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第36話

「じゃあ俺はこれで……また来るよ」


「はい、それでは」


 高志は瑞稀にそう言うと、部屋を出て玄関ホールまで歩いて行く。


「お嬢様は?」


「元気そうでしたよ……」


「それは良かった」


「……じゃあ、帰るんで」


 高志が玄関ホールに向かうと、そこでは伊吹が無表情で待っていた。

 最近高志は伊吹と良く会うことが多くなっていた。

 それも瑞稀の父親が高志を監視するためだった。


「では、お送りします」


「要らないって言ってもついて来るんだろ……」


 高志は伊吹にそう言い、車の中に入る。

 移動中の車内、高志はスマホの写真をぼーっと眺めていた。

 伊吹と高志が話しをすることは無く、ただ高志は家に着くのを待っていた。


「……彼女に話しはしたのですか」


 しかし、今日は珍しく伊吹が高志の声を掛けてきた。


「……アンタに言う必要あるのか」


「はい、しっかり別れていただかないと」


「分かってるよ……」


 高志は若干声を荒げて伊吹に言う。

 伊吹は遠回しに言ってはいたが、簡単に言うと「いつになったら紗弥と別れるんだ?」

そう聞きたかったのだ。

 高志もその事は知っており、聞かれて瞬間に不機嫌になった。

 そんな会話をしているうちに、車は高志の自宅に到着する。


「着きました」


「それはどうも……」


 高志は車から下りて、真っ直ぐ自宅に入っていく。

 

「ただいま……」


「あらおかえり、最近遅いわね」


「……まぁ………」


 出迎えてくれた母親に高志は素っ気なく言葉を返し、二階の自室に戻って行く。

 そんな息子を見て、高志の母親はため息を吐く。


「はぁ……どうしたのかしら……」


「ん? 高志帰ってきたのか?」


「えぇ……でもなんだか様子がおかしいのよね……」


「ここ数日は紗弥ちゃんも家に来ないし……何かあったのかもな……」


 二階を見上げながら、高志の両親は自分の息子を心配していた。

 ここ数日様子がおかしい高志、何を聞いても大丈夫と言うばかりで、高志の両親は逆に心配だった。

 一方部屋に戻った高志は、自分の部屋に入りベッドに横になっていた。

 

「はぁ……」


「んにゃー」


 高志が帰ってくると、チャコは声を出して高志に近寄る。

 

「……飯か」


 チャコの頭を撫でながら、高志はチャコに餌をやり、チャコが餌を食べる様子をぼーっと見ていた。


「んにゃ」


「……ん……あぁ、食ったのか……」


 気がつくとチャコの皿は空になっていた。

 高志は足にしがみつくチャコを抱え、壁に背中を付けてもたれ掛かる。


「チャコ……俺はどうしたら良いと思う?」


「………にゃう」


「わからねーよな……俺もわからねーんだもん……」


 高志はそんな事を言いながら、ふと紗弥の家がある窓の方を見る。


「何やってるかな……」


 会いたい、会って話しがしたい。

 そう思っても、今の高志にはそれが許されない。

 

「とうとう……明日か……」


 今まで準備を重ねてきたクリスマス。

 しかし、その準備もすべて無駄になってしまった。

 高志は机の上に置かれた、紗弥へのプレゼントに視線を向ける。


「無駄になっちまったな……」


 そんな事を思いながら、高志は紗弥へのプレゼントをごみ箱に捨てた。





「優一さん! 優一さん!」


「なんだ?」


「明日はいよいよクリスマスですね!」


「あぁ……キリストの誕生日な」


「はぁ~いよいよ優一さんと私が一つになる日がイタい!!」


「変な事言ってんじゃねー」


「はぁ……はぁ……ゆ、優一さん突然何をするんですか……興奮するじゃないですか……」


「めんどくせ……」


 優一は自室でスマホを弄っていた。

 最近では良く芹那が家に来るため、こんな感じのやりとりが日常茶飯事だった。


「てか、いつまで居るんだよ……さっさと帰れ」


「もう、帰って欲しくないく・せ・に!」


「か・え・れ!」


「あう!」


 優一はそう言いながら、芹那のでこを押して芹那を後ろに倒す。

 しかし、そんな事をされても芹那は相変わらず笑顔だった。

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