第三十八話:クリップボード
さて、ナイジェリアのゴールドラッシュで一万三千人ほど間引いてからもう1年になる。そろそろ別の手口を考えて今年のノルマを果たさなければならない。
そういえばラゴスで俺が住んでいた辺りは例の核テロで大きな被害があったそうだ。不謹慎かもしれないが、早めにあの街から引き上げてきてよかったと心の底から感じている。いくらチート能力があっても、俺はあんな地獄で生き残る自信はない。
ルーカスやシャーロットもアメリカにいて無事。ライラさんも仕事で偶然アメリカにいて無事だったそうだ。大場さんやデルフィノさん、ジャゴダさんは無事だろうか。
ヤバ地区も例のマイニングファーム建屋も比較的海岸線からは離れているから高波の直撃は避けられただろうがその後の内戦や伝染病が心配だ。
多くの人の命を間引いておきながら一方で知り合いの命を心配するというのはなんとも傲慢な話ではある。いったい俺は何様なのかと。
それはさておき、次のアクションだ。
9月の上旬、会社から帰る時に俺は市川さんに話しかけた。
「市川さん、俺ちょっと外国回ってくるわ」
「あら、どうしたの急に? それに一人で? まだまだ外国は物騒よ?」
「そこを心配されるとは思わなかったな。実はその物騒なところに行こうとしてたんだよ。一人でね」
「危なっかしいわね……しょうがない、私も付いて行くわ」
「うーん、市川さんだったらいいか。いろいろバレてるしな」
「じゃあ、やっぱりアレ関係なの?」
「うん」
「で、どこへ行くの?」
「あちこちだよ。まずは上海かな……それからソウル、マニラ……東南アジアをぐるっと回って、ちょっとインドネシアにも寄って、それからデリーくらいまで行って帰って来よう」
「凄いわね。1か月くらいかかりそう」
「それくらいかな」
◆◆◆◆◆
それから5日、長旅の準備を終えた俺と市川さんは上海に向かうべく羽田空港に向かっていた。
「いやあ、凄い荷物だな」
「あら、女性の旅ってのはこういうものよ。覚えといて」
市川さんの荷物は空港送迎用の大型ハイヤーのトランクの大半を食い潰していたのだが、その荷物の大半が服と化粧品だというから驚くしかない。噂には聞いていたが、気合の入った女性の旅行というのはこれほどまでに荷物が必要なものなのか。
羽田に到着し、チェックインカウンターで荷物を預けると俺達はビジネスラウンジに向かった。大荷物の運搬から解放された俺が空港の絨毯の上を軽やかに歩いている一方で、市川さんの表情は怪訝そうだ。
「影山さん、なんでそんなに荷物少ないのよ? 一か月の海外旅行なのにコロコロ1個っておかしくない?」
「うーん、それはね……ちょっと付いて来てもらえるかな」
俺はラウンジに入ると、中のプライベートオフィスを借りた。飛行機に乗り込むまでの間、静かに仕事をするための仕事部屋みたいな施設だ。
金持ち向けのラウンジにはこの手の設備が充実している。こういった設備を使いたいためだけに日頃航空会社のクレジットカードしか使わない社会人もいるらしい。
俺は借りたオフィスの周囲に人通りがないことを確認し、市川さんと一緒に中に入ると、誰も入って来ないように鍵をかけた。
「何……?」
市川さんが怯えている。相手が俺でなければ、もしくはテレビや映画ならここは市川さんは犠牲者になるパターンだ。「水曜ワイド・夏の羽田空港ラウンジ殺人事件・老刑事のカン・15年前に止まった時計が動き出す。そして事件は迷宮へ……」になるのか、もっと扇情的なエロタイトルになるのかは知らんが……。
俺は後ずさりする市川さんをじっと見つめ、レグエディットの位置情報を変更するメソッドの一つ、「ディゾルブ」を発動した。
「あ……」
市川さんの姿は徐々に消えて、5秒後には完全にプライベートオフィスの部屋から姿を消した。移動目標地点は俺の自宅のリビングだ。続けて俺も自分に向けて「ディゾルブ」を実行。自宅の寝室へと移動した。目標地点を変えた理由は「重なったら怖いから」だ。
「え、これって……え? え?」
「そろそろ説明も要らないと思うが、俺の7つの超能力の一つ、瞬間移動というやつだ」
俺は寝室からリビングに移動して、リビングの真ん中に突っ立って混乱している市川さんに声をかけた。
「7つもあるの? ええと、若返り、物質変換、テレキネシス、確率操作、今回のテレポート……あと2つね。何があるの? 言いなさい!」
市川さんは混乱しすぎたのか、逆に冷静に俺の能力を把握しようとしている。興味深い。
「いや、適当に7つって言いました。ごめんなさい」
瞬間移動は俺が新たに発見したレグエディットの使い方の一つだ。
着想を得たのは先日の宝石の結晶構造のコピペからだった。俺は自分の脳のどこかにあるかもしれない「クリップボード」について考えを巡らせ、実験を重ねた結果、ディゾルブによる空間跳躍ができるのではないかという仮説を立て、それを実証したのだ。
今までは
1.石のレジストリを見る
2.石の組成を変える
3.終了
とか、
1.氷のレジストリを見る
2.氷の座標を書き換える
3.終了
といった、シングルアクションだったがコピペはそれとは違う。
1.ダイヤモンドのレジストリを見る
2.ダイヤモンドの組成を「どこか」に覚えておく
3.ダイヤモンド側終了
4.石のレジストリを見る
5.石の組成と「どこか」に置いておいたダイヤモンドの組成を入れ替える
6.石側終了
というダブルアクション。そしてシングルアクションにはなかった「どこか」という存在があるのだ。この「どこか」を俺は「クリップボード」と呼ぶことにした。
ちなみに、名付けのセンスについてはそしりは受けても抗議は受け付けない。
このクリップボードの寿命にも俺は興味を持った。なので自宅の庭にある小さな玉石に、五分ごとにピンクダイヤモンドの組成を転写してみたがピンクダイヤモンドの組成データはいつまで経ってもクリップボードから消えない。
しかし、この組成データは「忘れたい」と思えばすぐに消えた。クリップボード上のデータは意識的に管理できるものらしい。使い捨てなら「スクラッチパッド」と名付けるところだったがそうではないようだ。
であれば、ディゾルブ移動についてもこのクリップボードは使えるに違いない。
その考えを実証すべく、俺はまず自宅のダイニングに立つ自分をターゲットしてその座標をクリップボードに叩き込み、その後、様々な場所に行ってはディゾルブで自宅に帰って来た。
成功だ。俺の仮説は正しかった。
クリップボードには最低でも十箇所の座標が入ったが、上限はまだ不明。この実験で俺は都内ほとんどの有名百貨店のトイレの個室への移動が可能になった。もちろん実際の移動は個室から家に跳んでもその逆はしない。うかつに個室に跳ぶと誰かが頑張っているかも知れないしな。
で、その後も距離を変え方角を変え、高さも変えて何度も試し、移動についてはほぼ安全性が確立できたと言えるレベルになったのだ。
「そういうことはもっと早く言ってよ。バカみたいな大荷物作っちゃったじゃない」
「ごめんごめん。この移動方法が大丈夫か確認するのに結構時間を食ったんだよ。今後は一度行った場所なら移動先に障害物がない限りはこんなふうにテレポートできるから、覚えておいて?」
「わかった。だけどこれからは早めに言ってよね? あと……」
「うん?」
「この、出現地点にクッション置いてちょうだい。ほんの少しだけど、出現した後すとんと落ちる感覚があるのよ。こっちに来た時に転びそうになったわ」
なるほど。俺は市川さんより5㎝ほど背が高い。俺が自分をターゲットした時の俺の基準座標と市川さんをターゲットした時の市川さんの基準座標の間にもいくらかの高低差がある。だから市川さんを俺の基準座標に転送した場合、数㎝ほど落下するのか。ちょっと危険だな。
「わかった。クッションを置いておこう」
俺達はラウンジのオフィスに戻り、2時間後、機上の人となった。目指すは上海だ。
◆◆◆◆◆
上海浦東国際空港に着いた俺達は、事前に手配していたハイヤーの出迎えを受け、そのまま上海市内を回ることにした。運転手さんは日本人で、このハイヤー会社の社長さんだ。
「この辺は電信柱がないんですね」
「ええ。中心街や外灘などの観光地区は無電柱化されてますけど、郊外へ行くとまだまだ電信柱も電線も現役ですよ。日本はどうですか?」
「まだまだですね。無電柱化の普及は世界でも最低レベルらしいです。東京ではやっと上野あたりがなんとかなった感じです」
上海ではビジネス街や観光地が他の地域に先駆けて無電柱化されているが、これは日本でも同じだ。まずは優先地区、その後広くあまねく無電柱化していくのだろう(注1)。
「お客様、お召し物からすると本日はお仕事で上海に来たわけではないんでしょう?
お買い物でしたら銀座や表参道のほうが偽物を掴まされるリスクがありませんし、これだけ看板が出ているのに見向きもされないところ見ると、上海料理が大好きというわけでもなさそうですね…… 。
今日は一日のご契約なのでどこにでも参りますが、さて、どちらに車を向けましょうか?」
わりとしっかり見られてるんだな。剣呑、剣呑。
「こういった、表向きの顔じゃないところに行ってください。さっき言ってた電信柱のあるような光景とかも見てみたいです。あと、廃線になった鉄道とかですかね。」
上海はその都市圏に2400万人以上を抱える人口過密地域だ。光のあたる地域ばかりではない。時代の流れに置いていかれつつある地域など、あちこちにあるのだ。「だがそれがいい」と言われて逆に観光資源化されている地域もある。
「……? 変わったところをご覧になりたいんですね。了解しました」
俺のリクエストを聞いた社長さんは空港から30kmほど西にある、閔行区というところへ車を走らせた。何の変哲もない、開発の最前線から漏れたであろううらぶれた地域だ。
「こういった場所がよろしいので?」
「そうです! こんなところがいいんですよ。いやあ、知人が上海のダウンタウンに住んでたとか言ってましてね。いつか来てみたかったんです。あ、ちょっとここで止めてください」
俺達はあちこちで車を止めては垂れ下がる電線を見つめたり、駅の脇に積み上げられた線路用の資材を見つめたりした。もちろんアへ顔をしてだ。
市川さんは俺の顔を道行く人に見られないような位置に立ってくれていた。さすがだ。
休憩をはさんで6時間弱、俺達は車を降りたり降りなかったりしながら上海の郊外を車で廻った。合計で四十箇所ほど。随分と廻ったものだ。
「ふう、疲れたな。時差がそんなにないのが救いか」
一通りの作業が終わると俺達はホテルの部屋からディゾルブを使って東京の自宅に戻った。現地のホテルを取ったのはあくまでも入国審査の時に書く「国内での滞在住所」を埋めるためと、ディゾルブを開始する場所を確保するためだ。
「で、今日一日あちこち上海市街を回ったわけだけど、いったい何をしていたの? どうやって間引くの?」
自宅に着くとすぐに市川さんの質問攻めが始まった。
「すぐ判るよ。基本は『悪い奴をできるだけ』間引く。悪い奴らに便乗した連中も同じ。巻き添えはごめんなさい。ま、そんな感じだよ」
「ゴールドラッシュの時と同じと考えればいいのね。あの時は『鉱山の出現をもっともらしく演出するため』とか言ってたけど、まんまと騙されたわぁ」
「そうだね。ちょうどパウンデッドに金を混ぜて川に投げ込んだようなものだよ。今回はアレより楽だ。サルもワニもいなかったろ?」
その後1か月をかけて、俺達はソウル、マニラ、ジャカルタ、バリ、ヤンゴン、ホーチミン、デリー、コルカタを回った。バリではサルはいたがワニは見なかったな。あ、代わりにすごく怖い鳥とかいたっけ。
それにしても、隣に市川さんがいるのに一生懸命売春宿を斡旋してくる連中とか、注射痕でいっぱいの麻薬の売人とか結構いたなあ。
ああいう連中はいったいどういう神経してたんだろう?
◆◆◆◆◆
蝉の声も寂しくなった都心のオフィス街の昼下がり、服部の目がなんとも微妙な怒りを帯びていた。それは相田も同じで、二人共、怒り……そして妙に疲れているように見える。
「どうした、元気ないな? 大丈夫か? 服部が怒ってるなんて珍しいじゃないか」
「あ、影山さん……それがその、ベンチャー投資でですね……」
「私、シリコンバレーでベンチャー立ち上げた同級生いっぱいいますけど、こんなんじゃなかったですよ? あーもう、ホントむかつく!」
それから20分ほど、服部と相田は俺に日頃の不満をぶつけ続けた。
ベンチャー投資をやるにあたって服部と相田は起業家達の集う飲み会的なイベントに参加してきたらしい。影山物産も設立3年以下の若い企業なので何の問題もなく参加できたようだ。
そのような集いに何度か参加してベンチャーファンド起ち上げの話をしてきたところ、数社からアプローチが来たという。
それで服部と相田は丁寧に彼等の話を聞いたのだそうだ。新潟や名古屋、札幌にまで出向いて。
だが、最初に訪れたベンチャーで服部達は先行きにたちこめる暗雲を予感したという。
「いやあ、僕はプログラミングの方は全然ダメなんですけどね、彼が詳しいから助かっています!」
最初に訪れた会社のCEO氏が自信満々に推すCTO氏は、ITの経験も数学やコンピュータ・サイエンスの知見も無く、せいぜい彼等の仲間内で唯一自作PCを組んだことがあるというくらいの人物だった。CTO氏自身もそのことを自覚していたらしく、終始卑屈な態度で相田の質問から逃げ回ったらしい。
その後も服部・相田ペアはいくつもベンチャーを訪れて話を聞いたらしいが、皆似たようなものだった。
どこもAIだのIoTだのRPA(注2)だのマーケティング最適化だの採用プロセス自動化だので革新を起こす業界の旗手を自称していたが、キャッチフレーズとプレゼンテーションが立派なだけで、相田の出した基本的なシステム関連の質問にすら答えられない連中ばかりだったのだ。
それで相田も服部もようやく気がついた。彼等は「起業家ごっこ」を若いうちにやっておきたいだけなのだ、と。彼等は自らの知識や技術に自負もこだわりもなく、ただ経済紙で取り上げられているホットワードを掲げてそれっぽいことをやっているだけなのだ。
彼等の努力は主に小綺麗なプレゼンの作成や、街のおしゃれカフェで薄型ノートPCのキーボードを叩く自分をどうカッコ良く見せるかに注がれており、顧客の要望や実直な開発、革新的な技術には注がれていない。それが服部と相田の徒労感を増大させていたらしい。
俺は以前、俺製競馬予測システムの噂に群がってきたウェイウェイ言うだけの連中を思い出した。確かにあの時、知識も経験も技術もない連中がAIという甘い水に吸い寄せられた虫のように俺に群がってきていたっけ。
そういえば沢森もあの中にいなかったか……? ま、いいか。
彼等の全部が全部そんなんじゃない。当然、玉石混淆だろうとは思う。やりたい事、世間に問いたい事、自分の才能を形にしたい、そういうネタと情熱と実力がある玉の方のベンチャーは投資する方も応援する気になる。
だが「起業して、社長になりたい」という自己実現欲求が先あって、その後に「じゃ、何をしようか?」って連中は俺としても距離を置きたい。大抵が玉ではなく石だからだ。
「業種はどうなんだ?」
「やっぱIT系が多いっスね。時代なんでしょうけどAI使ってどうこうってのがやたら多いっス。中途半端なのが分かる分だけ余計に腹立つンスよ」
相田か服部に連絡して来た若い起業家達の業種はやはりIT系が多いという。さもありなん。
何より起業ハードルが低い。在庫なし、金型なし、設備はクラウドで安く済ませて、アタリが出れば一気にスケールを拡大してプロ野球球団が買えちゃうくらいの大成功、と良いことづくめだからな。
そのアタリが出そうなITベンチャーは投資家達から出資を受けてシリーズA,B,Cとラウンドを重ね、時代に愛されたごく一部の企業が上場の運びと成る。
だが、そういった優秀なベンチャーはだいたい、あの携帯電話会社にまず引き寄せられていくのだ。あそこの出資を受けたとなれば箔もつくしな。あとでどんなふうに経営に介入されるかは知らないが。
逆に、残念だがベンチャー企業がうちから資金を得たとしても、カネをゲットできた以上の意味は持たないだろう。影山ファンドにはブランドも、それを裏打ちする実績もないのだから当然だ。
だから、影山ファンドは前途有望なITを拾えない。
服部と相田が参加した起業家達の集いでは皆和気あいあいで飲んでいたが、裏では大手に投資された連中とそうでない連中に明暗くっきり分かれていたらしい。そして自分達に連絡をくれた企業の多くは明暗の暗の方だったようだ。
「まあ、それくらい予想できた事じゃないか。で、怒るのは解るがえらく疲れてもいるようだな?」
「それがですね……」
服部が言うには、影山ファンドに来る投資案件は
・普通の人の知性では全然解らない先進技術を持つ企業
・経営者の夢ばかり大きくて実力の伴わない企業
・理解できないほど情熱と才能を無駄に注ぎ込んでいる企業
・コンテンツをメインにした山師
あたりが多いらしい。
「これは……あれだ。クラウドファンディングで身の程知らずの金額を設定する連中と同じ匂いがするな」
俺がそう言うと相田も服部も苦笑しながら頷いた。
「連中、業種内動向調査や消費者のペルソナ設定、競合比較など本来投資を希望する側がまとめるべき作業をほとんどやって来ないんです。こちらも有望株の一つも見つけるまでは……と、ある程度作業してますが、なにしろ膨大な根気と時間が必要で」
「だったら、こっちから行くのはやめちまえ 移動の疲れだけでも無くなれば大分マシだろ」
俺にしては普通の答えだった。普通で悪いか!
★★★★★
「あああもう! まただわ!」
マニラのダウンタウンの一角、パコ地区の古びたアパートに住むリリーは癇癪をおこして夫のジャスパーに当たり散らしていた。長年愛用していた台湾製の液晶テレビが夕方辺りからおかしくなり、お気に入りのドラマが見られなかったからだ。
リリーの言い分では、テレビは一応映りはするのだが、電源が点いたり消えたり操作を受け付けなくなったりと、とてもドラマを楽しめる状況ではないらしい。
「あのドラマ見られなかったらあたしゃ何を楽しみに生きてりゃいいのよ! このヤドロク! 給料が安くて新しいテレビも買えやしない!」
「そういやあ、リャンの家もパソコンが壊れたとか言ってたな…… うちはテレビか……」
ジャスパーはリリーの癇癪を軽く受け流すと、夜の屋台でも冷やかすかと外に出ていった。リリーがああなると暫くは何を言っても無駄なのは長い付き合いで判っている。ほとぼりが冷めるまでは外に出ているのが一番なのだ。
「臭ェ……またどこかのデモでタイヤ燃やしてんのか」
中低層住宅がひしめくアパシブル通りではゴムが焼けたような不快な匂いがたちこめていた。
誰も、その匂いの素が何なのかを知ろうとはしなかった。
(注1)東京の無電柱化……東京では2016年に無電柱化推進条例が可決されている。https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000028876.pdf
(注2)RPA……ロボティクス・プロセス・オートメーションの略。単純作業の繰り返しをマクロやプログラムで行うことで人件費を削減するための一連のフレームワーク。




