第1話 MARS(天からの使者)
太陽系第3惑星・『地球』の大気圏外から『それ』――《《赤いUFO》》が飛来したのは、西暦で言う1999年の、7月のことだった。
音もなく飛来した『それ』は何処から来たのか《《当然のように》》不明のまま、とある大国の、国境近くにある田舎町――かつて栄えた炭鉱が朽ち果てた、過疎の街へと燃え落ちた。
後に『神の赤い涙』と名付けられた『それ』が、結局のところ何だったのかを、知る者はいない。
何故ならそれは灼熱のクレーターの中、破壊した廃炭鉱の設備諸々を取り込んで――
――《《巨大なロボットになったからだ》》。
山が燃える満月の夜、田舎とはいえ山一つを覆う炭鉱に、立ち上がる一体の巨人。地球の物理法則では不可能と言われた巨人の屹立・歩行を、まるで当然のように、その鉄と炭と木で出来た巨人は成し遂げる。
荒唐無稽にして奇想天外。
夢物語で奇妙奇天烈な巨大ロボット、『マルス』は、まるでジャパニメーションのオープニングよろしく、各国の町々を無差別に、その暴力で破壊した。
破壊して、破壊して、破壊し尽くして……分裂した。
1つ1つが燃え盛るUFOへと変形したマルスの各分裂体は、『マルス』だった時には一切効果のなかった近代兵器が通用し、人類は『マルス』の撃破に成功する。かくして世界に――否、地球に平和が訪れた。
それが、西暦の終わりの話。
年号を改め、『新暦』となった地球に、それから約30年の月日が流れ――
――人類は、復興を遂げていた。
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