第34話 新たなる悪魔
「もう一人、今もきっと見てんじゃねえか?あいつの動きまでは読めないが」
「誰だか知りませんがその一人が私の軍を全滅させるなどありえないことです」
マコはなんのこともないように言う。
「元々私の配下は私が死んで初めて50隊の軍隊と成るからです」
「はぁ!?」
「あんたが死んでから50きても遅いじゃない!」
「根本が違います。よくある戦の隊は兵が戦闘を切り開いていくでしょう。しかし私はそんな無粋な真似はしません。大天使で司令本人の私が行きます。仮に死んだとしても残した仲間がきっと何とかしてくれるでしょう」
真剣な顔でそう答える。
「なるほどな、部下がきっちり着いてくるわけだ。一本筋の通った戦士だな、お前は」
「有能な上司がいる部隊こそこちらの脅威ね・・・あたしもあんたも今手元には配下なし」
「マコ、おまえは1対2でいいのかよ?」
「構いません。あなたとは良くて一騎打ち、そして吸血鬼のあなたまで一緒にいる。死も覚悟のつもりです」
その瞳に嘘はないように思えた。
「なんでだよ・・・なんでここで戦う必要があるんだよ!ここは日本なんだぞ?俺らが来た世界と違う!」
「じゃあ過去の遺恨を全て流せと!?」
「過去は過去だ。それが動機になるやつもいるが俺はならん」
「あなたはそうやっていつも昔のことをどうでもよくしてしまうのですね」
「・・・何のことだ」
「やはりあなたは私が殺します!」
空中に大掛かりな魔法陣が出現する。
「くっ」
消費エネルギーがかなり大きいらしく、マコの聖力は急激に減少していく。
「こんな膨大な聖力を・・・!」
「でもうまく攻撃を流しちゃえばチャンスじゃない?聖力が切れれば飛行魔術の制度も悪くなる」
「まずやつの聖力量がどの程度あるか分からんしどんな攻撃が来るかわからない限り対策の立てようがねえぞ・・・」
「さようなら、ユウさん」
マコはユウに手を向ける。
「ハルカ!狙いは俺だ!どこでもいいから転移しろ!」
ユウは瞬時にマコの作戦を見抜き空中を縦横無尽と飛行する。先ほどの魔法陣からは聖力でできた無数のナイフが発射される。ユウはそれを必死に避けていく。
「聖力由来だから俺でも多少見切れるが天使としての差がありすぎる・・・このまま長引けば完全に負けるな」
聖力エネルギーが枯渇したとしても負力で補えばいいのだが、聖力の攻撃にある程度対抗できるのもまた聖力なため、ユウは場を見極めていた。
「!!」
すると空を舞う無数の聖力ナイフはエネルギーを失い、どこかに消滅してしまった。
「ハルカ!助かったぞ!」
「ばかな!?この術をどうやって解除したんですか!?」
「あんたあまり格上の悪魔と戦ったことがなさそうね。吸血鬼の一族は聖力を負力に変換できるのよ?」
「それは知っています!でも私はあなたに指一本触れられていないはずです!」
「まあね、ただ吸血するだけが戦法じゃないわよ?あんたがでかでかと空に描いた魔法陣、聖力だだ漏れだったからね。そのエネルギー元さえ吸い取ってしまえばこんな魔術すぐに崩壊する。あんたのミスは優先順位をユウにしたことと逃げ場を用意しなかった・・・ってことかしらね」
「・・・別にまだ負けてはいない!」
「いいや、そなたの負けだ。大天使マコ」
全員が驚いて振り返る。2人の女性が現れ一人はなんとネネだった。もう一人は赤色をメインとした和服を着こなし、女性にしてはかなり背が高い人物がいた。左右に2枚、計4枚蝶のような翼があり、その翼は真っ黒だった。
その女性悪魔は履いている下駄をコツコツと氷の地面にぶつけてゆっくりと歩いてくる。
「我はたまに魔界から見ておったが元気そうでなによりじゃな。それは一行に構わんのだがまさか天界からも来ていると思わなんだ。おまえらホントに性根腐っとるのう。生徒会長などと小細工せんとさっさと戦い始めれば勝機もあったのではないか?」
声としてはかなり可愛い声をしているのだが言動がどうも古臭い。
「あとユウ、ハルカ。安心せい。こやつの兵隊はハッタリじゃ」
「ぐふぅ!!」
天狗は軽く右腕を振り当てただけでマコを叩きのめしてしまった。
そして天狗の目が光る。
「そもそもこやつの目的はユウを殺すことであって大規模戦争ではない。どうも約80年くらい前に」
「もういい!!!!後は・・・後は自分でちゃんとする。こんなの出てきたら勝ち目・・・ない」
「さよか。納得いくまで語り合ったらよい。そのうえで殺すか殺さないか決めればよいと思う。少なくとも我が見てきた奴らの中には殺した後後悔してた者もいたし意思のすれ違いだったこともあったかのう」
そういうと天狗はマコに近づき、自分の体でユウたちからマコが見えないようにカバーする。
「お前、これの事ずいぶん気にしてたじゃろ?」
「ちょっと!」
それはユウが射的で取ったぬいぐるみだった。
「別に言いふらしたりはせぬ。だがこの戦闘が本当にお前のしたいことなのか、仮に勝ってお前は満足なのかをもう一度よく考えることだな」
「このままじゃ・・・このままじゃ終わらない」
「お前の答えがそれなら構わないが・・・そこまで思いつめたことなんだろう?きっちりと筋通せ。さあ、我は戦闘をしに来たわけではないのでな。と言っても君もそうだろう?」
そういうとユウ達に一瞥もせずどこかに転移した。
マコはしばらく思いつめたような目をし、再度立ち上がる。




