天才お世話係なんて仕事はもうやらなくていいそうです。
※この物語は『第四回なろうラジオ大賞』投稿用の1000文字以内の超短編です!
「結衣、お前クビな」
「はあ?」
私はこの学園でも天才と呼び声高い堂島誠の言葉に思わず声を上げる。
「クビってなに?」
「だからぁ、お前のやってる『天才お世話係』って仕事はもうやらなくていいってこと」
別に好きでやってるわけではない。幼馴染だからという理由でおじさんに押し付けられただけだ。まあ、小遣いも貰えるし、私としては断る理由がなかったからなだけなんだけど……。
「理由はな……」
いや、聞いてないんだけど……。
「彼女が出来たんだよ!」
まあ、そんなところだろう。コイツはモテる。
背は高いし、顔もいい。運動神経だって抜群だ。
そして、何より天才だ。
日本一頭の良い高校生らしい。んで、色んな論文とか書いてるらしい。
「相手はな」
いや、聞いてないんだけど。
「笹川結愛ちゃんだ!」
へー。それは良かったね。あの胸デカ女ね。凄い打算的だけど。
「というわけで、誠君のお世話は全て私がするから」
笹川結愛だ、いたのかよ。
「誠君は私のもの。じゃあね~」
笹川結愛は脂肪を揺らしながらそう言って、笑いながらこっちを見る誠を連れて教室を出て行った。
だが、二人は勘違いをしている。
そして、誠に至っては忘れている。
天才お世話係の意味を。
「おー、やっと手放したか、アイツ」
いたのかよ。
赤髪のヤンキーがこちらにやってきた。
「じゃあ、約束通り。俺と付き合ってくれよ!」
「わかったわかった。二位くん」
「二位じゃねえよ! 二村だよ! それに、もう二位じゃないぞ!」
そして、三か月後……
「おいぃいい! 結愛! アレどこだよ! あと、飯! もう怠くて仕方ないんだけど!」
「はあはあ……あ、あの子、こんな欠陥人間のお世話してたの? 凄すぎるんだけど……」
バカ天才と胸デカ女がよろよろしてる。ウケる。
「結衣! やった! やったぞ! お前のお陰でアイツに勝てた!」
「私は、天才お世話係だからね」
そう、私はお世話の天才らしい。相手の求めるものを察知し準備できる天才。
なんだそれ。
とにかく、誠は頭脳労働以外壊滅的な男だった。
そして、赤髪のコイツは万年二位で誠に負けていた男。ま、コイツも天才だ。
「いや、違う」
「は?」
「俺は天才お世話係なんかいらねえよ。お前が俺の恋人になってくれただけでめっちゃやる気出た。それだけだよ」
いや、聞いてないし。
どうやら、もう天才お世話係はしなくていいらしい。
私は『お前の一番でいたい』と言ってくれた私の好きな人の恋人だけでいいらしい。
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