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第18話



「それでは私はこれで」


「は、はい……」


 高志は伊吹に自宅の前まで来るまで送って貰った。

 瑞稀の父と話しをし、高志は改めて瑞稀の事が気になり始めていた。

 もう長くない、そう言われただけでなんだか複雑な気持ちになってしまう高志。

 明日辺りまた瑞稀の顔を見に行こうなんて事を高志は考えながら、家の中に入った。


「ただいまぁー」


「あ、帰ってきた!!」


「高志! お前誘拐されたんじゃなかったのか!?」


 家に帰って一番に出迎えたのは、高志の父ち母だった。

 最近は毎回紗弥が出迎えてくれていたのだが、今日は珍しく高志の両親だった。


「は? 誘拐?」


「紗弥ちゃんから聞いたのよ、なんか高級車に乗ったおじさんが高志を連れ去ったって……」


「あぁ……まぁ……そう思うよな」


 あんな感じで車に乗せられたら、誰だって何事かと思ってしまう。

 

「てか、心配してくれたんだ」


「「ううん、全然」」


「……息子に対して冷たすぎない?」


 珍しく心配してくれたかと思えば、全然そんな感じでは無い様子の両親に、高志は肩をがっくり落とす。


「私達はどうやってアンタを切り捨てようか考えてたのよ、身代金とかお父さんの安月給じゃ払えないし……」


「実の息子を見捨てるなよ!!」


「見捨てるにしても、どうすれば世間的に印象悪く無く見捨てられるかを考えたりな」


「世間体を気にする前に息子の身の安全を気にしろよ!!」


 高志がそんな事を両親に向かって話していると、二階から誰かが下りてくる音が聞こえる。


「高志!?」


 そう言って急いで一階に下りてきたのは、制服姿の紗弥だった。

 紗弥は高志を見ると、直ぐに側に寄り、心配そうに尋ねる。


「大丈夫? 怪我とかしてない?」


「うん、大丈夫だよ、ごめんね心配掛けて……」


「ううん、高志が無事で良かった……でもビックリしちゃって」


 紗弥だけが本気で自分の心配をしてくれている事に高志は感激する。

 

「ほらね言ったでしょ? うちの息子なんて誘拐しても仕方ないんだから、何かの勘違いだろうって」


「そうだよ紗弥ちゃん、うちの息子にそんな価値ないよ」


「もう良いから黙ってろよ」


 高志は両親にそう言い、紗弥と二人で二階の自室に上がっていく。


「あの人は誰だったの?」


「え? あ、あぁ……」


 高志は紗弥から尋ねられ、ドキッとする。

 なんと言ったものだろうかと高志は必死に考える。

 バイトの事は紗弥には秘密であり、もちろん先ほどの事を正直に話す訳にも行かない。

 

「えっと……ちょっとした知り合いでさ……なんか急にお茶しようって……」


「お茶に誘うのにあんな強引な誘い方をするの?」


「え、えっと……そ、そう言う人なんだよ……」


「ふぅーん」


「ど、どうしたんだ? そんな疑いの視線を……」


「別に……なんでも無い」


 紗弥は内心では高志の話しを怪しんでいた。

 あんな高級そうな車に乗っている人と高志が、何故知り合いなのか、そこからして紗弥は何か引っかかっていた。


「ねぇ、高志」


「ん? どうした?」


「今日さ……高志の部屋に泊まって良い?」


「え!? きゅ、急にどうしたんだ?」


 突然の紗弥の頼みに高志は少し驚いた。

 付き合っているとはいえ、どちらかの部屋に泊まるなんてことはいままでしたことが無い。


「高志のお父さんとお母さんは良いって」


「ど、どうかしたのか? 急に珍しい……」


「今日はもっと高志と居たいの……ダメ?」


「だ、ダメじゃ無いけど……」


 高志は少し不安だった。

 部屋に泊まると言うことは、一緒に寝ると言うことだ。

 高志は自分の理性を抑えられるか不安だった。

 紗弥も紗弥で最近高志と一緒に居る時間が減っている事に焦りを感じており、高志にこんな頼みをしたのだった。

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