第50話 幕間・Rebirth(裏)
「ひいっ、ひい……」
夜の帳が降りた街を、ひたすらに老人が駆けていく。
その姿は必死そのもので、人のいない廃ビル街をどれだけ走ったのか……《《警察署長》》の彼が怯えるほど、追手の追い詰め方は完璧だった。
携帯電話は、何故か圏外。
人気のある道に向かえば、必ずそこにそれと分かる追手がいる。
見抜いているのではない。
それとわかるように、見せつけているのだ……自分をいつでも好きにできるぞ、と。
「頼む……分かった、降参する……だから、頼む……」
24時間の追いかけっこで、老人の体力と気力は既に折れた。
何故自分が。
何を間違えたのか。
孫を異星からの侵略者に二人差し出して、まるで老人は理解していなかった。
「よう、元気そうだね署長さん」
「あ、あ、貴女は……いえ、あなた様は……」
よく知った声が、廃ビルの立ち並ぶ場所を抜けた先の『その土地』にあった。
「お世辞は良いよ、いい加減、僕が君を追い込みたい場所に気づいてくれたかい?」
「ああ、はは、そう言うこと……でしたか……ぜぇっ、ぜぇ……」
「キミのお孫さんは善人とも言い難いけどね、ま、天国へ行けるかわかんないから、最期に声くらいかけたいだろ?」
そこは、墓地。
彼の孫、カエサルが眠る場所でもある。
「ああ、はは、カエサル……ああ、あれは、本当に、失敗だった……」
「……失敗?」
怒りをにじませ、彼を1日弄んだ女……巫女服の、せきなが問う。
「アレが、入学式の日だった……私は、アイツに《《全てを話した》》! そうしたらあの子はそれから全てを諦めたように、無軌道に……耐えられるわけがなかったんだ、あの子に! だから……失敗だったんだ……私が! あんなことさえしなければ! ああ……すまない、すまないカエサル……アリス……」
「《《入学式の日》》? 待て、お前いつから……!?」
ぱん。
あっさりとした音とともに、老人のこめかみから血が吹き出て、倒れ伏す。
「っ!!」
「あっ、あ……あぃ、え、」
とっさに墓石を盾にしたせきなだったが追撃はない。
びくびくと魚のように痙攣する老人からは聞けることはもう何もないが、追撃が無いのはこちらをいつでも殺せるという余裕からだろうか? 一体どこから……と考えた瞬間、全ての答えが上空にあった。
「ふ、ふざけやがって……」
現れたのは、UFO。
煌々《こうこう》とライトを照らしながら現れたの帽子型のそれは、絵に描いたようにイメージそのまんまのUFOだった。
周りの仲間たちが発砲するが、その拳銃は空に吸い込まれ、それにしがみついた黒服も途中まで空に吸い上げられていく。
「あー無理だ無理だ、殺されないだけありがたいと思っておこう……たぶんこの後は定番の流れだぞ」
そう言った瞬間、目も当てられないほどの強い光が炸裂して、
「……だと思ったよ。ったく、古い映画が好きな連中だな……グラサンはつけさせてたんだが」
気づけば仲間たちとともに、墓場に寝かされていた。
記憶を消されなかったのは、異星人の気まぐれだったのかもしれない。




