第49話 歴史
「ちゃんと送り届けたか?」
「僕ってそんなに信用ないのかい?」
普段のスウを見ているユウは全く信用できずついネネが家に帰れたのかを聞く。
「まぁ、お前含めて改めて日本に来てくれてよかった。もし俺一人だったら…」
堕天使で魔界軍幹部のユウは負力と聖力同時に扱えるがどちらも特化しているわけではない。
要するに器用貧乏なのだ。
悪魔の中でも屈指の実力を持つスウやハルカが戦力になってくれたからこそ生還できたが一人なら確実に負けていた。
「でもなんで今になって天界は攻撃をしてきたのかしらね。だってユウやマコは一年も前に来てるし私達が来たのは四月末頃。半年近く放置してたのに」
ハルカの疑問はもちろんユウも抱いていた。
なぜこのタイミングなのか。天界はそもそも何を隠したがっているのか。逆になぜ魔界は放任なのか。
「きっと魔界軍の幹部大半がいなくなったからじゃねーかな。俺一人ならまだ軍の壊滅で死んだと思われるくらいだけど他の軍員がいて幹部だけいなくなるってのもおかしな話だしな」
ユウは思う。やはり地球でぬくぬくと過ごすのはリスクが高く結果的に地球の人を巻き込む形になりつつある。想定していた最悪のケースだった。
「それはまあわかるけどぉ、この前みたいにネネちゃんがマークされる理由はぁ?」
無論マリカの疑問も至極真っ当であり魔天戦争となんら関わりのないネネが狙われる理由がわからない。
「それこそ月の秘密がなんちゃらってやつなんじゃないの?あたし達がわからないんだからそんな秘密ネネちゃんが知ってるわけないのに」
「・・・月の秘密って言うとスケールがだいぶデカくなるけど天界の秘密、だろうな。俺が生きてるって知られてるならそれしか思いつかん」
「天界の秘密ってなによ」
「ユウ、もっとわかりやすく言ってあげなよ。ハルカなんだから」
「どういうことよ!」
「・・・天界にとっても魔界にとっても都合の悪いことって言えばわかるか?」
「なるほど、わからないわ」
「自信満々に言うな」
「都合が悪いかどうかはさておいて」
スウがリビングの冷蔵庫を勝手に開けてウイスキーと炭酸水を出す。
「今の状況で天界と魔界は戦争している。それから少なくとも僕らが生まれた時から天界人、魔界人・・・この場合は天使と悪魔か?それらはまったく別の生き物として扱ってたよね?」
人間世界を知った悪魔たちにとっての天使は動物や家畜と同等という見方だった。きっと逆もしかり。
「それ以上昔のことは分からないけどお互いが下等な生き物として見ていた。交われるはずがないとね」
スウはウイスキーをグラスに注ぐ。
「さて、そんな天魔界に少なくとも交流があったっていう証拠が一つあるよね?」
「それって?」
「ここまで言っても分からないのかい君は・・・」
「あのなあハルカ・・・俺がどういう悪魔か分かってるか?」
ユウすらもハルカの理解力のなさに肩を落とす。
「ユウは天使の力も悪魔の力も扱える天魔の血が混ざった悪魔寄りの存在・・・さあ天使なのか悪魔なのかの定義は難しいけど。ユウの存在自体が過去天魔界が交わった生ける証拠だろうね」
スウは注いだウイスキーに炭酸水を混ぜた。




