第1話
いつも通り俺たちパーティーはダンジョンの探索兼魔獣狩りを終え帰路に着いた。今日も素晴らしい経験をした。バカでかい狼に威嚇されたり、真っ赤な目をした猿に追いかけられたり、落とし穴に落ちそうになったり。最高の気分だ。もう今日で踏ん切りが着いた。俺は言うぞ? あの言葉を!
いつも通り、パーティーメンバーが談笑をしている中を割り込んで俺は口を開いた。
「今日でこのパーティーを抜けさせてくれないか?」
俺の言葉を聞いてパーティーメンバー俺を覗き4人、いや、3人と1匹が目を丸くする。あ、1匹は首傾げてるわ。
「はぁ!? 何言ってんだよカイト!! 俺たちここまで共に戦ってきた仲間だろ!! 今更なんで、、、!」
「そうよ! それとも何か私たちに不満でもあったの!?」
俺の言葉にいち早く反応したのは、その凄まじい存在感で敵の注目を一身に受け、後衛に傷1つ付けさせない人呼んで『神の咆哮』重騎士のトール、続いて反応したのは膨大な魔力量と他の追随を許さぬ知識量を持つ『魔女』シフルだ。
あ、ちなみに俺はタダのカイトです。
「正直、このパーティーのメンバーには感謝してもしきれないほどだ。俺の事を落ちこぼれの荷物持ちの頃から、偏見を持たずに接してくれた。ほんとに嬉しかった。」
だが、俺はこのパーティーにはもういれない。仕方がないんだ。これは誰が悪い訳でもない。この世界が悪いんだ。
「ならなんでよっ!」
「ふざけてんじゃねぇぞ!」
勿論、シフルとトールは反発する。そうだ。自分でも言っていることが反感を買うことは分かっている。でも、もうダメなんだ。
「まぁ落ち着け、トール、シフル。・・・カイト、お前の気持ちは分かった。正直、お前が弟子を取り出した時点である程度は察していた。そうだろ? 2人とも。だが、訳を話して貰えなければ俺たちは到底納得出来ない。どうか話してくれないか? お前のバフやデバフがなければ俺たちはここまでの活躍は出来ていない。」
「わふっ!」
このパーティーのリーダー、全てのステータスが常人とは比較にならないオールラウンダーの魔剣士、あとイケメン、人呼んで『最優の剣士』アレクが俺を非難するシフルとトールを宥める。
ちなみにわふわふ言っていいるのは、毛玉のようなもふもふワンチャンのわたあめだ。アレクの相棒なのだが、かなり強い。何者なのかは全く分からないらしい。
そう、アレクの言う通り俺はこのパーティーのいわゆる後方支援担当であった。これは
俺がこのパーティーを抜ける理由か、、、
そんなのひとつしかないだろう??
「魔物怖い!魔人怖い!死にたくない! もう弟子のシャルも実践に出せるレベルだ! 俺は引退する!!」
俺がパーティーの脱退を告げた時よりも更に目を丸くして驚くメンバー達。やはりわたあめは最初と変わらず首を傾げている。
そりゃ怖いだろ!あんなでっかい魔獣を相手取って日々過ごしてるんだぞ!俺なんかパーティーから数10メートル離れようもんなら食い殺されるような弱さだ。
「い、いやいやいや、、、それは無いだろう? そもそもお前のおかげで魔物が魔物じゃないというか、、、」
トールが呆れながら口を出してくる。それに他のメンバーもウンウンと首を縦に振っている。
お前らが無神経すぎんだよ!命を投げ打っているような仕事だぞ、冒険者なんて! なんで怖くねぇんだよ!
って言いたかったけどその言葉は飲み込んだ。多分言っても笑われるだけだ。シフルには多分無神経って言葉のせいでボコボコにされる。魔女って呼ばれてるくせに力は俺より強い。
「そ、そうか、、、 だけど俺達にはお前が必要なんだ。何とかお前の弟子がうちのパーティーに定着できるようになるまでは、このパーティーに居てくれないか? 流石に弟子のシャルが有能とは言えどお前と同じような働きができるとは思えない。どうだろうか?」
確かにそれはそうだ。弟子とアレク達はあったことはあれど、俺抜きで魔物の討伐に出向いたことは無い。ある程度の期間は付き添う方がいいだろう。
「分かった。それで期間は?」
アレクがニヤリと笑う。
「ふっ、やはり君は優しいな。ならシャルがもうひとり立ちできると言ったら君は晴れてこのパーティーを卒業できるというのはどうだろうか? 悪くない定義だろう?」
ふーむ、なるほど。それは俺にとって都合がいい。何せ弟子のシャルはアレク達の前では俺に従順なフリをしているが、俺の事を滅茶苦茶嫌ってる。多分直ぐに魔物と戦う日々から抜け出せるだろう!
「あぁ、いいぞ! それなら全然大丈夫だ!」
「そうか、約束は約束だぞ。もう、契約は取り消せない。な、わたあめ?」
「わふ!」
「ふ、よし。てことで今日は解散だ! また明日、いつもの時間にいつもの場所で会おう!」
なんでアレクはこんなに自信満々なのだろう? それにみんななんか安心したような顔してるけど、、、
それだけが心残りだが、とりあえず脱退の目処もたったし、今日は家でシャルが待っているだろうから帰ることにするか。
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