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決着


 澪さんが後方に弾き飛ばされたのを、アタシはただ見ていることしかできなかった。


 やっぱりアタシには何もできない。すぐに回復魔法で癒すこともできなくて。


 やっぱりアタシはただの弱虫だ。一人で魔犬に立ち向かうこともできなくて。


 それでもアタシは、アタシを必要としてくれたこの人たちを護りたい!


 魔犬はこちらに向かって、躊躇無く突進してくる。せめて、傷が塞がりきっていない和泉さんだけでも護らなければ。


 アタシは手を握りしめたまま、和泉さんの体に覆いかぶさる。その瞬間に、時間が止まった。


『解放条件を達成しました。魔法スキル、ホーリーシールドを取得しました』


 女神様の声が聞こえた。転職の時以外に、女神様の声を聞くことがあるなんて、今までなかった。教会の外で、どうしてこんなことが起こったのか。


 でも、今はそんなことはどうでも良い。


「ホーリーシールド!」


 アタシは、取得したばかりの魔法を発動した。


「ぐわん」


 白銀の輝きを放つ光の壁は、アタシと和泉さんを包み込むようにして発動された。


 以前見習い修道女をマスタリーした時には、取得可能欄に出現しなかった護りの魔法。それが今、本当に必要な時に取得することができた。


 勝手に不要と切り捨てていたけど。勝手に憎んでいた職業だけど。


 今日この時、この力が使えて良かった。


 自分の大切な人を、自分の力で護れて良かった。


「なんだか、きれいな魔法だな」


 和泉さんにそう言ってもらえて、アタシは本当に嬉しかった。




 十六夜が発動した魔法は、白銀の輝きを放ってすごくきれいに見えた。できればしばらく眺めていたいと思ったが、そうもいかないようだ。


澪を後方に吹き飛ばしたことで、狙いを完全に俺たちに切り替えたらしい。先ほどから魔犬は足で踏みつけ、炎を吹きかけ続けている。十分な強度はありそうだが、いつまでも持たないだろう。


十六夜のおかげで体力はだいぶ回復したが、半身に至るこの噛み傷は塞がるまでしばらくかかりそうだ。本当なら痛いのは嫌なのでしっかりと痛みがなくなるまで治療を受けたいのだが、仕方がない。


「十六夜。俺が隙を作るから、その間に澪のところへ行って、回復させてやってくれ」

「でも、和泉さんの傷はまだ……」

「大丈夫じゃないから、できるだけ早く澪を回復させてきてくれ。頼んだ!」

「……わかりました」


 ふらふらと立ち上がりながら、魔犬に向けて魔法を放つ。


「ピットホール」


 おなじみの落とし穴が出現する。最近は深さが増した穴の中に魔犬が落ちていく。


「スタンボール! スタンボール! スタンボール!」


 少しでも時間が稼げるように、穴の中にスタンボールを連発する。しかし、どうやらスタンの効果は効かないようで、魔犬はすぐに穴の中から飛び出してきた。十六夜は今澪のところに到着したばかり。すぐに援軍は見込めない。傷のせいで、高速での移動が困難なので、逃げ回ることもできない。


「なら、もう腹をくくるしかないだろうがー!」


 俺は叫びながら、どっしりと腰を落として攻撃の姿勢を取った。


 その瞬間に、時間が止まった。


『見習い魔導士がマスタリーされたため、中級職業に転職が可能です』


そう言って目の前に現れたのは、バグ女神様だ。


「女神様、この状況は……」

『見習い魔導士がマスタリーされたため、中級職業に転職が可能です』

「……」


 相変わらず、バグは健在だった。


「転職が可能な職業は何ですか?」

『現在転職が可能なのは、こちらの職業になります』


 なんだか初めて会話が成立したんだけど。そんなことに感動しながらも、目の前に表示されたウィンドウに目をやる。



転職可能職業



・魔拳士



 一種類しかなかった。いやいや、ここは『見習い』の部分が抜けて魔導士になるんじゃないの?それに、『魔』の部分は残ってるけど、どう見ても魔法関連の職業じゃないんですけど?


「えっと、他には……」

『現在転職が可能なのは、こちらの職業になります』


 俺はあきらめて、『魔拳士』をタップする。


『魔拳士に転職しました。転職に伴い、『俊足パッシブ』と『ハイクロック』が消失し、スキル『瞬動』を取得しました。スキル『雷拳』を取得しました。スキル『炎拳』を取得しました。スキル『氷拳』を取得しました。スキル『轟拳』を取得しました』


 すごい勢いで取得したスキルを告げていく女神様。スキルの名前を聞いている感じだと、どれも殴る系のスキルなんですけど。確かに戦闘では殴る蹴るで敵を倒してましたけどね。それでも、せめて魔法の一つも覚えたかったんですけど?


『……魔法『アースクエイク』を取得しました』


 今一瞬嫌な顔しましたよね?そんで、しょうがねぇなぁみたいな感じで、最後に魔法を付け加えましたよね?


『以上で転職を終了します』


 そう言って女神様が消えた瞬間に、再び時間が動き出す。その瞬間に、落とし穴から飛び出してきた魔犬が、俺目掛けて飛びかかってくる。


「ぐおおぉぉ」


 まだ転職したばかりで、実際どんな職業かもわからない。しかし、スキルはどれも殴る系のはず。効果はわからないけど、とりあえずスキルを使って、殴るだけだ!


「雷拳!」


 魔犬の突撃に合わせて拳を叩きつける。拳が当たった瞬間に、魔犬の全身に激しい電撃が駆け巡る。全身をびくびくと震わせながらも、魔犬の頭の一つが口を開き、炎を噴出した。俺はそれに合わせて、再び拳を放つ。


「炎拳!」


 俺の拳から放たれた炎の柱が、魔犬の噴出した炎を飲み込み、そのまま魔犬の全身さえも包み込んだ。


「ぐああぁぁ」


 全身が焼かれる苦しみを耐えながら、魔犬はふらつきながらも突進してくる。どうやらかなりのダメージを受けているようで、澪が切りつけた時のような回復はしていない。


「氷拳!」


 突っ込んでくるタイミングに合わせて、氷を纏った拳を放つ。魔犬の首に当たった拳は、全身に冷気を吹き付けて、その巨体を凍り付かせた。


「これで終わりだ、化け物ワンコ」


 俺は息を深く吸って、腹に力籠める。これが、最後の一撃だ。


「轟拳!」


 凍り付いた魔犬に向けて放ったそれは、周囲の木々を揺らすほどの轟音を鳴らしながら、直撃した。


 スキルの効果で落ちた桜の花びらと共に、砕け散った氷が風と共に舞い上がっていった。






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