宴会の跡、炬燵の魔力、毒味猫。
連投
3
こめ
宴会が終わり、誰も片付けをする事無く帰った後の博麗神社。
ゴミを片手に、刃は深い溜息を吐いた。
「騒ぐのは良いがよ、片付けを手伝えってんだ・・・・・霊夢が宴会を嫌がる訳だ。それにしても・・・おー、寒。」
刃が黙々と作業を進めていると、頭上でスキマが開き、橙と千が落ちて来る。
キョロキョロと辺りを見回し、橙は固まっている刃に話しかけた。
「あ、刃しゃまですね!藍しゃまから『手伝ってやってくれ』っていわれて来ました!」
「そう言う訳だから手伝う・・・ねむ・・・手伝うけど、良いよね?」
困惑気味の刃は、訳もわからぬまま首を縦に振り、作業を再開した。
猫二匹もそれに続く。
千の『手伝う程度の能力』によって作業は迅速とはいかぬまでもそこそこ円滑に進んだ。
そして、博麗神社の建物の中では、霊夢が大きな炬燵に吸い込まれていた。
頭だけ炬燵の外に出した状態で、うつらうつらとしている霊夢。
その横では魔理沙がみかんを貪っている。
以前の霊夢ならば魔理沙を止めただろうが、刃によって博麗神社の家計は安定して来た。
つまり、多少みかんを食べられたぐらいでは文句を言う必要が無くなったのである。
五つ目のみかんを食べた魔理沙は、霊夢がケチでなくなった事に不気味さを感じ、思わず外へ逃げ出そうと障子を開けた。
が、予想外の寒さに、炬燵に逆戻りする。
これぞ炬燵の魔力である。
やがて霊夢と魔理沙は、眠りに落ちた。
境内から帰って来た刃。
寒さに震えながら橙と千を案内し、縁側へと草履を脱いで上がり、障子を開ける。
するとそこには、霊夢と魔理沙、二人があどけない寝顔で、炬燵で寝ていた。
思わず少女達の寝顔を暫し見つめてしまった刃は、背後から視線を感じて我に帰り、後ろに向き直って礼を告げた。
「(ヤベェ、完全に見惚れてた。)あ、あー、何だ。ありがとよ、二人共。片付けを手伝わねェ参加者は次からシメてやるとするか・・・あァ、何か食べて行くか?料理なら丁度宴会の残りがある。」
「ほんとですか?ありがとうございます!」
礼を言い、刃が冷蔵庫から出し、軽く炒めて温めた料理を頬張る橙。
「にゃ、おいし。」
千も小皿に盛られた、政亜作の異国の料理を口一杯に詰めて、咀嚼している。
しかし、彼はただ料理を楽しんでいるだけでは無い。橙が手を出そうとした料理を必ず少量、誰も気づかぬ様にして先に掠め取っているのだ。
所謂、毒味である。刃や霊夢に橙を毒殺する必要など微塵も無いどころか不利益に繋がる事は確実なのだが、この行為は最早、九条家の飼い猫、いや飼い化け猫として彼の習慣となっていたのである。
彼は最初は九条家において、ただの飼い猫だった。しかし彼は一度猫として死に、猫の妖怪となって再び九条家に飼われた。九条家の、自らを保護してくれる人々に多大な恩を感じていた彼はある日、『毒味』と言う存在について知ったのである。そして彼は主人として認めた九条家の人間や使用人達の食事を、必ず少量掠め取る習慣を身につけたのである。それが、500年程前の話。
加えて言えば、九条家は御堂からも見て取れる通り、ヤクザや暴力団とも付き合いがある。更に言えば、絶から見て取れる様に、人ならざる者達とも交流がある。
その様な無茶苦茶な家の人間には、多くは無くとも毒殺される危険があったのである。
その様な事情から、彼は今まで毒殺を十数回も防いでいる。
また毒にあたっても妖怪の彼にはあまり効かず、毒に気付いた彼は『猫』として料理をひっくり返す。その様な暮らしで、彼には毒味の習慣がついたのである。
「にゃ。」
500年の時を経て研ぎ澄まされた彼の早業に気がつく者は、この場には誰も居なかった。




