第10話 入学
今日からこのクラスに新入生が来ますよー」
結局魔界のストラス族であるスウは現れず、吸血鬼ハルカは入学手続きをし、今日入学することとなった。
三年間クラスメイトが変わらないこの昴高校では新入生の話題で持ちきりとなり、早くもざわついていた。
「なー-ユウ?新入生女の子らしいぜ」
「それがどうしたんだよ・・・リュウ」
ユウから見て前の席である男子生徒の友人、リュウが話しかけてくる。
「男子は期待に満ちてんのにお前はクール気取ってんじゃねーよ!」
豪快に笑いながら新入生を待つリュウ。
「(新入生のこと知ってるから期待もクソもねえけどな・・・)」
ユウは学校でどのようにハルカと関わるか考えていた。
「すげえきれいじゃねえか!!」
ハルカのお披露目が終わり、一限目が始まる前の休み時間はいつもより賑わっていた。
リュウだけでなくほかの生徒からも注目を浴びており、基本知らない他人と話すのが得意でないハルカは面食らいながら対応していた。
「ハルカちゃんはどこから来たの!?」
「そ・・・そうね父の仕事の都合で各地を転々と・・・」
「生まれは外国なのー?」
「生まれは・・・日本」
そうやらウソをつくのは得意らしい。
「で、ユウ!昨日新入生が気になって課題進められてねえから見せてくれ!!」
「お前絶対ウソだろそれ・・・」
頼み込んでくるリュウに仕方なく課題を見せてやる。
ハルカは女子だしネネに任せておけばいいか。始業のチャイムが鳴った。
「あー-ねみぃ」
結局休み時間はハルカに話しかけることもなく、昼食はネネがハルカを誘ってあげたことで問題なく女子の仲間入りが果たせたようだ。思ったより心配はないのかもしれない。
ユウは歯磨きを終え、10分ほど昼寝でもしようか。そんなことを考えながら廊下を歩いていた。
「!!」
すると突然腕を強い力で引かれ、階段の踊り場に引き込まれた。
まさかスウの襲撃か!?学校内で襲われることは想定外だしこの場でエネルギーを放出するのはまずい。
「お前・・・!ハルカじゃねえか脅かすなよ・・・」
奇襲の主はなぜかモジモジしたハルカだった。
「うっさい」
「何の用だよ。ガールズトークに混ざって来いよ」
「それはもう十分した!」
「・・・なんか他のやつには言えないことか?」
「その、お腹が・・・」
「あ?あー。別に変なことじゃねえだろ」
「はぁ?」
「吸血鬼だってトイレくらい行ぐへぇ!!」
顎に右ストレートが炸裂し星が散る。
「バカなのこのエロ堕天使!」
「なんなんだよ・・・」
「お腹すいたのよ・・・!」
「飯ならさっきネネと食ってたじゃねえか。160年も生きるとボケてくんのかべぶっ」
今度はビンタが来た。
「血を吸わせろって言ってんの!」
「お前人間の食事じゃ負力回復しなかったのか・・・?」
「身体的な空腹感はない・・・けど負力は回復してない。魔界に居た頃は頻繁に吸血できてたから・・・」
「だからなんだよ」
「地球に来て吸血してない期間がそれなりにあったからなんか落ち着かないのよ・・・」
「つまり欲求不満てことぐはぁっ!」
みぞおちに強かなアッパーをくらいさすがに跪く。
「バカなの!?死ぬの!?」
顔を真っ赤にして激怒しているハルカを見てさすがにこれ以上怒らせると学校ごと消し飛びそうなので
「お前初日でいきなり男の首筋に噛みついてんの見られたら学校生活が地獄になるぞ!」
「分かってるわよ!だから人が来なそうなところ連れてってよ!あたしここ初めて来るんだから!」
「どっかに転移でもするか?」
「それも考えたけど帰ってくるときにこの学校のどこに転移すんのよ。人前に転移しちゃったらそれこそまずいでしょうが!」
「だよなあ・・・理科準備室とか空いてんじゃねえかな」
「今日のところはそこで済ませましょう」
「なんでお前がしかたなく、みたいな雰囲気になってんだよ」
二人でこっそり理科準備室に入る。
幸いにも理科の担当教師はいなかったので薬品庫に忍び込み、ユウは聖力を解放し白い翼の天使に変わる。
ハルカも犬歯が伸び、蝙蝠の翼に蝙蝠のタトゥーが手に現れる。
刺青はどうも負力由来で出現するらしい。
「この光景見られたら洒落にならねえな」
ハルカは腕をユウの肩に回しそっと首筋を噛む。
「(魔界軍にいたころもちょくちょく吸血させてたが噛みつかれても痛みが全然ないんだよなあ・・・代わりになんかボーっとするけど)」
麻酔効果のある魔術なのだろうか。
「んっ・・・」
「(ってなんで吸血でエロい声だすんだよ!!!)」
ユウの心拍数が上がる。
「ちゅっ・・・ふう。ご馳走様」
「そうかよ・・・」
「でさーこの前マクドでー」
「!!」
人が近づいてくる!
「まずい、五限の移動教室か!」
「ちょっと!どうすんのよ!」
もう扉の近くまで来ている!入られれば薬品庫から逃げ出すのは不可能になる。
数秒だけでも時間が稼げれば・・・
「しかたねえ・・・」
ユウ白い翼をはためかせる。
「あれ、ドア開かなくねー?」
聖力由来の封印魔術でほんの一時ドアを封鎖するとユウたちは転移した。
「あれ、開いた」
「学校古いかんなー、建付けでも悪かったんだろ」
「あー危なかった」
扉を封印魔術で封鎖したユウはひとまず屋上に転移した。
「ここなら基本鍵が掛かってて生徒は立ち入りできねえからな・・・」
「じゃあ最初からここに転移すればよかったじゃない。屋上への階段は誰も来ないわけだし」
「・・・・・」
「知略の第7軍が聞いて呆れるわね」
「うるせえよ・・・」
「でもどうすんのよ。さっき生徒が来たなら五限始まってるんじゃないの?」
「あー・・・そうだな。よし」
「サボっちまうか!」
「!」
ユウの屈託のない笑顔に赤面してしまうハルカだが
「・・・そんな学校生活も楽しそう」
こうしてハルカは初めての学校生活を迎えた。
「ぐわああああああああ死ぬ!悪かった!!!」
ペンションに帰宅するとハルカに致死量ギリギリまでユウは吸血されていた。
「もっと他に良い言い訳がなかったのかしらぁ?戦略の駄天使!」
「ぐああああ死ぬって!」
「ネネちゃんあの二人なんかあったのぉ?」
「ユウくんが五限不在の言い訳に『ハルカさんが腹痛を起こして保健室に連れて行った』って」
前途多難な学校生活になりそうである。




