表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

帰化

作者: 黒瀬 紫音

ふと、昔書いていた小説を見つけた。


あの頃は楽しかったなー、とつくづく思う。何も知らずに生きていた。常識もなくそれ故友達も少なかったが、今よりはいくらか幸せだったと思う。昔は幼いながらもなかなか秀逸で退屈しないネタを書けていた。文章力は今の方がマシだろうが、もう昔のように書きたいもの自体を考えてさえいられない。思いついたって、3日もすればボツ原稿だ。


あの頃の方が本当によかったかと訊かれればわからない。昔に比べれば歌もいくらか上達したし、友人も増えた。世間を渡っていくスキルも身についただろう。そして、自分を知った。


知りすぎたんだ。


何も知らずに誰かに責任を全部押し付けて生きている方が楽だったと思う。だけど、もう今更そんなことはできない。人格形成の7割は環境依存だとか言うが、強いて言うなら運が悪かったと思い込むしかない。誰かのせいにしたら、された誰かが傷つくだけ。たとえ事実だったとしても。


だけど、私自身それを半分くらいは受け入れて生きている。自分が「肯定されることでひどい苦痛を覚える」人間であることを。いつだっけ、大会でいい所まで行った後1週間くらいは倦怠感に襲われていたし、幼い頃から美味しいものを食べるだけで憂鬱な気分になる。美味しいのに。


だけど、片手で数えるほどもいる私を大切にしてくれる人を傷つけるのはいちばん辛い。だから私はこれをひた隠しに生きている。そして、究極の自己否定だけはしない。大切な人を傷つけることになるから。


他人に厳しいのは、他人を大切にしているから。

自分に甘いのは、自分を見捨てているから。


それでも生きなきゃならないんだ、大切な人のために。たった数人と、それから他の友人たちのためにも。結構きついよこれ。自分を否定しながら生きるなんて矛盾している。それでも、しなきゃならない。だって生物だからね。


うーん、こんなことを書いていたら喉が乾いた。グレープフルーツジュースでも取りに行こう。だって、もう大会は終わっちゃったんだからね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ