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みんなで買い物に行きました


 昨日の疲労がウソのように、今日の目覚めはすっきりとしていた。左腕の痛みも完全に消えている。体力の表示も『560/560』と、まさに全快の状態となってしまった。


 春休みが始まってから休み無く働いていたため、今日くらいは体調不良で休みたかったのだが……


(ズル休みっていうのも、ありなんじゃない?)


 俺の心に悪魔が囁く。一度その囁きを聞いてしまえば、無視することができなくなってしまう。


(昨日あんなにダメージを受けたんだから、今日くらい休んでも大丈夫だよ)


 くっ!やはり抗うことはできないか。


 俺は枕元に放り出してあるスマホを手に取ると、澪に電話をかける。


「もしもし」

「もしもし? 俺だけど、昨日の傷が痛むから、今日は休みたいんだ」

「……」


 俺の言葉を聞いて、澪は無言で電話を切った。俺のことを気遣って、長電話を避けてくれたのだろうか?とにかく連絡を終えて一安心した俺は、もう一度布団に入って寝直すことにした。


ドンドンドンドン!


 布団にもぐり直してすぐに、玄関を叩く音が聞こえる。


「ちょ、ちょっと澪さん。剣を仕舞って! 切っちゃダメです!」

「桜観斬月流……月穿」


ズドーン!……バタバタバタバタ、ガチャン


「つっくーん!」


 とりあえず、今起きたことを確認しよう。澪に体調が悪いと連絡した。玄関を叩く音が聞こえた。十六夜と澪の声が聞こえた。何かが倒れるような音が聞こえた。家の中を誰かが駆ける音が聞こえた。澪が十六夜を引き連れて部屋に突撃してきた。


 うん、さっぱりわからないね。だって、電話切ってから3分も経ってないもん。


「つっくん死んじゃやだ目を開けて息をして心臓を動かしてー!」

「み、澪さん落ち着いてください! 目も開いてるし息もしてるし心臓も動いてます!」


 そして今、その全てができなくなりそうな勢いで抱きしめられてるんですけど!


「十六夜早く回復魔法かけてよー」

「……もう少ししたら蘇生魔法をかけてもらいましょう。3つ隣の町の教会で」


 俺このまま死ぬの?澪の体の柔らかさとか甘い香りとかそんなん全部度外視するくらい背骨が痛い!メキメキという体の悲鳴は、おそらく空耳ではないだろう。そう言えば、笠間神父も蘇生魔法は使えないって言ってたっけ……


「す、スタン!」

「ふきゃ!」


 左手で、どうにか澪の首筋に触れて魔法を発動させる。澪の体から力が抜け、俺にもたれかかるように倒れる。


「和泉さん、左腕はもう十分動くようですね」


 そう言ってにっこりほほ笑む十六夜。目敏い奴め。仮病がばれたか。


「十六夜はもう良いのか? お前だって相当疲れてたろう?」

「おかげさまで、すごく元気になりました」


 良かった。十六夜の表情はすごく明るくなった。人生なんて、思い詰めて生きるものじゃない。適度に息抜きでもしないと続かない。


「ということで、今日はお休みにしよう!」

「ふふ。どういうことですか」

「いいだろ? ブラック企業じゃないんだからさ」


 十六夜は、突如教会に突入してきた澪に強制連行されてきたらしく、朝食はまだというので、二人で朝食を食べることにした。澪は、俺のベッドに放置してきた。


「和泉さん、料理できるんですね」

「両親が転勤でいないからな。これでも料理と洗濯は自分でやってるんだ」

「意外です」


 俺としても意外だったが、料理はやってみると結構楽しかった。最近ではクックパットを見ながら和食、中華、洋食と気分で少しずつできる料理のレシピを増やしている。


「せっかくだから、お昼も食ってけよ。十六夜が好きな物作ってやるから」

「え?」

「大丈夫、俺にはクックパットさんがついている」

「朝食を食べながら昼食の話って、会話のチョイスおかしくないですか?」


 おおう。俺のコミュニケーションスキルのなさよ。


 朝食を済ませると、十六夜に手伝ってもらいながら溜まっていた洗濯や掃除を済ませていく。一週間近く溜まっていると、なかなかの量になっていたので、十六夜が手伝ってくれて助かった。


 大体の作業が済むと、澪が目を覚まして起きてきた。せっかくなので布団を干して、俺たち三人は昼食の材料を買いに行くことにした。


「九十九、これ、デート?」


 やめてください。美少女二人を侍らせてデートとか言ったら、とんだゲス野郎だ。


「腕、組んでもいい?」

「いや、昨日折れたばっかだから無理」


 両腕バッキバキになったからね。今日もへし折られたら、腕がおかしくなりそうだ。


「じゃあ、手をつなぐのはいいですか?」

「いや、生理的に無理」

「ちょ、生理的にってどういうことですか!」


 だって、人前で手をつなぐとか恥ずかしいし無理じゃん。


 そんなアホなやり取りをしている間に、近所のショッピングモールへと到着する。


「それじゃ、俺は食材やら生活用品やら買ってくるから、集合時間決めるか」

「却下」

「なんで!」

「いや、和泉さん。せっかく三人で来て別行動する方がおかしいでしょう?」


 そうなの?むしろ分担して買い物して、とっとと家に帰りたいんだけど。


「それに見てください! アタシは修道服だし、澪さんなんて剣道着ですよ。このままだと、和泉さんはコスプレ美少女を嬉々として連れ歩く、変態さんになりますよ?」


 マジかよ。自分で美少女とか言っちゃうの?それに、俺たちは一般人からははっきりと認識されないんだから、別にどんな格好してても大丈夫なのでは?


「澪さん澪さん。可愛い服着たほうが、和泉さんも喜びますよ」

「……」


 澪さん、無言で引っ張っていくのをいい加減やめてください。


 数件の女性服の店の中から、いわゆるハイティーン向けと言われる店をチョイスして突撃する俺たち。っていうか俺は外で待っていればいいだろうよ。


「あらあら、どっちが本命なんですか?」


 などと店員にからかわれながら、二人の服選びに付き合わされるのは、非常に居心地が悪かった。二人で楽しそうに選んでるんだから、いちいち俺の評価を求めなくてもいいと思うのだが。


「どう?」


 澪が着ているのは、白のバックスに黒のキャップ。シンプルな組み合わせであるが、それ故に破壊力はとてつもない。裾からすらりと伸びた生足も、襟元から見える鎖骨のラインも、直視することができないほどにまぶしい。


「こっちはどうですか?」


 十六夜は、半袖の黒パーカーに紺のホットパンツという機動力重視の装備だ。こちらも普段は見えない太ももに視線が向いてしまうのだが、俺は太ももフェチではないぞ。それに、普段以上に強調された胸が……


「いでででで」

「胸、見過ぎ」


 澪にわき腹の肉をつねられる。それはもう、相当な力で。


「大丈夫、澪も立派なものを持ってるよ」

「じゃあ、私のを見ればいいのに」

「何気に今のはセクハラですからね」


 周囲の目が痛い。これじゃ俺が、女性服売り場で美少女にセクハラをする変態野郎みたいじゃないか!


「すいません、二人の服の会計お願いします。大至急で」

「ふふふ、わかりました。このまま着ていかれますか?」

「お願いします」


 二枚の紙袋を受け取ると、試着室の二人にそれを手渡して、俺は店員さんと会計に向かう。この場は逃げるが勝ちである。


「お会計38500円になります」


 女子の服は高い。俺の服の10倍は高い。だが、男には払わなければいけない時がある。特に、速やかにその場から離れたい時とか……


「いやぁ、まさか服を買っていただけるとは」

「どうして?」

「給料で結構もらってるし。それに、二人にはいつも世話になってるから、そのお礼ってことで」


 言っててすごく恥ずかしかったが、せっかくの機会だから伝えておきたいと思った。


「それなら、私も九十九に何かおごる」

「じゃ、アタシも何かごちそうしなくちゃダメですね」


 そう言う美少女たちに手を引かれながら、フードコートへと向かう。お昼は、どうやら作らなくて済みそうだな。







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