第40話 気まぐれ
「ふう・・・流石に50人はキツイね」
幻覚魔術と洗脳魔術を使用し50人の天使を撃退したスウはほとんどの負力を使い、自身も傷を負いへたれこんでいた。
「・・・一つ聞きたい」
ベルはまさかスウが配下全員を撃退できるとは思っていなかったので少々焦る。だが自分は聖力が残っているので落ち着きを取り戻す。
「どうしてそこまでしてあの人間に肩入れする?私の知っているお前は気まぐれでものぐさだ。日本とやらでずいぶん変わってしまったようだな」
「そんなことないさ」
スウは満身創痍だが余裕な様子で答える。
「今も昔も何も変わってないよ?ここにいる理由は僕の気まぐれさ!」
そう答えると同時に最後の負力で突っ込む。
ベルは焦って後ろに飛びずさる。
「じゃあお前はその気まぐれで死ぬんだよ!!」
転移魔術でスウの後ろを取ったベルは聖力剣を振り下ろす。
「遅い」
スウは首を真後ろにすると後ろに向かって爪を突き立てる。
「かはっ・・・」
スウは聖力剣で背中を大きく切りつけられる。だがスウの爪はベルの腹を貫通させた。
「知ってるかい?・・・刃物は『切る』より『刺す』ほうが殺傷力高いんだよ」
「く・・・」
「戦闘経験の差だね・・・僕が多様魔術を使うエルフ相手に魔術で勝負するわけないだろう・・・」
「て・・・めえ・・・だから最初から負力全開で・・・」
「君に洗脳魔術を解くほどの能力は・・・ない・・・かといって洗脳魔術を上書きするほどの洗脳魔術はできない・・・一般天使じゃなくて全員エルフだったら僕は負けてた」
スウはついに膝を付く。
「知略軍で天の血を引くユウなら他の方法だったかも知れないし幻覚魔術使いのサキュバスは死んだ。僕にできることはこんなもんだよ。君にできるのもここまでだ」
「お前は絶対殺す!天界軍がお前の始末はきっちりするだろう!首洗って待ってな・・・」
「最後の言葉がそんなもんか。僕は自軍にそこまでしないけどね・・・」
ゆっくりと立ち上がるとスウはベルの首を刎ねる。
「・・・」
首を刎ねた後スウは負力が切れ、人間の姿に戻るとその場に倒れこんだ。
「自軍のためにそこまでしない・・・か。まさか僕が一人の人間の為にここまでするとはね」
「やっぱり僕は『気まぐれ』だ」




