第41話 麒麟と吸血鬼
天界軍の軍勢はもう間近に迫ってきている。スウが50人ほど引き受けてくれたが150人は残っているわけなのでこちらも処理しなければならない。
「恐らくマリカが来た時に書簡を出したってのはリュウだな」
「あー、地球にユウくんがぁっていう」
「それだ。最初は魔界軍の内部分裂でも狙ったのかもな。あの時点で日本にいたのは天使2人と俺だけだろ」
「マコはそもそもユウくん狙いだったしねえ」
「書簡のことは分かったけどもう限界みたいよ」
すぐに天使に囲まれる。ここからさらに進むにはまた誰かが戦闘するしかないだろう。
「じゃ、今度はあたしが」
ハルカは一番近くにいた天使1人に強烈な蹴りを食らわせる。吹き飛んだ天使は岸壁に叩きつけられると一撃で絶命する。
「・・・分かった。後で合流しよう」
天界軍は魔界軍3位のハルカには先ほどより多くの天使を残すだろう。体が頑丈で桁違いの負力、パワーを持つ吸血鬼を相手にするならここは逃げ切るチャンスである。
「リュウ、100人を残してここは私が引率しましょう」
軍の中から一人、今度は女性が出てくる。聖力を解放すると頭部には金色に輝く角を携えている。
「麒麟・・・ね」
ハルカも存在こそ知ってはいたが麒麟がどんな能力を使ってくるのかは皆目検討もつかない。
ハルカは翼を一度はためかせると負力を全開放する。桁違いの負力波はまさに強風のように発生しユウは気圧される。
「ハルカさん、後で必ず・・・」
「大丈夫。また後でね」
「いくぞ!」
ハルカを残しユウ達は本拠地に向けて飛び去る。
「私はエミと言う。種族は麒麟」
「私はハルカ。吸血鬼」
戦場にて似つかわしくない挨拶をかわす二人。ハルカはどこか違和感を覚える。
まるで考えている事が読めない。
「正直に言おう。私は戦う気などないのだ」
「!?!?!?」
その場にいた天使全員、そしてハルカまで面食らってしまう。
「そして私は悪魔が好きなのだ!」
配下の天使はざわつきハルカは頭を抱える。
「分かったわ・・・話を聞かせて」
「実は今200歳になろうとしているのだが100年ほど前に戦争の余波を受けて死にかけていてな。当時は子供だった私を気まぐれにも助けた悪魔がいた・・・その人にもう一度会いたくて天界軍に入ったんだ!」
「理由それでいいのね・・・」
「魔界の悪魔は男女比で女性の方が多いだろう?多分女性だと思うのだがまだ会えていないのだ・・・だからなるべく戦いたくはない」
「まあその悪魔が誰かわかんないけど・・・今この場があんた一人の意思で収まるとも思えない。どうする?」
「それは承知している。そもそも悪魔に助けられたからと言って戦争になっているのは悪魔にも責任があるからな。そこでこうしよう」
エミは演説を始める。
「私は助けられた一件以来強い者が好きだ。ハルカ、この場は戦わないと私はともかく皆の衆が収まらない。まず100人はいるこの軍を倒してそこから決めさせてもらおう。天界軍を恐れさせた吸血鬼がこんなところで死ぬのならそれまでだろう?」
「なるほどね・・・あんた面白いわ」
「その後無事全員を倒したら改めて私と熱くやりあおうではないか!等価交換だ!天界軍の情報半分やるから魔界軍の情報半分くれ!吸血鬼を相手にするんだ、これくらいのハンデはいただこうじゃないか」
「・・・別に構わないわ」
風変りな天使を相手にハルカも手傷を負いに来たわけではないので提案に乗る。
「皆の衆!彼女を知らぬ者などいないであろうが忠告はしておく!この吸血鬼はスライムいじめてはしゃぐチンピラ悪魔とはレベルが違う。油断しないように」
「じゃあ、いかせてもらうわ!」




