第28話 黄昏
合宿はゲームや海水浴、スイカ割りにバーベキューなど夏定番の行事を進めついに6日目となった。
翌日の最終日はお昼に帰るため少し名残惜しくなっている。
最終日前日の今日は夏休みの課題を進めて既に日没を迎えてしまった。
ユウはマコの課題を透視魔術で覗くことでなんとか終わらせ、今は合宿所の屋根で月を見ている。
「なに黄昏れてんのよ」
「お前はなんでいつも急に現れるんだ」
屋根でお月見をしていたユウの背後にハルカは現れる。
「もうすぐ花火大会が始まるから探しにきてあげたんじゃない。あと一時間後よ?」
「もうそんな時間だったか」
ユウは振り返るとハルカは浴衣を来ていた。正直に似合っている・・・とユウは思ってしまったのでまた月に視線を戻す。
「で、こんなところで何してんの?」
「ああ、今頃魔界はどうなってるかってな。俺らが日本で悠々自適に過ごしている中きっと今も戦争してるんだろ」
「それはそうだけど」
「別に未練はないが初めて魔界軍に入った日の前日のことを思い出してた」
「あたしよりあんたの方が先に魔界軍にいたからその話は気になるわね」
「別になんでもないことだよ、ただ俺は平穏に暮らしたかっただけだし戦っていけばいつか落ち着くと信じてただけだ」
「正義感溢れてるじゃない」
「本当にそう思うか?」
ユウは月から目線を外しハルカを見る。
「魔界が平和になるってことは天界が負けるってことだ。天使の犠牲の上に平和になるってことだろ?」
「魔界軍の頃のあんたからは想像できない言葉ね」
「俺だって驚いてる。日本に来てからそう思ったよ、一部戦争している国こそあれど海外旅行して海外の映画を見て海外発祥の飯を食う・・・大半の国は他国と共存できてるだろ?」
「それはまあ、そうだけど」
「月じゃ考えられないことだった。魔界と天界は相容れないし戦争だって動物を駆除してるくらいの気持ちで殺しあってただろ?こっちに来て俺初めて分かったことがあるんだけどさ」
「なぁに?」
「『人を殺す』ってことはすげえ怖い事なんだ。それに大切な人を失うことはすごい悲しい。これはまあ魔界軍でも思ってたことだけどさ。相手を殺すことに恐怖を抱いたことはなかった」
「っまあ・・それはそうね」
「今自信もって殺せるって言えるか?」
「・・・・」
「それに魔界が負けたら戦争起因で大勢の犠牲が出るだろ。もし明日にも負けたら?吸血鬼にとっては死活問題じゃないのか?」
「あの・・・」
「!!」
屋根下から聞こえてきたネネの声に二人は驚く。
「二人ともいないから探しに来てて・・・それですみません、お話少し聞いちゃったんですけど・・・」
ユウとハルカは仕方なく地上へ下りる。
「悪いな、探させちゃって」
「いえ・・・それより吸血鬼について教えてください」
「なんでそうなるのよ・・・」
「もうハルカさんも私にとって大切な友達なんです!」
ネネははっきりと言う。ハルカも『人を殺す恐怖』を心の中では自覚していた。人間の友達が出来てそれが殺されてしまったとしたら・・・きっと自分が屠ってきた天使にだって大切な者はいただろうから。
「吸血鬼が危ないって・・・どういう事なんですか」
「・・・吸血鬼は自分の負力エネルギーを天使の聖力エネルギーで補給している。これが全てよ」
「つまり天使が勝ったなら聖力を得られなくなる・・・?」
「そういうことね。天界に勝つ必要はある、けど天使を全滅させてはいけない」
つまり吸血鬼はエネルギー問題に直面していた。
「吸血鬼は天使相手には戦闘としての相性がいいが逆にそれが弱点だ。俺らも魔法こそ使うが根本的なところは人間と変わらないからエネルギーが無くなれば死ぬ。魔界軍は劣勢になってるからその影響で吸血鬼の数が減ってきてるんだよ」
「じゃあハルカさんも・・・」
「あたしはこの堕天使が生きてる限りはなんとか生きてられるわ」
「人の事飯みてえに言いやがって」
「でも、日本にいるなら食事を取れば生きていけるんですよね!?」
「そうかもね。ただ負力は使えなくなる」
ハルカが生きていけると知ったネネは一安心した。
「もし魔界軍が負けたらハルカは吸血鬼として最後の個体になるかもな」
「どうせ日本で生きていくなら関係のないことだわ」
そういうがハルカの表情は暗い。
「湿っぽい話して悪かったな。ネネ浴衣にあってるじゃねえか」
「そ・・・そう?よかった」
少し顔を赤らめる。
「ってあたしも褒めなさいよ!」
そうして一行は花火大会へと向かった。




