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第45話


 優一が急いで準備を始めている頃、高志は伊吹と合流していた。


「その顔は?」


 高志の顔は優一に殴られてボロボロだった。

「別に……関係ないだろ」


「……お嬢様に会う前に手当をさせていただきます、その状態ではお嬢様が心配しますので」


「わかったよ」


 伊吹はそう言いながら車のドアを開ける。

 高志はヒリヒリと痛む頬を抑えながら車に乗った。


『……お前が俺に嘘をつき続ける限り……一人で抱え込む限り……俺はお前を許さない!』


 優一から言われた言葉を思い出し、高志は目頭が熱くなるのを感じた。

 優一に殴られた頬を高志は自分の指で撫でる。


「いっ……本気で殴りやがって……」


(俺と紗弥の関係をどうでも良いと思ってる奴が、本気で怒るかよ……)


 高志はそんな事を考えながら、頬から手をどけた。

 

「それでは、出発します」


 伊吹の声と共に車は走り出した。

 もう戻れない……。

 高志はそんな事を考えながら、景色を見るのをやめ、スマホを操作する。

 スマホの写真フォルダーの中を見て紗弥と一緒に写っている写真にチェックを付けて行く。

 後は削除のボタンを押せば写真をすべて消えてしまう。

 しかし、高志は削除のボタンを押すことが出来なかった。





「話しは大体分かったな」


 優一は泉達と合流し、大体の事情を説明していた。

 優一の呼びかけで集まったのは、泉と土井、由美華、あとは赤西と朋香、そして繁村だった。


「まさか……高志がそんな……宮岡さんと別れるなんて……」


「嘘だろ……あいつ……最近様子がおかしかったよな? もしかしてそれと関係が?」


 泉と赤西は真剣そうな表情で高志の心配をしていた。

 しかし、女性陣は高志の心配など一切せずに怒りまくっていた。


「何が心配よ!! 勝手に冷たくなって紗弥の事を捨てて!! あんなクズ、放って置けば良いのよ!!」


「そうよ! これだから男は!!」


「おい、朋香。なんでそこで俺を見る」


 由美華と朋香は目を真っ赤にした紗弥に寄り添い、慰めながら優一にそう言う。

 赤西は朋香に文句を言い、ため息を吐く。


「言いたいことがあるなら高志を見つけてからだ、今はとりあえず探すのを手伝ってくれ」


「そんな事を言ってもなぁ……」


「なんだ泉、問題があるか?」


「あぁ、高志の居る場所の見当はついているのかい? 闇雲に探しても……」


「見当はついている、安心しろ」


「いや……それ以外にも一つ……」


「あぁ……あれか」


 優一は泉が指を指す方向を見る。


「ははは!! リア充が一組崩壊したぞぉ!! しかもクリスマスにだ! はははは!! ざまぁみぐぼれぁ!!」


「うるせぇ」


 声を上げて騒ぐ繁村を優一は殴り飛ばす。

 クリスマスのせいで少しテンションがおかしくなっている繁村に優一はため息を吐く。


「この馬鹿は俺が持って行く、泉と御門はここ、赤西と西城はここ、土井は俺についてきてくれ」


「優一さん! 雌犬の私はどうしたらいいでしょうか!」


「「「雌犬!?」」」


「お前は宮岡についててやれ、高志を見つけたら連絡する」


「はい! じゃなかった、わん!!」


「あとそのふざけた真似をやめないと、俺たちの関係は今日で終わりだ」


「ご、ごめんなさい~!! それだけは~!!」


 優一と芹那の会話に一同が驚く中、優一は冷静に指示を出して高志の捜索を開始する。

 高志が優一とバイトをする前にどこでバイトをしていたかを優一は市川からの情報で掴んでいた。

 今から各自に行って貰うのは、そのバイト先である秀清家に関係のある場所ばかりだった。


「じゃあ、各自頼むぞ」


「あぁ、任せてくれ」


「おう、俺も高志に行ってやりたいしな!」


 泉と由美華、赤西と朋香はそれぞれ指定の場所に向かっていった。

 

「さて……俺たちも行くぞ」


「おう、でも……この馬鹿はどうする?」


「あぁ……」


 土井が言っているのは、優一から殴り飛ばされて地面にいまだに倒れている繁村だった。

「大丈夫だ」


「え?」


 優一はそう言いながら、繁村を肩に乗せて抱え上げる。


「よし、行くぞ」


「それで!?」


「あぁ、今は時間がもったいない」


「優一……今日のお前……なんか変だぞ?」


「まぁ……ちょっとイライラしててな」


「そ、そうか……」


 いつもと雰囲気の違う優一に土井は若干恐怖を感じていた。

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