第14話 不良債権
部活設立が決まり早速申請書を書くべくユウ宅のリビングに悪魔3人人間1人が集結した。
「人間研究部・・・」
「悪魔のあたし達にはおあつらえむきじゃない。けどね!会長まで部に引き込むなんてどういうつもり!?」
「それには考えがあったんだって!!あいつ生徒会があって忙しいだろ?幽霊部員とまではいかなくてもそんなに来ないと思ったんだよ」
「もし見られたら停学ね、あたし達三人とも」
「私もですか!?」
勝手に数に入れられてるネネにはたまった話ではない。
「別に昼休みに部室に入っちゃいけないなんて規則はねえんだ、それでいいじゃねえか」
「どうなっても知らないわよあたし」
「お前の問題じゃねえか!」
「出会って二日かそこらのよく知らない、ましてや同じ学年でもない人間を部長にするなんてほんとにこいつ知略軍!?」
「よく知らない・・・か。それ以外にも妙なんだよなあ」
「何が!」
「まず入部する意味が分からねえ。俺が誘っといてあれだが断られること間違いないと思ってたからな。それに俺を監視するって言ってたがそんなことわざわざ入部してまでやる理由はなんだ・・・?」
「確かにちょっと厳しすぎるよね・・・前年度の生徒会長はどっちかっていうと自由な校風をモットーにって感じだったよ?」
一年の頃は他人にまるで興味を見せなかったユウはネネから学校情報を補填する。
「もう一つ、なんで催眠魔術が効かなかったのかだな」
「あたしが昼休みに吸血したからとか?」
「催眠魔術のときは負力を使った。あんまり解放すると肉体変化が起こるから量を絞ったってのはあるけどな」
「!!!」
すると突然ペンションのガラスが耳障りな音を立てて割れ、中に何者かが飛び込んできた。
「お、お前・・・」
「あ・・・!スウさん・・・?」
ネネはあの夜のことを一気に思い出した。
「あれ・・・なんで忘れてたんだろう」
「ネネ!あなたスウと会ったことあるの!?」
「ど、どこでだ!?何されたんだ!」
「実は私マリカさんの魔導書を発動させちゃったんです・・・その時にマリカさんの部屋で・・・ただその時の記憶がきれいになくて」
「なんで魔界軍のやつらは不法侵入するんだよ!」
ユウはセキュリティが意味を成さないことに落ち込む。
「あの時僕は君に洗脳魔法をかけたんだよ。『次に僕の姿を見るか魔導書を使った時まで記憶が戻らない』って条件で」
だから記憶がなかったのか。
「あの日のことがすぐに魔界関係者にばれるとめんどくさい。でも思い出せずに魔導書を使われるのもめんどくさい。だからだ」
スウはあの日の真意を話す。
「まさかこんな形で襲撃されるとは予想してなかったわぁ」
さすがのマリカも緊張気味で戦闘態勢に入る。
ユウは負力を解放し翼をはためかせる。
「ちょっと待った。そういうことか。君たちは大きな誤解をしている」
「何をだ!」
「まず僕は襲撃に来たんじゃない」
「はぁ!?」
悪魔達は驚く。
「まず襲うなら寝てる時襲うに決まってるだろ」
さらりと怖いことを言うが当然寝込みを襲われるのは計算済みだった。
「どういうことだよ・・・日本丸ごとやる気か!?」
「何言ってるんだ。こんな天国みたいな国潰すわけないだろう」
「・・・・・」
みんなは呆然とする。
「魔界の悪魔三人が全員帰ってこないんだ。気になって僕も来てみたんだがいやあなんともいい世界じゃないか」
「は?」
「じゃあ、あんた魔界軍の差し金で動いてないってこと!?」
「うん、そうだよ。僕の個人的な興味で覗きに来る程度のつもりだったがこんないい所だと思わなくてねぇ。世界を飛び回ってたら一か月も過ぎてしまったよ」
いつ襲われるか心配してたのにスウはケラケラと笑う。単に世界旅行をしていただけだったというのか。
「ま、そんなわけでさ。悪魔三人が雁首そろえて帰らない理由は分かったことだし、すまあとふぉん?だっけ。なかなかいい暇つぶしになりそうでつい契約してしまったよ」
「こっちの気も知らねえでお前・・・」
「あ、でも魔界のことを知られるとマズイって言ってましたよね?」
ネネは魔界のことを知ろうとしたがためにスウの魔術をくらったのだ。
「そりゃあね。君に知られたら魔界からまたぞろ悪魔がくるだろう?戦うのは面倒じゃないか」
そんな理由で記憶を消されたのか。
「ガラスを割って入ったのはすまないね。玄関は鍵が閉まってたからさ」
「ふざけんなテメェ!こういう時の魔術だろ!!!」
「カタいこと言うなよ」
「お前なぁ・・・!弁償しやがれ」
「分かった分かった。そう怒るなって」
そういうとスウは負力を解放する。
茶色と白が入り混じった翼が出現し、割れた窓にかざした手からは鋭利な爪が伸びている。
「そーれ」
気の抜けた掛け声と共にゆっくりと窓が元通りになっていく。
「なんか魔術って便利ですよね」
商売に使えそうな修復魔術を見てネネは魔術を習得したいとすら思ってしまった。
「お前がまるで戦いに来たわけじゃないのは分かった。けど要件はなんだ」
「そうそうユウ、君のこのペンションに僕を住まわせてよ」
またとんでもないことを言い出したスウは空間から荷物を出限させた。
「藪から棒になんだお前は・・・てか住む気まんまんじゃねえか!」
「カタいこと言うなって。毎回ネカフェで寝泊りするのも面倒じゃないか」
「お前それでも悪魔か?」
「君こそほんとに堕天使?」
グウ音もでない。
「あーもう分かったよ!断ってお前に変な気でも起こされたらかなわんからな」
「ちょっと本気!?あたし達はともかくスウよ!?」
「それは理不尽だなあ。魔界軍の仲間だったじゃあないか」
「あなたその魔界軍をほったらかして出てきたんじゃないの!」
「僕はどの部屋を使っていいんだい?」
「話聞けよ!!!」
「ほんとお前のそういうとこ変わってねえなあ・・・でも久しぶりだな、スウ!」
「ああ、久しぶりだね。ほら握手」
「痛え!爪が痛い負力抑えろ!」
ネネの不安はドタバタコメディのような光景で完全に杞憂に終わった。
「ところで5月ってのはもう暑いものだね。お風呂はどこだい?」
「お前ほんと自由だな!」
「えーダメよぉ、マリカが入ろうと思ってたのにぃ」
「お前も自由だな・・・」
「カタいこと言うなって。僕は今入りたいんだ。ここは元ペンションなんだろう?待てないなら一緒に入ろうか。浴室だって広いんだろう」
「ちょっと!!!ななな何を急に言い出すんですか!!!いくら自由で自己中でデリカシーがないうえに男女でお風呂だなんて変態なんですか!?」
ネネはたまらず声をあげる。
「それは僕でもさすがに傷つくよ・・・あと君は勘違いしている」
「僕は女の子だよ?」




