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1度目の人生ーーsideローゼリアーー

サブタイの名前は、その人物の視点で語られる話です。

最初は婚約を破棄? 解消? される女性視点。年齢はこの時点で17歳です。


拙作「愛してる」って言わないので〜を書き終えてから、色々考えていた時に思い付いた話です。

王家から望まれた婚約だ、とこの人は知らないのかしら。


「聞いているのか!」


「聞いております、殿下」


「ならば、何故答えない」


「殿下の望みとはいえ、陛下が諾と仰られていないなら、私は返答しかねます」


王家と公爵家の婚約なんて、政略結婚だ。互いの気持ちなど全く関係ない。

私の意思など全く無いまま5歳で結ばれた婚約なのに。


「父上は俺から話す。父上も認めてくれるはずだ。お前のような愛想笑いしか浮かべん、何を考えているか分からん女など、俺は願い下げだ。

ここにいるアリリルの方が百倍も可愛くて表情豊かで愛しい。二度と俺の前に現れるな! お前は国外追放だ!」


「何の罪も無いのに、私が、でしょうか」


「王子である俺の婚約者候補だってだけで、お高く止まっている女というだけで、俺が気に入らん。罪など有ろうが無かろうが、俺は王子だ。

もう一度言うぞ。第三王子であるバシリード・ノランの名において、ローゼリア・ベルヌ公爵令嬢は、婚約者候補から外し、ローゼリアは国外追放。また、アリリル・モーノ子爵令嬢と婚約する」


殿下は、まさか私が候補だと思っていた? 王家から望まれた婚約だ、と知らない? 契約書を読んでいらっしゃらないの?

お高く止まっている、ね……。そんなふうに見えたのね。


「……承りました。陛下へのご報告をお願い致します」


私は、あまりのことに反論する気も起きず、了承した。

陛下へ報告すれば、追って、なんらかの沙汰は下るはず。殿下の言い方だと“諾”という事か。

バシリード殿下曰く、第三者の証人が必要とかで、学園内の生徒会室で、会長であるルーク・ビノス宰相令息(お父上の爵位は私の父と同じ公爵)と、会計であるニルヴァーノ・ジルケ騎士団長令息(お父上の爵位は伯爵)と、私の義理の弟で書記であるケビンニル・ベルヌ公爵令息の3人が立ち会っている。


ちなみに、副会長がバシリード・ノラン殿下で、私ローゼリア・ベルヌと、アリリル・モーノ子爵令嬢は、生徒会役員ではないが、モーノ子爵令嬢は、殿下の寵愛を受けて、入り浸っていると噂されている。

ルーク様とニルヴァーノ様とケビンニルは、殿下の側近。殿下が私を蔑ろにしても文句など言うわけがない。私はこの為に初めて生徒会室に入った。それくらい無縁の場所。


つまり、現在のところ、私は孤立無援。

それにしても、アリリル嬢の勝ち誇った笑みを、何故、殿下もルーク様もニルヴァーノ様もケビンニルも気付かないのか不思議だ。その目は節穴なのか。


節穴なのかもしれない、と溜め息を溢したくなったのを抑えて、私は殿下方に一礼して生徒会室を出た。

王子妃教育は、アリリル嬢がやるのだろう。私にはもう関係ない。


それにしても、殿下の勘違いには溜め息をつきたくなる。私は婚約者候補では、ない。王家から打診されて断れなかった婚約者、なのだ。

ついでに言うなら、婚約者である以上、王家から護衛を付けられている。私の監視も込みの護衛だ。

今は生徒会室の外で待っていらっしゃるはず。でも、おそらく話が聞こえるように魔法は使っているはず。


この国では希少な魔術師は、全て王家に仕えていて、大概王族の護衛になっている。だから殿下にもいるはずなのだけど。

護衛の任務につく魔術師は、護衛対象だけを守ると同時に監視するから、他の魔術師を知らされる事は、ない。だから、殿下の周囲に気付かれないように守っているのだろう。

そして、私の護衛が王家から付けられている、という事すら知らないのかしら……。


私が少しでも品行を疑われるような言動をすれば、直ちに王家に話がいく。

それで婚約解消ならまだ良い。王子妃教育なんて辛いだけの勉強から解放されるから。だが、そんなわけにいかない。

品行を正す教育と同時に、私の両親達にもお叱りが飛んで、その件について、不名誉な噂が社交界で流れたら……と考えるだけで、恐ろしい。


だから、監視兼護衛の方の目を気にして、常に気を張っていた。


正直、そんな状況で、殿下の言う、表情豊かな可愛い娘など、とても振る舞えない。そんな言動をした時点で、私は王家からお叱りを受けてしまうだろう。


「護衛殿……グェン様。お聞きおよびだと思われますが、私は殿下から婚約者候補を解消されました。もう私の護衛は不要でございます」


私は生徒会室が見えなくなった地点で、護衛の方……グェン・ハイムール様に頭を下げた。

グェン様は黙っていらっしゃったけれど、少しするとその気配が消えた。どうやら私の意図を汲み取ってくれたらしい。私は両親に会って、今後の事を話し合う事にしよう。


そう思いつつ、学園の外に出て、我が公爵家の馬車を待つ事にする。いつもの帰り時間より早いから、やはり我が公爵家の馬車は無い。

そうだろう、と思っていたので、待つ事は苦ではない。だけど、私はせめて学園の中で待つべきだった。まだ明るいし、学園との距離が目と鼻の距離とはいえ、自分が公爵令嬢という立ち位置である事を忘れてはいけなかった。


殿下が婚約している事を知らなかった事もショックだったし、愛想笑いだけの何を考えているか分からない人間と言われた事もショックだったせいで、周囲への警戒を解いていた。おまけに王家の護衛も居ない事を失念していた。


でも仕方ないと思う。

望まぬ婚約を押し付けられ、無理やり王子妃教育を施され、それでも同い年の殿下をお支えするために、と気を張っていたのに、バシリード殿下は幼い頃から私を省みてくれず、好きなように遊び、ご令嬢方からチヤホヤされ、私に贈り物一つ、手紙一つくれないのに、気に入った子には贈り物をしていたのだから。


そんな殿下を思い出して、それでも、とこれまで頑張って来たのに、まさか婚約者とも思われていなかったなんて。


殿下に話しかけても無視され、顔は美人とは言えないので、化粧を工夫して、衣装や装飾品にも気を使って、殿下に気に入られようとしたのに、見向きもされない。


城に上がってもお会い出来ず、お茶会の約束もすっぽかされていた。もしかして、ずっと婚約者候補だと思われていたのかしら。


そんな事を考えていたら、周囲への警戒など怠ってしまうだろう。


結果。


誰か分からないけれど、私は背後から意識を失う薬を嗅がされたらしく、意識が朦朧としている中で、刺された。


刺された感覚だけは、有って。それが私の最後の記憶だった。

ローゼリアのこの後は、次話以降の何人かの視点で描かれます。次話は、第三王子のバシリード殿下視点の1度目の人生です。

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