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第11話

「クリスマスねぇ~」


 大石はカップラーメンのゴミを片付けながら、過去のクリスマスを思い出す。


「昔はクリスマスって言うと一大イベントだったもんなぁ……」


(小学生の頃はプレゼントが楽しみで……中学高校は彼女と一緒に過ごしたくて頑張って……この年になるとなぁ……)


「クリスマスなんてなぁ……」


 大石はそんな事を思いながら、インスタントコーヒーをカップの注ぐ。


「大石先生」


「ん、どうかしましたか松島先生?」


 科学の松島先生に声を掛けられ、大石は松島先生の方を振り向く。

 松島先生はメガネを掛けた40代始めの先生で、大石とは仲が良い。


「いや、今年のクリスマスは何をしているのかと思いまして」


「あぁ……夕方は教え子達の付き添いで学校ですから……まぁ、特に何もしないと思いますね」


「そうなんですか、私は子供のプレゼントを聞き出すのが大変で……」


「松島先生のところのお子さんは、どちらも小学生でしたっけ?」


「えぇ、二年と四年です」


「まだサンタさんを信じてる年代ですね」


「大石先生は保永先生とクリスマスを過ごすと思ってましたが?」


 そう言われた瞬間、大石は思わずコーヒーを噴き出した。


「ぶふっ!! な、なんで保永先生が出て来るんですか!!」


「あれ? 付き合ってる訳ではないんですか?」


「そんな訳ないでしょ……保永先生はお若いですし」


「そうですか? 今時歳の差なんて珍しくありませんし、うちの嫁さんも四個上ですよ」


「そ、そうは言いましても……」


 保永先生との事を言われ、大石は顔を赤く染めて考える。

 一緒に飯を食ったり、祭りに行ったり、楽しくなかったと言えば嘘になる。

 しかし、保永先生と自分が果たして釣り合うのかと考えた時、どうしても大石は釣り合わないと思えてしまう。


「大石先生はもっと自分に自信を持ったほうが良いと思いますよ?」


「自信……ですか?」


「そうですよ、まぁ外野が言うことでは無いんでしょうが……そろそろハッキリしてあげないと可愛そうですよ?」


「……ハッキリですか」


「気がついてるんでしょ? 保永先生の気持ち」


「………」


 そう言われた大石はため息を吐き、頭に手を当てて松島先生を連れて場所を移す。


「はぁ……自分も分かっては居たんですよ……自分が好かれていることには……」


 休憩室で大石は松島先生に自分の本音を話す。

 こんな事を職場で話す事になるとは、大石は夢にも思わなかった。


「まぁ、相手は人気者の保永先生ですからね……生徒の間では保健室の天使なんて呼ばれてますからね」


「なんで私なんでしょうね……」


「きっと保永先生は大石先生の優しさに引かれたのではないでしょうかねぇ……」


「自分では良く分かりませんよ」


「クリスマスは良い機会だと思いますよ?」


「クリスマス……ですか……」


 そんな話しを松島先生とした後、大石は自分の席に戻る。

 確かに松島先生の言うとおりだと大石は思っていた。 流石にあれだけ迫られていれば大石も嫌でも気がついていた。

 

「はぁ……まぁ、松島先生の言うとおりか。そうと決まれば……」


 大石はそう言って立ち上がると、保健室に向かい始めた。

 

「保永先生、いますか?」


「はい、どうしたんですか大石先生?」


「いえ、ちょっと用事が……」


「今日は大丈夫な日ですよ……」


「頬を赤らめながら何を……そうじゃなくてですね……」


「えぇ!? そんな外でなんて!!」


「あの……妄想の世界から戻って来てもらえますか?」


 大石はため息を吐きつつ話しを続ける。


「保永先生、クリスマスはお暇ですか?」


「え、え!? も、もちろん暇です!!」


「そうですか、良ければ食事でもどうですか?」


「は、はい! 是非!!」


「じゃあ、詳しいことは追って連絡します」


「は、はい!!」


 大石はそう言うと保健室を後にした。

 そして大石が保健室を後にした後、少ししてまた一人保健室に入っていく。


「保永先生上手くいきました?」


「松島先生! バッチリです! 思った通り私を誘いにきました!」


「それは良かった、じゃあ約束の……」


「はい! 限定おもちゃの予約券です」


「はぁ~よかった! これでクリスマスはバッチリですよ!」


「こっちもバッチリです! 本当にありがとうございます」


「大石先生は結構強引に行かないとダメですよ? それじゃあクリスマスは頑張って!」


「はい!」


 そう言って松島先生は保健室を後にする。

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