第39話 散れ
魔界に転移した悪魔ペンションメンバーはユウを筆頭に空を飛行する。
「ここが、魔界・・・」
地球人であるネネだがユウ達が地球で活動できるようにネネもまた月で支障なく生きることが出来ている。あるとすればほんのわずかだが体が軽く感じる。空を飛行しているからではなく気圧そのもの、重力が地球よりかからないのかもしれない。
「このままじゃあいたちごっこだろうねえ。分かれるしかないんじゃない?」
「散って天使どもをやるって事か・・・」
スウの提案にユウもこの作戦しかないだろう、と考えた。
「ちっ!」
飛翔魔術に秀でる天使はあっという間に悪魔の連兵を追い越し行く手を阻んだ。
「ユウ、ここは散るしかないだろう。マコは天使相手におおっぴらにやれないだろうしネネを連れて魔界城に戻るんだ。そこならサナもいるし魔界軍の兵もいるだろう」
「・・・そうだな」
「だからここはまず僕が引き受けようか」
「お前・・・!」
普段やる気のないスウは珍しく先陣を切る。
「あいつはサイレントキラーのスウだ、油断するな。向こうが散るならこっちも散るしかないだろう。1軍はスウの相手に回れ」
リュウの司令で50人ほどの天界兵がスウに立ちふさがる。
「我が名はベル!スウよ、相手してやろう。貴様には遺恨もあることだ」
天界軍1軍の司令官らしき男性はぬっと前に出てくる。
「さあ、僕にはまったく覚えがないけど君はエルフか・・・そういえばエルフの兵を殺したこともあったかもしれないね。どうでもいいことは忘れちゃうから覚えてないけど」
「貴様・・・」
「ふっ・・・」
スウは静かに笑うと容赦なく身近にいた兵の首を落とす。
「!!」
ネネは初めて見る。殺しの瞬間を。人間ではないとはいえ限りなく人間に近い月の住民が殺される様を。
「スウ・・・頼んだぞ!」
ユウ達はその場にスウを残し猛スピードでその場を離れる。
「この場は一軍に任せて追え!」
リュウの号令で残り150の兵もその場から飛翔する。
「さて、やるか」
スウは殺気を出し久しぶりの天界軍へと挑む。
ストラスであるスウは飛翔スピードが天使を上回るため背後をついて10人の天使の首を落とす。フクロウのような爪は大変鋭利で触れただけで体を切りつける。
「やっぱり幻覚魔術か・・・」
スウは20人切りつけたつもりだったが実際はその半分・・・一人一人が幻覚魔術で数をごまかしていたようだ。
「我が軍は多様の魔術を使う。貴様にこれは破れるかな?」
「何も多く魔術が使えるから勝てるって事にはならないさ・・・」
スウの目が光る。5人の天使が同じ天界軍の兵を聖力由来の剣で切りつける。
「ちっ・・・洗脳魔術か」
「こればっかりは戦闘経験の差だね」
「ふん、戯言を」
そう言うとベルは躊躇いもなく洗脳された兵をエネルギー弾で打ちぬいた。
「ふうん、どっちが悪魔なんだか」
「この程度の兵ならば不要」
「恐怖政治じゃあ統率は取れないもんだよ」
スウはバカにしたように返すが頭では別の事を考えていた。
多様な魔術を使うベルだが洗脳魔術を上書きしたり解除したりせず兵を切り捨てた。
この事から戦法として洗脳魔術を使用するのが鍵となるかもしれない。
「貴様とて1人でこれだけの数を相手にするのは初めてだろう。見守ってやるとしよう」
「まるで悪役だね。うちの第2位様のほうが筋を通しているよ?」
スウ対天界軍1軍の戦いが始る。




