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義兄と妹、SOS.ite・erorr

やったぜ

やけくそ


やっぱり

やめとこ


やっぱり

やったろ

自室から図書館へ来た政亜は、図書館の扉の前でモーニと出会った。

政亜は会釈して扉に手を掛けるが、モーニから声が掛かる。


「政亜君、少し話がある。僕の部屋へ来てくれるかい?」

「・・・此処で話せない内容か?」


扉に手を掛けたまま怪訝そうに尋ねる政亜。

モーニは数秒考え、うなずいた。

政亜は溜息を吐きながら扉から手を離す。


「俺の部屋の方が近い。俺の部屋でも問題無いか?あるナラばそちらへ行くが。」

「まぁ、構わないよ。じゃあ行こうか。」

「ああ、悪いが途中で給湯室へ寄らせて貰う。文句は無いな?」

「頼んでる僕の立場で文句なんて無いさ。」


そうして二人は政亜の自室へ足を向けた。

そのまましばらく歩いていると、前方からフランと正人が歩いて来る。

気付いた正人は、声をあげた。


「あ、にーさん。」

「正人か。どうだ?」

「だいじょうぶだよ。」

「そうか、そのまま経過を見ていてくれ。」

「わかった。」

「それと、メイドは?」

「丸。もんだいないよ。」

「ふむ、そうか。」


その後もしばらく政亜が正人にフランの状態や此処での生活などについて聞いていた。


政亜と正人が話している横で、フランとモーニも話していた。二人は九条兄弟とは違い、随分と気まずそうだ。


「・・・フランちゃん・・・。」

「あ・・・お姉さまの・・・。」


沈黙が場を支配する。

いや、まぁ九条兄弟の声はしているが。


「「・・・・・あの」」

「「どうぞ」」

「「・・・・・・・」」


声が重なり、さらに譲った声も重なる。

再びの沈黙。

そして次に沈黙を破ったのは、モーニだった。


「・・・495年前、だったかな。あの時は済まなかった。僕の力だけでは君を幽閉するのが精一杯だった。見栄を張らずに他の人に手伝って貰えば、狂気の治療も出来たかも知れないのに。・・・ハハ、今思えば馬鹿な話さ。」


悔しそうな顔をして言うモーニ。

また、自嘲の笑みも浮かべている。

それに対してフランは意外な答えを返した。


「・・・ちがうの。わたしがほかの人をきずつけないようにしてくれたんでしょ?あなた、いや、お義兄にいさまは、悪くない、よ?」


義兄にいさま、と呼ばれしばし動きが止まるモーニ。


「・・・・・こんな僕を、『兄』と呼んでくれるのかい?僕のした事で495年間も苦しんだのに?」


彼は『兄』と呼ばれる事に、自身は相応しくないと考えている様だ。

しかし、フランは続ける。


「でも!・・・でも、そうじゃなかったらもっと苦しんでた、と、思う。それにまさとにも・・・会えたから。」


その返答に言葉を無くすモーニ。

しばらくして絞り出す様に言葉を紡ぐ。


「そうかい・・・君は、強いね。」


そして、沈黙。

九条兄弟の声が廊下に響く。

二人の間に流れる沈黙を破ったのは、今度はフランだった。


「ねぇ。」

「なんだい?」


何を言われるのか、と身構えるモーニ。

しかし、かけられた言葉は予想外だった。


「お義兄にいさまも、『フラン』って呼んで?」


『ダメ?』とばかりに、頭をこてん、と傾けながら放たれるその言葉。

それに対してモーニは。


「・・・・・そうかい。」


それだけ言って顔を伏せ、しばし考え込むモーニ。やがて、覚悟を決めたかの様に、顔を上げる。


「フラン、じゃ、また夕食でね?」


その言葉に、フランは顔を輝かせる。

その顔を見たモーニは、少し、笑みを浮かべた。


「うん!お義兄にいさま、またね!」


丁度九条兄弟の会話も終わった様だ。

再びモーニと政亜は歩き出す。


「僕が、許されるなんて、ね。」

「ふむ、世の中起きた事だけが全てだ。大人しくフランドールスカーレットの意思を受け取って置く事だな、モーニブラッド。」

「ハハ、違いないや。あ、モーニで良いよ。」

「了解した、モーニ。」


そうこう言っている内に、政亜の(暫定だが)自室に着いた。

部屋に入って、机の対面に腰掛ける二人。

政亜は給湯室で手に入れた珈琲を、モーニは同じく紅茶を、飲んで一息つく。


「さて、最初から本題に入らせて貰うよ、構わないね?」

「構わん。好きにしろ。」

「じゃ、好きにさせて貰おう。」


モーニは紅茶を一口啜る。


「君が引き受けてくれた狂気。僕に引き受けさせてくれないかな。」


その言葉に、目を見開き、こう告げる政亜。


「ほう・・・?何故だ?」


モーニは目を伏せ、声の調子を落として言う。


「君達は、こう言うと悪いけど部外者だろう?部外者に責任を任せ切り、と言うのも悪いからね。」


カチャ、と政亜がコーヒーカップをコーヒーソーサーに置く音が響く。


「『君がなるべく早く僕らを仲間だと思ってくれる事を祈ってるよ。』だったか。仲間では、無かったのか?」


その返しに虚を突かれた様子のモーニ。


「おっと、そうだね。・・・本当に、そうだね。君は部外者じゃなく仲間だ。でも、それとこれとは話が違う。かつて僕がやり切れなかった事をさせて貰えないか、と言ってるんだ。」


政亜は、モーニの目を覗き込む様にして、言葉を返す。


「では問うが。モーニ、お前は自分が狂気に耐え切れると思ってイルのか?俺より精神を抑える力で優れていると、また、俺より発狂(暴走)した時の危険性が低いと言えるか?」


その試す様な雰囲気に気圧けおされたモーニは、少し弱気になる。


「・・・確かに、そうだね。でも、それでは僕の気が収まらないんだ。」

「気が収まらないだと?感情より結果が優先されて然るべきだ。異論は認めん。」


モーニの言葉に間髪入れず、半ば被せる様にして政亜が言った。

モーニがたじたじで『あー』だとか『うー』だとか言っていると突如として、政亜が苦しみ出す。


「モーニ、それならbッ!?ぬ、ぐぐぐぐぐ・・・イツモより強イカ?ぐ、かくなる上ハ・・・・・モーニィッ!今スグ出て行け!コノ解決策ヲ!ぬぐ、見られる訳には、ぐ、イカン!」


狂気に侵されかけているその様子に、モーニは驚き、介抱しようと試みる。


「だ、大丈夫かい!?」

「大丈夫、ぐぅ!?デハ無い!出テ行ケ!」


叫ぶ政亜。しかし、限界は訪れる。


「ヌゥ!限界カ。〈Mata tu corazón〉」


急に、苦しんでいた政亜が大人しくなった。

心配するモーニは声を掛ける。


「えっと、政亜君?大丈夫かい?」

「大丈夫だ。」


直ぐに答えが返って来た事にモーニが安堵していると、政亜の様子がおかしくなる。


「ああ、出て行けと言ったが何も、何も・・・・・以下未設定。再起動します。」

「は?」


思わず疑問の声をあげるモーニ。

プライドの高い吸血鬼たる彼が無意識に、後退(ずさ)りしていた。

それ程までの、異質な気配。

構わず様子のおかしい政亜は話し続ける。


「erorr.erorr.対象ki51と対象knjw08を精神内部に発見。これより排除。排除中・・・排除成功。再起動します。10100100010110111100101・・・」


モーニが何が起こっているのか分からず身構えていると、政亜が一切の表情を無くした顔を、モーニに向ける。


「目撃者発見。対象を記録。識別コードm.b.― vampiro。既知の存在です。記録終了。対象を拘束。〈能力〉を使用します。」


途端、重力の方向が操られ、モーニは天井にはりつけにされる。


「ぐぅ、何を・・・。」

「Reiniciar, completar。再起動手順終了。」


そう言った政亜は、伏せていた顔を上げ、モーニを見た。


「・・・見てしまったか、モーニブラッド。本来なら目撃者は消すのだが、今回は非推奨行動だな。仕方あるまい。絶。」


政亜の影からズズズ、と絶が現れる。

その手に契約書を持って。


「絶、契約させろ。」

「へいへイ。全ク、悪魔使イの荒い奴メ。」


モーニの眼前に突き出される悪魔の契約書。

尚、モーニは未だ天井に磔のままだ。

契約書の文面はこうである。


一、他言無用

二、詮索無用

三、考察無用

四、以上の無視即ち警告の電流刑

五、警告無視にて転送:政亜の前

六、記憶消去


その契約書を突き付けられたモーニは絶を睨みつけるが、絶は意に介した様子も無い。

更に絶と政亜は呪文らしき物を唱え始める。


「合わセろ、若。」

「ああ。」


「コントラインディカスィオネス」

「Contraindicaciones」


「イノセンスィア。」

「Inocencia」


「クルパビィレ。」

「Culpable」


「ノンノスインポゥタ。」

「No nos importa」


「コントラト・デル・ディアブロゥ。」

「Contrato del diablo」


詠唱が完成すると同時に、モーニの名が自動的に契約書に書き込まれる。


「ぐ・・・?」


すると、モーニが『何故この状況に?』と言わんばかりの表情を浮かべた。

第六条の記憶消去が遂行されたのだろう。

いつの間にか絶は消え、政亜は椅子に座っている。重力も元通りだ。


「どうした、モーニブラッド。急に飛んで天井にぶつかるとは。」


モーニは頭を抱えながら、こう言う。


「く、あれ?君と何処まで話したっけ?」


政亜は溜息を一つ。


「モーニブラッド、お前が狂気を引き受けるメリットが何一つ無いと言う所までだ。」

「・・・そうだったかな?まぁいいや、確かにそうだった気がするよ。・・・何にせよ、そろそろ部屋へ帰らせて貰おうかな。君の説得はまたの機会にするよ。」

「ああ、それが良い。」


モーニが出て行き、キィ、とドアが閉まる。

そうしてモーニは自室へ戻った。

それと同時に、絶が再び現れる。


「絶。真面目に詠唱しているのか?なんだあの発音は。」

「効果ガ出れば良イだロ?そレにアれは俺の母語でハ無イからナ。」

「ふむ、それもそうか。」


そして政亜は、再び図書館へと赴く事は無く、自室で術式を弄り始めた。


「あー、なア、若。帰っテ良イか?」

「絶、まだ居たのか?」

「こノ野郎・・・。」

やややややー

やー

ややー


やったぜ

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