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教会での死闘 ④


 炎神は、宙に舞った百花に注意を向ける。それを見た百花は、手にしていた短剣を二本とも炎神に向かって投げつけた。


「分身」


 百花がそう言ったかと思うと、短剣はその数を数十本にも増やして炎神に降り注ぐ。双剣を振るって打ち落とそうとするが、何本かの短剣が炎神へと突き刺さった。


「ぶおおぉぉ」


 短剣は、炎神に突き刺さった途端に溶けて消えていったが、俺の氷拳に比べればダメージが与えられている。百花はさらに二本の短剣を投げつけて、それを数十本に増やして投擲している。


「水遁・水縛陣」


 百花の体が青く光ると、全身から水流が噴き出し、炎神の体に襲い掛かる。


「分身」


 水流は炎神の体に届くとすぐに蒸発してしまうが、大量の水流は炎神の動きを止めるには十分な量であった。三度放たれた大量の短剣は、その全てが炎神の体に突き刺さった。


 さすが代々続く忍者の家系である。百花が暮らしていた浅間の里は、職業として忍者を取得するための訓練を行うことで、スキルとして忍術を取得できる。伊賀や甲賀とは異なる進化を遂げた忍らしい。


「ぶおおぉぉ」


 いくら多少のダメージが入っているとは言っても、炎神を倒すほどの強力なダメージとはならない。百花が時間を稼いでくれている間に、俺も何かをしなければならない。


「氷拳」


 燃え盛る森に目掛けて氷の拳を放つ。ただの炎ならば凍り付かせることができると思ったのだが、冷気が触れた途端に蒸発させられている。この炎の海も、残念ながら炎神の一部ということらしい。


 俺一人であればあきらめがついたのだが、百花がいる以上、最後まであきらめるわけにもいかないようだ。どうにかしてまともな逃げ道を作らなければ。


 炎の海は凍らせられない。後ろは断崖絶壁。もう空を飛んで逃げるか、穴でも掘って逃げるしか……


「ピットホール」


 目の前に、大きな落とし穴を出現させる。中に鋭利な棘が一本設置されているのが恐ろしいところだが、それに刺さらないように、穴の中に転がり込む。深さはおよそ2メートル。これを掘り進んで行けば、いずれ炎の海を脱出できる……


 わけないだろ!何キロ掘らなきゃいけないんだよ!ちょっといけると思った俺のバカ!


 よりによってこんな足でここに転がり込んでしまうとは。最早自力で這い出すこともできない。結果として、百花を見捨てて隠れる形になってしまった。


 やばいやばいやばいぞ!百花もいつまで戦えるかわからないし、ここでは支援もできない。完全に役立たずだ。


「九十九クン、大丈夫です?」


 遥か上空から声がかけられる。本当なら俺が心配するはずなのに、百花に心配されてしまった。彼女もすでに満身創痍で、服があちこちボロボロになっている。幸い俺のような致命傷は負っていないようで、動きはそれほど悪くなってはいないが、いつそうなってもおかしくないだろう。


「百花、俺のことは気にするな」


 むしろ気にかけられると罪悪感に押し潰されそうである。どうにかこの状況を覆せるような、万能スキルでもないだろうか。ステータス画面でスキル取得可能欄を表示させる。



取得可能スキル


・なし



 なしって何?転職してから何もスキル取得して無いっていうのに、あれ以来何も取得可能になってないの?レベルも結構上がったはずだよね、女神様。



取得スキル


・瞬動

・サーチ

・氷拳

・炎拳

・雷拳

・轟拳


取得魔法


・スタン

・ピットホール

・スタンボール

・アースクエイク



 成長の『せ』の字もねえよ。澪はともかく、十六夜なんかかなりの補助魔法が使えるようになったって言ってたのに。


 ちょっと女神様。これは贔屓が過ぎるんじゃないですか?俺だって前線に出て逃げたり、逃げたり、逃げたりしてたのに!


 ここは主人公補正とかかかって、俺最強になるところじゃないんですか?炎神を一撃で粉砕しちゃうような、最強職業とか、最強スキルとか、最強魔法とか、そんなの授けていただけないんですかね?


『現在取得可能なスキルはありません』


 いきなり出たよ、バグ女神。急な光とか、時間停止とか無くて、普通に出てきちゃったよ。


『現在取得可能な魔法はありません』

「そこを何とかお願いします!」

『現在新たに転職可能な職業はありません』


 いやいや。わざわざ出て来て、そんなご無体な事だけ言いに来たの?


 大体、あれはどう見ても世界の敵だろう。本来ならあなた自身が積極的に倒しに行かなければいけない相手なんじゃないですか?あなたが倒してくださるんなら何も言いませんがね。それを、攻撃は通じない。敵に触れただけで死んでしまう。そんな非力な私奴に、転職を司る女神様は、何のご慈悲もなく倒して来いと仰るんですかね?


『……』


 お、もう一押しって感じだ。


 あ~、困ったな~。あれがあのまま生き残ると、またワーカーの里とか滅ぼされちゃうんだろうな~。せっかくここまで追い詰めたのに、最後の最後で逃げられちゃうんですかね~。それは女神様としても、困る事じゃないんですかね~。せめて、あいつにダメージを与えられる攻撃があれば、どうにかできると思うんですけどね~。


『…………スキル『崩拳』を取得しました。魔法『ファントムラッシュ』を取得しました』


 かなり悩んだ挙句、女神様が折れた。きっとこのスキルと魔法があれば、あいつを倒せるはずだ。が、この足では戦えないぞ?そこんとこどうなんですかね?


『…チッ』


 舌打ちした~!でも、舌打ちしながら回復魔法をかけてくれた。足は元に戻り、体中のやけどは消え去っている。これならどうにか戦えそうだ。ありがとう、女神様。きっとご期待に応えて見せますよ!


『……』


 ものすごく不機嫌そうな顔で、女神様は消えていった。そこは勇者を送り出す的な、期待に満ちた表情で送り出すべきではないんですか?


 ま、まあ、今は良いだろう。早く百花を助けなければいけない。それに、今取得したスキルと魔法の確認を行わなければなるまい。『崩拳』については、炎神にダメージを与えることができる攻撃スキルのはずだ。『ファントムラッシュ』が、文字列だけでは用途が分からない。幻が…どうにかしてくれるのかな?とにかく、この二つを使えばあれを倒すことができるはずだ。


「百花! 交代だ」


 落とし穴から飛び出し、百花に告げる。百花は右腕に一撃もらったらしく、服の上からでもわかる程肌がただれていた。


「だ、大丈夫なんです?」


 俺の事を心配してくれる百花の方がボロボロだ。炎神から百花が距離をとったのを見ると、俺は炎神に向き直り、スキルを発動させる。


「崩拳!」


 瞬動で移動したのかと思うほど高速で炎神へと肉薄し、超振動を起こした俺の拳が炎神に突き刺さる。それは炎の熱に負けることは無く、炎神の左腕を吹き飛ばした。俺はそのまま大きく飛び退き、炎神から距離をとる。


 背後の炎を吸収して、吹き飛ばされた左腕を再生させようとするが、どうやら『崩拳』で破壊された部分は再生ができないようである。


「す、すごいです!」


 これならいけるか、そう思ったのだが、身体の疲労感に片膝をついてしまう。先ほど体力を全快させてもらったのだが、体力の三分の一が減っている。さらに、霊力は半分が無くなってしまった。


 さすが女神様から無理矢理もらったスキルだ。威力に比例して消耗も半端ない。後はもう一つの魔法、これもきっと炎神を倒すために必要なはずだ。


「ファントムラッシュ」


 魔法を発動させた瞬間、俺の周囲に、『俺』が20人出現した。俺が分身したということだろうか?どうやら俺の意思で自由に動かせるらしいのだが……


 これで分身して、周囲から『崩拳』でタコ殴りにしろと、女神様は言いたかったのだろうか?俺の霊力はすっからかんになってしまった。


 どうやら、使用する順番を間違ってしまったらしい。






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