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3度目の人生ーーsideケビンニルーー

ええと、今日(2/27)の更新をしよう、と、ケビンニルの話を振り返ろうとして、何故か最後まで書いたはずの話が消えていて、途中だった事に気づきました。

おそらく編集保存のボタンをきちんと最後まで確認しなかったと思われ……。

そんなわけで、中途半端だったケビンニルの話を仕上げました。

ベルヌ元公爵夫人だった義母を、義兄であるグェンと一緒に見送った次の瞬間。僕は明らかに視点が低くなっていた。……しかも、さっきまでいた質素な部屋とは違う。一流品とは言えないが、それなりに金のかかった調度品。……もしかして、また人生を繰り返してしまった? 首を捻ったところで、執事が僕を呼びに来た。この顔は男爵家の執事。という事は、僕は男爵家に居る頃に戻ったのか。


「坊っちゃま、おはようございます」


「おはよう」


「本日は家庭教師の方とお勉強でございます」


「分かった」


着替えて朝食を取り、家庭教師が来るのを待っている時だった。急な先触れが届いた、と執事が真っ青な顔でお父様のところに飛んで来た。


「ああ、そういうことか。ケビンニル」


「はい」


「急な事だが、お前はベルヌ公爵家へ行く」


成る程。義姉上の結婚が決まったな。またあのバカ王子か。


「……行く、とは」


「ベルヌ公爵がお前を迎えに来て、お前はベルヌ公爵の養子となる」


「分かりました」


朝の身支度中に鏡を見て、それなりの年齢だ、と気付いた。このタイミングだと2度目の人生に近い。しかし、2度目とは違い、今はさっき部屋に立っていた記憶から始まっている。……どういう事だろう。


「これからすぐにいらっしゃるそうだ」


「これから?」


さすがに急過ぎる。前回は1ヶ月程時間が有ったはずだ。……何かローゼにあったのだろうか。僕の大切な人。僕の初恋。2度目の人生も若くして逝ってしまった。しかも、あんなバカ王子を庇って。

繰り返す人生は良いとも悪いとも言えないけれど、また義姉上に会えるなら。それだけで繰り返す価値がある。そうして僕は、3度目の義父を待ち、ベルヌ家へ入った。


「ケビン!」


初対面であるはずの僕に義姉が、いつものように愛称を呼ぶ。いや、嬉しいけど、記憶があるって何となく分かってたけど、いきなりそれじゃ、義父上が驚くんじゃ……とか思う間もなく、僕は義姉上の自室に連行された。いや、うん。どう考えても連行にしか思えなかったんだよ。


「ケビン。あなた、人生を繰り返しているわよね? 記憶があるわよね?」


いや、そうだけど。一応初対面の僕を自室に呼んでいるって、義姉上、淑女としては間違いでは? 嬉しいけどさ。そして、コレを改めて尋ねるということは……。


「有ります」


「私とお母様にも有るのよ。それでね? お母様に、あなたの記憶を全て話して欲しいの」


そう言って義姉は……ローゼは、僕にこれまでのことを話してくれた。


「そんな……」


義姉上がそんな若くして死ぬ事が寿命だったなんて……という息苦しさもあるけれど、それ以上にローゼがグェンを好きだなんて、知りたくなかったよ、僕は! 失恋決定じゃないか!


「でね。お母様曰く、記憶がある人の話を聞く事で、この繰り返しの人生を抜け出る何かがあるかもしれないって。私が長生きする方法が。だからケビン。あなたのことを教えて欲しいの」


どうやら2度目の人生の途中から3度目に変わったようなのだが、それはともかく。義姉上、僅か12歳にして、その上目遣いは、男心にクルんですが! この人、自覚無いから質が悪い。


「……分かりました」


はぁ。もう。僕は結局、この人が幸せならそれでいいんだけど。でもちょっとは悔しいから、僕を意識させてやろう。


「ありがとう、ケビン」


……ああ、その笑顔のために僕は頑張ろうと思うんですよ。


「どういたしまして。でも義姉上」


「なぁに?」


「今のあなたは、まだグェンには会っていないんですよね?」


「え、ええ」


「じゃあ僕にもチャンスを下さい」


「チャンス?」


「僕は、義母上にも後で話しますが、1度目の人生であなたを失ってから、あなたが僕の初恋だ、と気付いたんです。2度目の時は、あなたが幸せならば、と口にしたくなかったのですが。3度目の今は、遠慮なく言います。

あなたを女性として好きです。だから、あなたを妻に迎えるために、全力で頑張っても良いですか?」


僕の告白を、ローゼは目をパチパチと瞬かせて戸惑って聞く。

あー、これは分かっていないようだなぁ。じゃあちょっとショック療法を使うか。

……なんて、そんなのは建前で。本当はただローゼに触れたいだけ。


僕はローゼの手を取り、その指先に口付け、髪をそっと撫で、その毛先に口付け、口をパクパクと開閉して顔を真っ赤にさせているローゼを見ながら、その背中に腕を回して、目尻に口付けた。……さすがにここまでされて、気付かないわけは無いようだ。鈍くなくて安心した。


「な、な、な……」


「ローゼ?」


「なんてことするの! ケビン! そ、そういう事は恋人にしなさいっ!」


あーあ。僕が義弟としての正しい距離を取っていたのが間違いだったかなぁ。微妙に分かっていない。


「だから。ローゼにしているんだけど。あなたを妻にしたいんだ。そう思うんだから、僕の行動は間違っていないでしょう?」


「わ、私は義姉で!」


「知っているよ。でも血は繋がっていないし。僕は公爵家の跡取りだよね。僕と結婚することを誰も反対しないでしょ」


「で、ででででも、私は、ぐ、グェン様が」


「うん。聞いた。それは悔しいけど。でも今のローゼは、おそらくバカ王子と婚約するか、した直後で、グェンに会っていない。グェンがローゼと同じ気持ちなのか分からないでしょ。ローゼは、僕が嫌い?」


「嫌い、では、ない、です、けど」


「うん。今はそれで良いよ。嫌われていないなら、チャンスは有る。僕はローゼに好きになってもらいたい。僕はローゼが好きだ。どうせバカ王子との婚約は、側妃として、でしょう? あの義父上と義母上が、バカ王子の側妃になる事に納得しているわけ、ないじゃん」


「それはそうです、けど」


「僕なら2人が反対するとは思わない」


「それもそうだ、と思います、けど」


ローゼは多分、色々考えることがあって、今はもう限界なんだろう。大体、淑女教育をしっかり受けているローゼにとって、未だ11歳とはいえ、異性に抱きしめられているこの状況は、本来なら卒倒モノのレベル。

ただ、2度人生を繰り返している中で、こんな事は些細なことになったのかもしれない。それならそれで良い。悪いけど、僕はそこにつけこませてもらうよ。


「まぁ今はここまでにしておこうか。義母上も待っているだろうし、ね」


僕が離れたことに、ようやく安堵したのか。ローゼはホッと溜め息を吐き出した。


「でもね、僕は遠慮しないからね。ローゼが好きだ、と言い続けるよ。隙あらばローゼを掻っ攫いたいからね」


「掻っ攫う」


「この腕の中に閉じ込めてしまいたい。でも息苦しさを与えたくない。ローゼは僕に愛されて、そして僕を愛してくれたら嬉しいし、幸せだよ」


ローゼの顔色が真っ赤で、可愛くて。もう一度僕はその目尻に口付けを送った。ローゼが僕をポカポカ殴ってくる。あー可愛い。ローゼが僕を男として認識してくれたなら、少しは嬉しい。


それから僕はローゼをエスコートして、義母上の自室で顔を合わせた。義父上は、何かを察しているのか、僕を睨んで来たが、それよりも義母上の深刻そうな表情に、何も言わない。


「あらあら。ケビンってば、ローゼが好きだったの?」


「はい」


僕は義母上に自信満々に答えた。義母上は、驚いた表情を見せたけど、ローゼが決して嫌がっていない事を見て、ただ微笑むだけ。ローゼが幸せなら、僕がローゼを好きでも良いのだろう。それならば遠慮なく、と、僕はローゼの腰に手を回して引き寄せた。


「ちょっとケビン!」


「義母上は反対してないよ?」


「お母様が反対してなくても、私は恥ずかしいです!」


「そう? でも、これくらいやらないと、ローゼは僕の気持ちに気付かないみたいだから」


しれっと答えれば「分かったわ! 分かったから、とりあえず今は離れて!」とローゼが逃れようとする。僕は素直に離したが、それは僕を睨んでいる義父上の視線が痛いんじゃなくて、今は、とローゼが言ったから。つまり、後なら、良いのだ、と都合よく解釈した。


「そうねぇ。ケビンが相手、というのはアリよねぇ」


義母上がニコニコしながらローゼを見る。ローゼは居た堪れない表情をしながら、義母上を見た。


「さて、じゃあケビンの話を聞きましょう。……という前に、ローゼ。私、少し考えてみたのだけど、旦那様にも説明をした方がいいような気がするのよ」


「お母様がそう仰るなら」


義父上は、怪訝そうな顔で義母上と、ローゼを交互に見ている。ソファーに座った僕達は、使用人を全て下がらせると「何処から話すべきかしら」と呟いた義母上が、切り出した。


「あなた」


「うん?」


「これから話すことは、あなたからすれば荒唐無稽かもしれませんわ。でも、これだけは最初に言わせて下さいませ。私、あなたと政略結婚でしたけれど、あなたを男性として恋しく思い、夫として愛しています。政略結婚でも恋愛はできますのね」


義父上は、まさか子ども達が居る前で言われるとは思わなかったのか、顔を真っ赤にさせて、フイと義母上から視線を逸らした。……まぁそうだよね。僕も公爵家の養子として引き取られてから、2人の噂を聞いていたんだけど。


義父上はそもそも、別の女性と最初は婚約していた。だけど、その、義父上の顔は、どちらかと言えば、とても怖い。眉間に皺が入っていると、どこかの裏組織のボスのようだ。子どもの頃はまだ可愛い部分もあったみたいだけど、成長するにつれて、そんな顔になってしまった義父上。

義父上の祖父にあたる方がそういう顔らしい。で。成長してそんな顔になった義父上を最初の婚約者は怖がり、妻にはなれない、と叫んだとか。お互い恋愛感情は無くて、お互いの家に利益は有るけど、解消しても不利益にはならない関係だったから、2人は婚約解消。


義父上は、さすがに傷ついたらしくて、しばらく女性を敬遠していた。でも、三男の義父上は、婿入りしなくちゃいけない。それで義父上の両親が次に考えたのが、義父上の幼馴染みで、全く義父上の顔を怖がらない、義母上だった。

義父上も義母上が、自分の顔を怖がらない事は分かっていたけれど、婚約者としてだと、どうなるのか。と不安だったようだ。ちなみにその心配は杞憂に終わった。義母上は、義父上に言ったそうだ。


「顔は確かに眉間に皺を寄せているから怖く見えるけど、元々、私の好みですわ。幼馴染みとして、あなたの性格もなんとなく分かっていますし、上手くやれると思いますの。でも、私があなたを男性として好きになるかどうかは、これからのあなた次第ね」


こんな事を婚約時に言われた義父上は、そんな義母上の明るい笑顔に恋に落ちたそうで。そこから義父上は、相当頑張っていた。……らしい。今、実って良かったね、義父上。


さて、そんな事を思っていた僕の耳に、飛び込んで来た固い声。義母上は、真剣な表情で義父上を見た。義父上も何か余程の事があるらしい、と、真剣になる。そして義母上は、1度目の人生から全てを義父上に話した。


「ーーそ、そんなことが」


掠れた義父上の声。まぁ確かに驚くよねぇ。僕も義母上が、異世界生まれの前世持ちなんて、ビックリです。


「信じられないとは思いますが」


「いや、信じる。ネージェは、私をきちんと見てくれる。それに、ネージェの言う事を考えると、君は、やり直しても、私と結婚する事を選んだことになる。分かっていたはずなのに」


「だって、私、あなたを愛してますもの。他の女にあなたを譲るわけ、ないでしょう?」


あ、義母上、それ、凄い殺し文句。僕は義父上が感涙しているところを、3度目の人生で初めて見た。


「そんなネージェの話を、私が疑うわけ無い。でも、私はかけがえのない娘を2度も死なせてしまうなんて」


痛ましそうな表情の義父上。義姉上は、義父上に寄り添う。


「では、ケビンの話を聞かせてくれる?」


義母上に促され、僕は1度目の人生の失敗も後悔も含めて全てを語った。だからこそ、2度目の人生は、ローゼの幸せを1番に願っていたことも。


「だから、僕は3度目の今回は、自分が後悔したくなかったんです。ローゼを妻にしたい。そう思いますけど、それ以上に、ローゼが幸せだと思ってくれるなら、それで報われます」


僕が最後に締め括れば、義母上がニッコリ笑って頷いてくれた。


「ありがとう、ケビン。話したくなかっただろう事まで話してくれて。でも、残念ながら今の話を聞いても、まだヒントが見つからないわ。やはりグェンと……出来れば、あのバカ王子の話を聞きたいのよね」


義母上、やっぱり怒ってた。バカ王子ってハッキリ言ったよ。でも、とにかく、何故か3度目の人生では、バカ王子の方からローゼに歩み寄ってきたんだし。もしかしたら話は聞けるかもしれない。

そんなわけで、ケビンニルの話を書いていたら、本日の更新分(グェンの予定でした)が書けなかったので、今夜か明日、更新したいと思います。出来れば今夜書きたい……。とりあえず、もう失敗しないように、気を付けます。

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