第47話 反逆した者
スウの結界に守られながら夜の町を音もなくネネは飛んでいた。
短時間で月の、魔界の戦争を経験し心身共に疲れ果てていたが不思議と眠気は来なかった。
「あの子も見た目通りの年齢じゃないんですか?」
ネネは魔界軍の親玉、死神の少女についてスウに聞いてみた。
「ああ、魔王様のことか。120歳くらいじゃなかったかな。人間にもギリギリ生きれる範囲かもしれないがいたらギネス級だね」
「魔界年齢だと・・・」
「ほぼ子供だね。人間で言ったら中学生とかそれくらいか?」
「あの子が魔王なんですね」
人間換算したら12歳。そのような子供が軍を仕切っているのだろうか。魔界、しいては天魔戦争とは一体?
「まあ指揮してるのはほとんどサナだからね。かといって名ばかり役員ってわけでもないけど」
「魔界軍って能力の強さで階級が変わるんですよね・・・?じゃあ」
「そうだよ。魔王様が第一位だね」
スウは最初こそネネに多くは語らなかったがもはや月にまで連れてきてしまったため以前よりかは魔界のことを話してくれるようになった。ユウは幼いころから魔界軍に所属していたが魔界軍発足当初からのメンバーである古参幹部のスウはユウやハルカの知らないことをきっと知っているだろう。
「前から思っていたけど人間にとって悪魔なんて恐怖、忌み嫌われる者、悪魔祓い、そんな認識だろう?その割には君知りたがるけど怖くないのかい?」
「それはそうですけど・・・」
「今でこそこうして一緒にいるけど僕らは魔界の悪魔。いつかはあるべき所に帰らなきゃいけなくなるかもしれないよ?」
「急に現実を突きつけるあたり意地悪ですね」
「そう怒らないでくれよ。僕も400年生きてて知らなかったけど僕らは魔術が使えて少しだけ体の構造が異なる。でもほとんど容姿は人間に近い。世界飛び回っていた時過去に月の悪魔や天使がこの地球に来て人間に認知されていたから今でも神話や聖書に残っているのも間違いじゃない」
スウは珍しく口数多く語る。
「君が僕らの事を良く思ってくれてるのは知ってる。君は天使やら悪魔やらにも偏見なく理解してる。でもね」
スウは振り向く事もせずネネの手を握ったまま飛行を続ける。
「歴史上、いやこの場合宗教上か。人間と共存できた悪魔は居ないよ。人間の中にも恐らく不思議な力を持つ超能力者がいるのは本当だろう。かつて人間と和解できたけどエクソシストに祓われて泣く泣く離れ離れにされた悪魔もいたわけだし・・・」
「待ってください!?今結構重要なこと言いませんでした!?」
悪魔が地球人と接触していた?ネネのほかに悪魔と関わりを持った人間が過去にもいた。前例があった。その悪魔は人間を愛したのだろうか。それとも悪魔のイメージの如く利用しようとしたのだろうか。
「君の他にも悪魔と接触した人間の事例はあるよ。日本じゃ熱心なキリスト教徒意外は認識薄いかもしれないけど聖典にある悪魔なんてろくなものじゃない。だからそういうことなんだろ」
ここにきてスウは話を終わらせようとするがネネは食い下がった。今会話を終らせれば気まぐれなスウは話してくれなくなるかもしれない。
「ここまで話して煙にまかないでください!!スウさん達が悪魔で魔界がどんなことをしていてどんな生活を送ってるのかとか大昔に地球でどう関わったのか知りませんけど!」
ネネは正直な気持ちをぶちまける。
「今は私にとって悪魔とか天使とか関係ありませんし、それにユウくんの・・・好きな人のことを知りたいと思う事はいけないことなんですか!?」
スウは少し驚いた顔でネネを見るがすぐにいつもの意地悪な笑みを浮かべた。
「いや、悪いことじゃあないさ。君みたいな人が世の中の常識を変えてくんだろうから」
「ユウくんだけじゃなくてスウさんもハルカさんもマリカさんも、会長だって・・・私にとって・・・大事な友達なんですから・・・」
「・・・じゃあ一つ昔話でもしようか。ここまで連れまわしたお詫びだよ。僕がまだ君ぐらいの頃、と言っても300年近く前の頃だけどかつて悪魔が人間の少女と共に生きようとしたことがあった」
「悪魔が人間と・・・」
「もっとも悪魔と天使が地球に初めて関わったのは中世とかそれくらいだろうけどね。結局一緒にいるためにその時の悪魔は契約って形で少女と共存しようとした。そして他の人間はそれを『憑りつき』って認識した」
悪魔の契約、悪魔に憑りつかれるというのはあながち間違いではなかったのだ。
「結局エクソシストといわれる祈祷師によって祓われた悪魔は魔界に戻らざるを得なくなったけどそもそも悪魔と人では寿命の差もあるしそれなりの覚悟で人間と生きようとした彼は地球で最悪の悪者として聖典に残されたってわけだね」
「彼って・・・男だったんですか」
「君も名前くらいは聞いたことあるんじゃないかな。地球ではなかなか有名人になったからねえ、『サタン』は」
「サタン・・・!」
「憑りついて3つ契約したら魂を奪うとかいろいろ言われてるけど僕が知るサタンは心優しい真面目な悪魔だったよ」
「その、悪魔サタンはどうなったんですか?」
「うーん、少なくともユウが生まれる前には亡くなってるけど直接的に魔天戦争に関わってるわけじゃないよ」
スウはまたも遠まわしな言い方をするがネネもスウの性格や癖を分かってきている。今度こそごまかされたりはしなかった。
「じゃあ・・・間接的には関わっているんですね?」
「どうだろう、それは取り方次第かな。僕はサタンが地球で人間と深く関わったからって天魔戦争が起きたとは思わない。ただサタンみたいな異種族となんとか関わろうとした『悪魔』も居たってことじゃない?」
「・・・悪魔には親も、子もいるんですよね?」
「そうだよ。ボウフラみたいに湧いて出てくるわけじゃあないよ、さすがに」
「じゃあ当然天使にも子供は居ますよね?」
「そうだね」
「異種族と関わろうとした常識外の悪魔は存在した。そして地球になんらかの形で干渉した悪魔天使は聖典に記された、なら天使と悪魔は・・・」
「天使と悪魔は?」
「スウさん、金星って知ってますか?」
「・・・っまた突然だね」
スウが一瞬動揺したのをネネは見逃さなかった。
「地球では明けの明星って言われています。そして明けの明星は聖典でとある悪魔のお話と関わっています」
「君は勘のいい子だねえ」
「神に反逆した悪魔、堕天使・・・ルシファーは実在した悪魔ですね?」
スウはゆっくりと首をネネのほうに向けて頷いた。
「実在した悪魔『ルシファー』はユウ君のお祖父さんじゃないんですか?」




