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人類が増えすぎたので減らしてほしいと頼まれました【本編完結済】  作者: にゃんきち
人類が増えすぎたので減らして欲しいと頼まれました

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第五十七話:ミイロタテハの青い罠


 コカノキの葉にはコカインを含む11種類のアルカロイドが含まれており、これらの多くは生物に対し毒として作用する。

 そのためコカノキは虫による食害がほとんどない。また、コカノキの葉を食べる虫がいたとしたら、その虫もまた外敵から襲われる確率は低くなる。

 コカノキの毒素を体に貯めた虫を喰った外敵は、死ぬか、二度とその虫を喰わないかのどちらかになるからだ。


 コカノキの毒を克服し、その葉を食べる虫―― ベアタミイロタテハの幼虫はその数少ない種の一例である。


 影山とデルフィノが三国国境地帯を去ったまさにその日、3万個超のベアタミイロタテハの卵の半分以上が孵化し、幼虫となって眼の前にあるコカノキの葉を食い荒らし始めた。

 翌日には更に残りが孵化し、同じ様に目の前にあった餌の山にかじりついた。孵化しない卵ももちろんあったが、それは全体の1割にも満たなかった。影山の素人なりの努力が実を結んだということだ。


 現地でコカノキを育てる者達はまだ雨の多いこの時期に水撒きをするわけでもなく、害虫のほとんどつかないコカノキに農薬を撒くこともない。そもそも葉からコカインを抽出するため農薬その他はご法度だ。彼らの仕事と言えば水まわりと下草の処理に集約されている。


 こんな様々な必然が重なったため、彼らのコカノキ畑の葉は気がつけば喰い荒らされ放題になっていた。害虫による食害が発覚しても、現地の人々は何もしなかったし何も出来なかった。食害と戦った経験がなかったためだ。彼等は根拠のないポジティブさを発揮し、「そんな虫はいずれコカノキの毒にやられてぽとりと落ちるだろうよ」と思い込んでいた。


 しょうがない。事実、これまではそうだったのだから。


 コロンビア政府は21世紀初頭、ペルー政府はそれ以前からコカノキを喰う「スペシャリスト昆虫」であるエローリア・ノイエッシという蛾を放つことでコカノキを撲滅できないかを何度か検討したことがあるが、生物環境の人的破壊への懸念を理由に断念してきた。


 だが影山は今回の計画ではそんな事情や懸念を尊重したりしない。


 もともとアマゾンを無軌道に開拓している段階でコカノキ畑は元来の生態系から逸脱している。コカノキ畑の保有者が自然環境を守れなどと、どの面下げて言えようか。

 また、彼のポリシーとして「巻き添えは致し方ない」のである。それに、周辺のコカノキを喰い尽くせばベアタミイロタテハはそれ以上繁殖できなくなる。つまり、現地農民がコカノキさえ植えなければ地域の生物環境が元に戻ることは約束されているのだ。


 そして5週間後、ベアタミイロタテハの幼虫がほど良く育ち、コカノキ畑の持ち主達がこの小さな芋虫達の食害対策にようやく重い腰を上げだした頃、畑の近くに巣を作ったオオスズメバチ達もまた動き出した。


 オオスズメバチはベアタミイロタテハの幼虫に毒があると見るや、捕食対象を他の虫や小動物に移した。アマゾンは豊かで広大だ。餌は他にいくらでも見つけることができる。

 オオスズメバチ達も、巣を繁栄させるのにわざわざ毒入りの芋虫を襲う必要はなかったのだ。


 順調に仲間を増やし続けるオオスズメバチの事など現地農民は何も知らなかった。迂闊に藪に入り込み、彼等のテリトリーを犯した者はこの空飛ぶ猛獣達の体を張った大歓迎から逃げられない。当然の如く多くの農夫が刺され、そのうちの何人かはアナフィラキシーショックで死亡した。


 藪の中でカチカチと鳴る顎の音。そしてブゥンという太い羽音。どちらかが聞こえたら一目散に逃げなくては命が危ない。

 コカノキ畑に原住民が近づくことさえ出来なくなるのにそう時間はかからなかった。


 こうしてオオスズメバチを護衛にベアタミイロタテハ達は順調に育った。通常、蝶類の卵は100個生まれても成虫になれるのは1、2匹だ。しかしこの地域では実に卵100個あたり12匹が成虫になれた。

 五対一の割合で生存するメスが成虫になり700個の卵を生むとなると、次の世代のための卵は42万個が生まれることになる。

 季節感の乏しい熱帯で1年で3世代交代すると仮定すると3世代目の卵の数は8232万個。それは近隣のコカイン畑の壊滅を予想するのに十分な数だ。


 成虫になったベアタミイロタテハは強い。牙や針があるわけではないが突出しているのはその飛翔能力で、ちょっとした鳥と同じくらいのスピードで空を舞う。そのため、彼らは大抵の捕食者達からはゆうゆうと逃げ切ることができるのだ。


 鳥などの運動性能に優れた外敵に襲われた時は、コカノキ畑に逃げ込めば頼もしいオオスズメバチ達が撃退してくれる。餌といい頼もしい護衛達の存在といい、ベアタミイロタテハ達にとってはこの三国国境地帯は理想郷と言っても良い生育環境だった。


 それはオオスズメバチにとっても同様だ。日本の四季に合わせて世代交代をするオオスズメバチも、ここでは冬の備えもしなくて良いし、女王の交代を急ぐこともない。

 熱帯のスズメバチが数十匹もの女王蜂を持つ数百万匹のコロニーを作った例も報告されている。彼等は餌が豊富で冬の来ないこの地で大いに繁栄を謳歌した。


 結果、この三国国境地帯ではコカノキは見るも無残に食い散らかされ、オオスズメバチがブンブン飛び交い、大喜びしているのは世界中から集まった蝶の収集家だけという状況になったのである。


 一方で困ったのはコカノキからの収入に頼っていたここの住民達だ。年に3回の葉の収穫をする筈のコカノキ畑はこの年結局1度しか収穫できず、地域の出荷量の合計は前年の3割にも届かなかった。



 それは世界のコカイン市場のバランスを大きく崩すことになったのである。

 

★★★★★


 この年、世界のコカイン産出量が大きく減ったために多くの血が流れた。


 まず、奥アマゾンの三国国境地帯のコカノキ栽培の元締め達が仲買のマフィア達に約束不履行を責められ、蜂の巣になった後、アマゾン川のピラニア達の食卓に並んだ。さらに仲買達もまた、大手の流通マフィア達への言い訳が立たず、相当数が自らの血と首で責任を取らされた。


 どうにか収穫できたコカから栽培の元締め達が作ったコカペーストも、力の強い仲買達がカネと暴力にモノを言わせて持って行ってしまう。

 中小の仲買マフィア達は生き残りをかけてコロンビア北部の栽培地帯からコカペーストを調達しようとしたが、今度はコカペーストの利権の取り合いで中小の仲買マフィア同士の抗争が勃発した。


 仲買マフィアはコカペーストから純度の高いコカインを精製するための、ラボラトリオと呼ばれる施設を持たないことが多い。彼等はさらに上位の流通マフィアに集めてきたペーストをお買い上げ頂いて、お客様が精製したコカインをいくらか払い下げてもらったものを各自国内で小売に卸して換金する。これが仲買の利益の源泉だ。


 しかしこの年は上位の流通網もやりくりに必死だった。それなりにあった在庫は国外の得意先の為になんとか確保できたとしても、その年入荷する筈だったコカインの量がまるで需要に追いついていないのだ。


 この状況を凌ぐ手段として上位流通網は精製したコカインを丸抱えして、今までいくらか仲買達に戻してやっていたコカインの量をかなり抑えてしまった。仲買達はペーストの代金としてそこそこのカネは払ってもらえたものの、最も旨味の濃い国内小売への卸業が成り立たなくなったのである。


 小売へ渡すコカインがない仲買はカネが入らないというだけでまだ良かったかもしれない。コカインの供給量の減少はこの地域の「熱心な愛好家」達にとってはまさに死活問題だった。コカインの離脱症状は緩やかな自殺を意味する上に、その症状を和らげるような代替手段が無いのだ。


 薬物中毒というのは厄介で、ニコチンにはニコチンの、アルコールにはアルコールの、コカインにはコカインの中毒があり、それぞれ独立している。タバコが吸いたい時に酒を飲んでも気は紛れるかもしれないが、離脱症状が消えるわけではないのである。


 市場への供給量が戻らない日が長引くと、中南米の都市のあちこちで銃撃戦が行われるようになった。持たざる者が持つ者の目星を適当につけて銃撃し、持たざる者同士がお互いを持っていると勘違いしては奪い合い殺し合いを繰り返したのだ。


 あまりの犯罪件数の激増ぶりに手を焼いた警察から、非公式にではあるがコカインの流通量を増やせないかと地元マフィアに依頼が飛ぶことさえあったと言う。

 もちろん、地元マフィアとて在庫があればそうしたかったに違いない。しかし残念なことに彼等の倉庫にも「お任せ下さい」と言える量はなかったのだ。


 こうして、ただでさえ頻繁に起こっていた中南米各都市部の銃撃戦は日に日にその数を増し、被害者の数もそれに合わせて増えていった。


 こうなると、コカインの大消費地である米国も無関係ではいられない。


 品薄に起因するコカインの異常な価格高騰が東海岸の学生や南部の貧民に迫ると、大都市のあちこちで機能麻痺が起こった。離脱症状を起こしたコカイン常習者による大量の自殺が原因だ。


 一方で慣れない代替薬物を服用した薬物中毒者らによる奇行・犯罪が溢れ、都市部の治安は一気に悪化した。

 治安の悪化は多くの凶悪犯罪を引き起こし、都市を内部から破壊して行く。こうなるとコカインの流通量が戻ればどうにかなるという問題でもなくなってしまう。


 都市の暗部ではマフィア同士の抗争が勃発し、苛烈な生存競争が繰り広げられた。顧客と在庫の双方が急激に減っていく状況が各地のコカイン流通マフィアの不安と疑心暗鬼を招き、それまで存在していた緩やかな共存関係を互いに打ち切った結果だ。


 一方でボリビアは好景気に沸いた。ボリビアでは嗜好品として栽培されていたコカノキの栽培拡大法案が2017年に通り、新たに植樹されたコカノキの収穫がようやく軌道に乗ったところだった。

 国内向けの嗜好品として根強い人気を持ったコカの葉だったが、一部業者がその換金性に目をつけ、困り果てた仲買マフィアに横流しを始めていたのだ。


 ボリビアの農業流通が暗い闇に徐々に取り込まれていった事実を、当の農民達は何も知らされていない。彼等は思いもかけず高く売れたコカの葉に感謝をしながら、今までより少しだけ良い生活を楽しんだ。


 結果的に見れば、影山がコカノキ畑に放ったカイコの卵3万個は、孵化してからわずか一年でその10倍以上の死者と13倍の負傷者、4倍の逮捕者を出したのだが、その正確な内訳を、影山が知ることはなかった。


 なお、この被害者数の中に、アマゾン奥に巨大なコロニーを作ったオオスズメバチの大群による被害は入っていない。


★★★★★


 相田は悩んでいた。影山が米国に出発する前に面談をし、影山が出資を薦めたコンテンツプロデューサー達がどいつもこいつもポンコツだったのだ。


 さすがコンテンツ屋を名乗るだけあって、企画書の出来は大したものだった。その道のプロが描いたであろう魅力的なキャラクターのイラストがあちこちに散りばめられ、時にはパイロットフィルムのようなものまで披露しながらのプレゼンテーションは観た者を唸らせるに十分な出来だ。

 彼等はこの手法で各方面を説得し、製作委員会だの何だのという権益団体を組織してカネを集め、何度かは作品を作れたのだろう。


 だが、彼等が実際に作った作品の肝心の中身はそれほど大したものではなく、メディアの販売やグッズ展開で得られた収益は雀の涙ほどに過ぎなかった。


 地雷感を感じつつも影山の言う通りに彼等にいくらか金を渡してみたが、どこかで見たような二番煎じのコンテンツの企画しか出てこない。もちろん相田はコンテンツ制作の素人だが、ぱっと見て「さすが食い詰めるだけのことはあるなぁ」という感じだった。


 小さい頃からゲームが大好きで、ゲームが趣味で、ゲーム会社に就職したゲーム企画屋の作るゲームは、大抵は人気ゲームの焼き直しになることが多い。


 ゆえにそういう企画屋の作るゲームはパッケージとグラフィックだけがやたらに美麗に描かれているがプレイしてみると何も新鮮さを感じない。


 彼等は殆どの場合、大人気ゲームと同じフレームワークを持って来て、そこに技や武器やキャラクターを増やしたり、人気声優を登用したりといったことしか出来ないからだ。


 もちろんそのような貧相な才能にも出番はある。続編やサイドストーリーを作るにはもってこいだし、そのような企画は経営者達の承認も得やすい。売上の予想が立てやすいし人材育成にも使えるからだ。


 しかし、それで2,3本作って自分の才能に勘違いして独立なんかした日には待っているのは悲劇しかない。誰かの才能に寄生してバリエーション作りをするしか能がないのに、その寄生先と手を切ってしまっては、あとは干からびるしか無いからだ。


 このプロデューサー達の企画書はまさにそんな感じだった。自分の才能のなさに気付かず、どこかで見たものの劣化コピーを作り続けたがっている。一発当てるという本来のコンテンツ屋の気概からは程遠いのではないかと相田は感じていた。


 影山はどうしてこんな連中に金を出してやれと言ったのだろう。さっぱり意味が分からない。何かこんな連中でもうまく生きるところがあるのだろうか。


 南米から帰ってきた影山が米国の研究所勤務に戻る前に1、2週間だけ日本のオフィスに滞在したのでその時に聞いてみたが、その答えは非常に曖昧なものだった。


「いいか?彼等がプロデューサーとか監督とか、そういうものに上り詰めた背景を考えるんだ。コンテンツが粗製乱造された時期に、そこそこ上手く立ち回った連中なんだろう? ということは、流行りに乗っかるとか、二番煎じとかは上手な筈なんだよ。

 じゃあ、二番煎じが通用する市場を探して、そこで勝負させればいい。例えばどこか別の国だ。日本では使い古されたアイデアであっても、海外ではまだ通用するかもしれない。

 日本のテレビ番組を見てごらん。海外でパクられまくってるだろう。日本のコンテンツのフレームワーク創造力というのは大したものなんだ。それをパクられるのではなく意図的にこちらから打って出てやることを考えるんだ」


「つまり、どういうことなんですか?」


「うーん。例えばだな……日本は結構最近までお見合い結婚ってあっただろう?」


「ああ、ありましたね」


「相田はお見合い結婚したい?」


「いや、私は可能な限り恋愛結婚したいです」


「な? 相田の中では恋愛結婚の方がお見合い結婚に対して優先されてるんだ。でも世界を見渡せば、親が結婚相手を決めてしまう国だって数多くある。日本がかつてそうだったようにね。家柄や財産、カーストなんかのレベルを合わせて結婚することが本人達の幸せに繋がると、親も子も納得しているからそういう風習は存続してるわけだ。じゃあ、相田の『恋愛結婚の方がいい』っていう概念はどこで植え付けられたんだろう?」


「それは……小さい頃から聞いてきた音楽やTV番組や物語で……」


「そう。多種多様なコンテンツによる恋愛至上主義の執拗な刷り込みがあったと考えても良いんじゃないかな? そして、その路線はお見合いによる男女の出会いに比べたらウケたんだよ。だから日本人のお見合いの風習をひっくり返してしまえたんだ。『本当に好きな人と結ばれる……』みたいな歌詞やストーリーがね」


「……言いたいことがさっぱり解りません」


「うーん……今は例え話をしてるんだよ? 他国でのコンテンツ制作についてのね?

 親が子供の結婚相手を決める国で、恋愛至上主義の音楽やドラマや映画、それも質の良いものをたっぷりと供給してやるのはどうだろう? 最初はまるでサブカルのように扱われるだろうけれど、その魅力には抗し難い筈だ。ネタは日本でウケたものを順番に、現代風にオマージュしていけばいいんじゃないか? 最初は悲劇の駆け落ちものでさ。無人の荒野を行くような状況にならないだろうか」


「いや、そう言った国にだってハリウッド映画やら何やらが入っていってますよ? 恋愛バンザイみたいなものだって……」


「ハリウッド映画だと、どこか他所の国のお話ってことで一歩引いて見てしまうことがあるんじゃないだろうか? その国独自の事情をちゃんと盛り込むことも、意識改革を起こすほどの大ヒット作品の制作のためには大事だと思うよ」


「えー……そんなものですかねえ……」


「とりあえず、日本でゴミみたいなコンテンツを量産してるよりは一発当てる要素はあるんじゃないか? インドで映画でも撮らせてみればいいじゃん。凄く面白くてわかりやすい悲劇の駆け落ちモノを何本も。楽曲とかも。結婚なんて好きな相手同士でいいじゃん。親同士の決めた相手やカーストなんて知らなーい。自由恋愛バンザーイって感じで」


「えー……殺されたり燃やされたりしそうですよ……それは……」


「まあ、俺の考えがベストとは言えないけどさ。あ、オマージュ元には敬意を払うようにちゃんと言っとくんだぞ?」


「えー……決定ですか?」


「やりたくなきゃやらんでもいいよ。あくまで例え話だから」


「分かりました。ちょっとこのアイデアをポンコツ達に話してみます」


 この後、相田はインド滞在者へのインタビューやJICA(国際協力機構)などの公的機関にそれとなくこのアイデアの相談をしてみたが、あまり良い感触は得られなかった。「日本文化の紹介はいいけど、文化侵略は駄目」とまで言われてはどうしようもない。


「ここまで否定されるということは、逆に今まで誰もやれなかったことなんじゃないすかね?」


 JICAの返答に、相田は逆に奮起したようだ。


「んー。じゃあまずはネット配信でやってみますかぁ……現地に会社作ると焼き討ちにあうかもしれないから日本から配信する形でやってみましょう」


「それがいいだろうな。それと、コンテンツは何処まで行ってもヒットの計算なんかできないらしいから、粘り強くやるしかないぞ」


「えー……」


「おい、言っとくが全部お前が抱え込むなよ? お前に責任取れなんて誰も言わないぞ? 最終的にやるやらんはポンコツ達が決めることだ。 責任も全部連中にある。お前じゃない。あと、失敗には寛容にな。お前の自動投資システムだって最初は100億も赤字出したんだし」


「あれは強化学習期間に必要なコストだったって何度も説明したじゃないですか! 開始3ヶ月のスコアだけ見てあげつらわれるのは心外です!」


 実際、波に乗り始めた相田の自動投資運用システムは赤字を完全にひっくり返し、その後は数十億円の利益を上げている。


「はは、悪かった。まあなんだ、ポンコツ達にも少しは強化学習の時間と費用をあげてくれってことだ」


「……しょうがないですねえ」


 何度か考えた後、相田はインド市場向けコンテンツ制作と配信事業について、自由恋愛をテーマにするなら制作資金と事業資金を投資・提供する旨、ポンコツプロデューサー達に説明を行った。やらないならそれでいい。それは彼等の自由だ。相田は彼等にできるだけ丁寧にリスクを伝え、覚悟を求めた。


 だがポンコツプロデューサーは皆、日本市場へのこだわりが強い。案の定、彼等は相田の提案に難色を示した。言語の不安が、文化の違いがと彼等は異口同音に出来ない理由・やらない理由を並べ立てたのである。


 しかし、相田は眉一つ動かさなかった。高校を卒業してすぐに借金を背負い、身寄りのない米国へ留学した相田にとってポンコツ共の泣き言は何一つ共感できなかったのだ。


「不満を言い続ければいつか理想のネギを背負った鴨がやって来ると思ってるならどうぞ他をお頼り下さい。お帰りはあちらです」


 相田のこの言葉に腹をくくり、無謀かもしれないプロジェクトに挑戦の意志を示したプロデューサーは3人。彼等はプロジェクトのロゴマークに好んでネギの意匠を採用したという。




卵の数の計算間違ってました……(汗) @ 2022/10/22

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― 新着の感想 ―
[良い点] 影山は確実にゴミどもを始末してますな。
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