序章
小説家になろう初投稿かな?
さてこの文字を見ているそこの方、宜しくお願いします!
此処はとある屋敷。
昔から続く財閥の和風な大豪邸。
昼下がりの陽気の中、そこに響く幼い声。
「みどー!おーい、みどー!」
「はいはい、何ですかい、坊ちゃん。」
サングラスに革ジャケット、耳にピアス跡。
そんなガラの悪い男が、声に応えてギシギシと板張りの廊下を歩いて現れる。
「千がいなくなってる!どうしよ!」
「あー、先ずは落ち着いて下せぇ、坊ちゃん。千、と言うとあの猫ですかい?」
この『みどー』、随分とやくざな口調だ。
とても豪邸の使用人とは思えない。
「うん。みけねこの千。」
「ふむ、此処は若の知恵に頼りやしょう。若!若ー!」
「にーさーん!」
『みどー』が誰か人を呼び、男の子がそれに続ける。呼ばれているのは男の子の兄の様だ。
「煩いぞ、御堂。」
『みどー』と呼ばれたガラの悪い男の後ろから声がかかる。
その声の主は本を持ち、地味な服装の青年。
『若』は彼である様だ。
そして『みどー』は『御堂』らしい。
「若ぁ。居るんでしたら弟の相手ぐらいしたらどうです?と言っても無駄なんでしょうねぇ。」
「ああ。・・・それで、何の用だ。俺の読書を邪魔したんだ、相応の用事なんだろうな?まさか元からよく居なくなる動物である猫が居なくなった、などと言わないだろうな?」
「うっ。」
今から頼もうと思って居た事を切り捨てられ、呻く御堂。
「・・・。そんな雑事は絶にやらせろ。おい、絶。」
「えエ、俺かヨ。まったク、面倒ダな。居なクなったのはどコでだ?マサ。」
ガリガリと頭を掻きながら現れる、目付きの鋭い、高身長かつ細身の男。片言の日本語を話している。彼が『絶』である。
黒スーツと白い手袋が似合っている。
「ぼくは正人!まさじゃない!」
名前を省略された事に遺憾の意を示す男の子。
彼は正人という名の様だ。
「良いじゃネぇか、マサ。どこデ居なくなっタって?」
「うー、北のほう。」
不満ながらも、方角を示す正人。
「じゃあ行きやしょう。若も来て下せぇ。」
「・・・分かった。面倒だが、この場の責任者は俺だろうからな。」
「流石若!」
「ほざけ。」
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そして、一行が到着したのは北の塀の裏の空き地。其処には三毛猫―――面積の広い順に黒、灰、茶の毛を持つ―――が一匹。
「・・・普通に居るぞ。」
「ですねぇ、若。おーい、千、戻っておいでー。」
「もどっておいでー!」
「疾ク戻り来ルが良イ。」
三人で声を掛けるも、三人目に猫が怯える。
「フシャー!ニャ!」
威嚇し、その場に、文字通り消えた。
まるで最初から其処に居なかったかの様に。
「は?」「え?」「ほウ?」「興味深い。」
それぞれ、その不可思議な現象に反応する。
因みに、左から御堂、正人、絶、若である。
「どこ行ったどこ行ったどこ行ったー!」
叫びつつ空き地を高速で徘徊する御堂。
まるでギャグ漫画の様な動きだ。
「絶、魔法の痕跡は?」
「ふム、又違ウモノらしイぞ。」
魔法、などと言い出す言う二人。
魔法が使えるのだろうか?
「あれ?」
その時、正人が何かを見つける。
「何だ、正人。おい御堂、『戻っておいで?』だ。」
「猫扱いしないで下せぇ、若。」
漫才を繰り広げる彼らに構わず、正人はこう言った。
「なんかここ、とれそう!」
「「「は?」」」
三人の心が一つになった瞬間である。
しかし正人は問答無用でソレを取る。
「えい!」
瞬間、猛烈な風が吹く。
吹く先は空き地の中心。
其処にはさっきまで無かった穴が空中に。
「ヤバそウだな。」
「おい御堂。俺達吸い込まれてないか?」
「ですねぇ、若。・・・、逃げやしょう!」
逃げ出す三人。
・・・三人?
「千!いま行くからね!」
飛び込む者が一人。
「あっ!仕方ねぇ、ハラ括りやしょう。」
飛び込む者、二人目。
吸い込む力は更に増す。
「おイ、若。完全ニ目をつけられていル。」
「逃げる事は?」
「不可。」
「そうか。受け身が取れる様に飛び込むぞ。準備は良いか?」
「おう、行ケる。」
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そうして、四人が消えた後。
「おや。空いている筈は無いのだが。」
男が一人。
吸い込む力の干渉を受けていない様だ。
「まあ、考えども、詮方なし。綴じるとしようか。」
空中の穴が消える。
「では、如何様な者が入ったのか見に行こうか。」
そして男はそう言った。
2022/4/17 幼児→男の子 に変更しました