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悪魔たちの寸劇

紅魔の館にて、九条家一行は図書室に居た。いや、これは最早もはや図書室どころか図書館、いや、大図書館だろう。


「ほう、これは・・・。」


整然と並ぶ無数の本棚に大量の本が並んでおり、さらにそれでも入り切らなかったのか、読んでいる途中なのか積み上がった本の山。

それを一頻り(ひとしきり)眺めた政亜(若)は嘆息した。


「で、ここが図書館と言う訳ですかい。あー、若、ここに住むとか言わないで下さいよ?」

「いや、許可が貰えれば是非住み込みで全て読みたい。そうなれば・・・着いて来るな?御堂。」

「いや、まぁ、構いやせんが。」


何故この二人がここに住むとか言っているのに館の主が何も言わないのかと言うと。

一瞬時は戻るのだが・・・



一行が図書館に入った途端、フワフワと浮かびながら本を棚に入れている司書と鉢合わせた。そして、一瞬の静寂。


「ム、よう、べr「その名前で呼ばないで下さい!」


最初に口を開いた絶は、司書によって弾幕で吹き飛ばされた。

それはもう、強烈に。凄絶に。


「えっ?」「ふむ?」「あ」「ちょ、」


それぞれ、驚愕を口にする。

因みに、左からレミリア、政亜(若)、正人、御堂である。

メイドはレミリアに命じられ、何処かに姿を消している。


「え?ちょっと、小悪魔サン?何を・・・」

「お嬢様は黙っていて下さい。」

「アッハイ」


妙な迫力を背負い、絶が吹き飛んだ先へ向かう司書こと、小悪魔。

館の主も全くの予想外だったのか、たじたじ、と言うか最早言いなりである。


「ねぇ、ゼリエル・ツァペーシュグさん?その名前で呼ばないで下さいと前にも言いましたよね?」

「おい、何をオ前サラッと他人(ひと)の真名ヲバラしてくレてルんダ。フざけルな。マァ、真名を知らレた所デ早々()られハしなイが・・・。」


そして、空気を読まない政亜(若)が辺りを眺め出し、冒頭に戻るという訳である。


「ゼリエルさん?聞いてますか?私は、その名前で呼ばないで下さいと言っているんです。返事は?はいですか?イエスですか?え?いえいえ貴方に選択肢なんてありませんよ?答えるだけで良いんですよ?まあ答えたからには守って頂かないといけませんが。」


理不尽な早口の言葉が絶に浴びせられる。

その騒ぎを聞きつけた者が、一人。


「何?これは何の騒ぎなの?」


この蔵書の持ち主だろうか、紫色の服を着た少女が分厚い本を持って現れる。


「パ、パチェ!助けて頂戴、小悪魔は怖いしそいつらは勝手にここに住むとか言ってるしぃ・・・もう嫌ぁ・・・。」


友か部下か腐れ縁か、紫色の服の少女に泣きつくレミリア・スカーレット。

今だけはこう、見た目相応の年齢に見える。


「こぁが?・・・ああ。成る程。それでそっちの二人については落ち着いて考えたら?焦っても仕方無いわよ、レミィ。」

「・・・ごめんなさい、パチェ。落ち着いたわ。今少しどうかしてた。だから今のは忘れて頂戴、いや、ほんとにお願いだから。」

「それで、こぁは何を・・・?」

「ぱちぇえ・・・。」


パチェ、と呼ばれた少女は、館の主を無視して司書に何があったのかとばかりに観察を開始、分析し出す。まあ、それを人は好奇心と呼ぶ。

因みに館の主は再び涙目になっている。


「それでゼリエル返事は何ですかどうなんですか早く答えて下さい。」

「マァ善処すル。小悪魔ト呼べば良いカ?」


小悪魔の言葉に対して絶はいつもの事だとばかりにそれとなく受け流し、一応は小悪魔に従う。


「あ、はい、それでも良いんですが、私と貴方あなたの仲ですし「こぁ」って呼んで下さい。」

「あア、わかっタ。こぁ、改めテよろシく頼ム。あと館ノ主、もう大丈夫ダ。」

「・・・ほんと?」

「そんナ捨てラれた仔犬みたイな目をすルな、レミリアスカーレット。お前とテ悪魔の端くレだろウ?まア、近くニお前よリ更ニ善に近イ悪魔が居ルが。ナァ、そこニ居るンだろウ?」


絶が虚空に向け話し掛けると、空間そのものがユラリと揺らめいたかと思えば、金髪の優男が姿を現した。


「なんでバレたのかなぁ。自信あったのになぁ。あ、僕はモーニ・ブラッド。そこのレミリアの許婚いいなづけさ。で、貴族でもある。ま、つまりは吸血鬼伯爵、と言うヤツだね。まあ伯爵と言う程僕自身高貴じゃないけど。」

「お、お前と結婚するつもりなんて無い!」


許婚、と言う言葉に反応して声を上げるレミリア。少しばかり声が裏返っている。


「いやレミリア、君の自由意志に任せるって言ったよね僕。嫌なら僕を館から叩き出せば良いじゃないか。」

「恩人にそんな真似出来るかァ!」


反論するモーニに、レミリアは叫ぶ。

『うがー!』と言う擬音が目に見える様だ。


「何ト言ウか、ややこシい関係ノ様だナ。」


レミリア、モーニ、絶がそう言っている間に紫の少女と政亜(若)、そして御堂もまた、話をしていた。


「もし、そこの「パチェ」さん。」


と言ったのは政亜(若)。

やはり薄笑いである。

本人は笑顔を取り繕えているつもりなのだろうが・・・。


「貴方にパチェと呼ぶ事を許したつもりは無いわ。・・・私はパチュリー・ノーレッジ。まあ少なくとも貴方よりは長く生きてる、魔女よ。取り敢えずその気持ち悪い薄ら笑いを辞めて頂戴。」

「これは失礼致しました。私は九条政亜と申します。まぁ、若輩の人間とでも名乗るべきでしょうかね。」


そう言われた政亜は真顔になり、改めて挨拶し直す。しかし敬語は辞めない。

パチュリーは相手をするのも面倒くさそうに言う。


「ハア。・・・それで、若輩者が何の用?」

「いえ、後学の為に此処の本を貸して頂きたいのです。わたくしどもが此処に滞在している間のみで構いません。」

「そう。・・・・・必ず返す。粗末に扱わない。何が起きても自己責任。これくらいかしらね?以上を守れるなら貸してあげるわ。」


一応は了承するパチュリー。

しかし全身から嫌だな、と言う雰囲気を醸し出している。

たが、それに構わず政亜(若)は早速近くの本を手に取り読み出す。


「あーあ、若が本を読み出すと手がつけられないってェのに。勘弁して下せぇ。」


そう、御堂は独り言ちた。



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