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第9話 ややこしい恋模様

そう思っていると、私の肩に誰かの手を置かれ、右へと寄せられてしまった。


「ふ、ふ、ふ、ふ。なかなか面白いじゃないか。アビダフ。私はこの国の第一王子リックだ。今度は私を占ってもらおう」


先ほどまで笑っていたリック王子殿下は、私の占いを聞いて強引に割って入って来た。ライラとの未来を占って貰えなくなったのは少し残念だ。


「おお、王子さまでございますか。ご無礼がございましたら平にご容赦を」

「そうかしこまるな。さぁ私の恋愛を占ってもらおう。当然相思相愛だろうな」


それを聞いてジン様は苦笑いを浮かべた。


「リック。当然だろう。キミとライラは誰が見ても相思相愛だ。占ってもらうまでもない」

「まぁまぁそういうな」


リック王子殿下はジン様へと目配せをした。

ジン様だけに限らず誰しもリック王子殿下は婚約者であるライラとの恋愛を占うと思い込んでいるがそうじゃない。

王子殿下はジン様との恋愛を占ってもらうのだ。

いつものお調子者の彼とは違い、直立不動で胸を高鳴らせているようだった。

アビダフはリック王子殿下は下から上まで見上げ、額をジッとしばらく見つめる。


「おう、これは王子さまも先ほどのかたと同じような火山の情熱をお持ちだ!」

「そうだろう! で? どうなんだ」


「なにがでございましょう」

「相手の気持ちだよ。相思相愛か?」


「ん〜。王子さまの意中の方は王子さまのことはなんとも思っておりませぬ」

「は? はぁ?」


途端に、花壇の縁石に腰を下ろしていたライラは足をバタバタして笑い出す。


「ふふ。うふふ。へー。そうなんだ。リックの思い人はねぇ。うふふふふ」

「うるさい。ライラ。笑うな」


「あー、おかしい。うふふ。リック、かっこ悪ーい」

「な、なんだとぉう!?」


じゃれ合っている二人だが一堂キョトンとしていることにまだ気付いていない。二人にとっては王子殿下とジン様の占いだが、周りからすれば王子殿下とライラの占いと思っているからだ。

それに対してライラは無関係に笑っていられるはずもないのに。


「お、お嬢さま。お嬢さまは婚約者である王子殿下のことを無関心だと言われているのですぞ? 愛しておられるのではないのですか?」


私が問うと、ライラばかりか、リック王子殿下まで顔色が真っ青になった。


「そ、そうだわ。私はリックのことをこんなにも思っているのに、なんとも思ってないですって? 愛しているのに! こんなインチキ占い当たらないわ。みんないきましょう!」


“愛している”。やはりその言葉には私も動揺する。しかしアビダフはそう叫んでいるライラの方はすっ飛ばしてジン様のほうへと顔を向けた。


「おや!? 間違いました。なんとも思っていないのではございません。その方はとても頑固です。自分の気持ちを心の奥底にある箱に閉じ込め、気持ちがないふりをしているのです。なんという男勝りな方でしょう」

「へー。そうなんだ。すっごい」


たしかにジン様は頑固かも知れない。そして気持ちに鍵をしているのか。って感心してる場合じゃない。素直に頷いているライラをどうにかしないと。


「お嬢さま。そうなんですか? 占い師のおっしゃる通り?」


と聞くと、始めは何を言ってるんだという顔をしていたが気づいたようでハッとしながら答えてきた。


「そ、そう。たしかにそんなところあるわね」

「な、なるほど、ライラのヤツ~。普段は友人のように振る舞っているが、心には熱い情熱があるわけだ」


と、リック王子殿下も芝居に合わせてライラの額をコツリと叩く。それを見ていた観客は歓声をもらした。


「王子殿下バンザイ! 未来のお妃バンザイ!」


それを受ける二人だが、私は寂しそうに笑うジン様を見逃さなかった。

観客はそのまま興奮状態になり、照れた芝居をする二人にさらなる歓声を浴びせた。


「キース! キース! キース! キース!」


なんとキスコール。ライラの顔が恐怖に引きつるのを感じた私はすぐさまライラの元へと走り、手を引いた。

なにを思ったか、リック王子殿下すでにライラの肩に手を添えていた。


「お嬢さま。もう占いは充分でしょう。お屋敷に帰ります」


しかしリック王子殿下は、観客の熱気に当てられたのか、本当にライラとキスしようとし始めた。私は小声で王子殿下をたしなめる。


「王子。悪ふざけはおやめ下さい」

「だってこうしないと観客が治まらん。んーー」


「王子。ジン様が呆れておらっしゃられます」


途端にガバッと直立不動の姿勢をとるリック王子殿下。この人は悪ふざけというか、周りに流されやすいというか、そんな軽い性質なのかも知れない。それで政治をちゃんと運営できるのか心配になってきた。


「いやぁ、ジン。違うんだよ」

「なにが違うのだ。二人が熱いのは分かったが、公共の場所では感心せんな」


「ふざけただけ。ふざけただけなんだよ」

「分かったよ。だがキミがライラにキスをするのは当然の話だ。それは武道とは関係ないから私は特に咎めようとは思わんぞ」


リック王子殿下は、失敗したと丸わかりくらい顔を抑えた。


「おお。王子殿下の思われ人の心がどんどんしぼんでいくのが分かります」


アビダフの追撃の言葉にリック王子殿下は、もう泣きそう。それを聞いたライラはまた腹を抱えて笑いだす。


「うふうふうふ。サイコーだわ。凄く面白い。そらそうよ。リックったら。公共の場ではそんなことしないでよね。愛の行為は二人きりの時にするべきだわ。反省しなさーい」


うまい。ライラ。上手な繫げ方だ。

王子殿下の落ち込みようといったら。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんばんは。 ここまで読んで、「婚約破棄された親友の悪役令嬢に成り代わり王太子殿下に果し合いします!」と全く違う状況が描かれている事に驚いています。 前作の単なる裏話ではなく、その原因…
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