プロローグ
俺は生まれて初めて人に恋をした。
叶わない恋だと自分でも思う。
俺は人間ではないのだから。
「おはようネネ!」
同じクラスの女子がネネと呼ばれる女子に声をかけているのをユウという男子生徒はぼんやりと眺めていた。
高校2年の4月。クラス替が基本的にないこの静岡県昴学園では1年時とメンバーが変わらないため、当然友人から好きな人まで3年間を共に過ごせる。
ネネと呼ばれたショートカットの似合う美少女は笑顔で友人に挨拶を返している。ユウはこのネネに叶わない恋をしていた。
理由は単純だったと思う。入学してから誰とも関わろうとしなかったユウ。3連のリングピアスを左耳につけ男にしてはやや長めの髪。いわゆるチャラそうなユウに毎日よく話しかけてくれ、そのおかげかユウは1年でクラスに溶け込むことになり学園生活を楽しんでいたからだ。
「おいユウ、まーた女子の観察かー?」
一人の男子生徒がユウに声をかけた。
「別に観察なんかしてねーよ!ちょっとこう、ぼーっとしてただけで」
ユウは慌てて返事する。
「あれか、ネネちゃんか。隣の席だしかわいいもんな」
「そんなんじゃねーよ、ほら授業始まるぞ」
ユウは適当にあしらうとさっさと一限目の準備を始める。
「おはようユウくん!」
隣の自分の席についたネネはユウに声をかけた。
「おう、おはよう」
「あのね、その、今日一緒に帰らない?」
「えっ」
思いもよらないネネの言葉にユウは思わずたじろぐ。
「あっ、忙しかったらいいんだけど」
「いや、俺は大丈夫だけど」
「ここ最近ね、誰かにつけられてるというか、見張られている気がして・・・」
それは俺のことかもしれない、と思ったユウだが
「それはちょっと怖いな、いいぜ!一緒に帰るか。送るよ」
ネネからの提案で下校デートができるユウは当然この誘いに乗った。
「ありがとう!」
まさかこの後にユウの高校生活を大きく狂わせることになるとは誰も思っていなかった。