった。


「雫石さん……どうしたの?」

「……どうしても伝えたいことがあって……はぁ……ふぅ……」


――伝えたいことって?……こんなに息を切らしてまで俺に何を伝えるんだ……


 ドキドキしながら待っていると、


「今日の神蔵、すっごくかっこよかったよ!お疲れ!」

「あ……ありがとう……その、雫石さんのアタックもかっこよかったよ」


 恥ずかしさのあまり、どもりながら答えてしまったが、ふと雫石さんの顔を見ると、そんな事は気にしてないとでも言わんばかりの笑顔があった。


「ありがと!」


 俺は気づいてしまった。

 俺自身の感情に……。


「駅まで一緒に帰ろ!」

「そうだね」

「明日、筋肉痛で動けないかも……」

「普段から運動してないからだよ!ゲームばっかりじゃなくて、外で運動することも大事だよ」

「雫石さんだって同じでしょ」

「ちょっと、一緒にしないでよ」


 俺自身の感情を素直に受け止めたからなのか、今までとは違う、不思議な気持ちで雫石さんと話せていた。

 

――俺は、雫石さんが好きなんだ。


 運動して温まった身体とは別に、心温かな感情で俺は満たされていた。

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